Quest Citizen

一憧けい

奴等に勝てない訳

Prologue 始まりの街

 人口70万人の都市、ニアリー。其の中で近年発展が著しいとされる人口3万人の街オジー。

 政争の絶えない昨今、オジーの駅前ロータリー空中回廊でもマイクロホンを持った政治家が街頭演説をしている。その前を過ぎていく人々はサポーターの配るビラを受け取ったり、断ったりしながら、あまり関心もなさそうに足早に去っていく。此の国が民主主義を謳って早何十年か。政治は生活を変え得る筈ではあるが、此の街の人々の政治への関心は、あまり高いようには見えなかった。

 日曜日の今日は、空中回廊とショッピングモールとの接点で古いカラードの音楽を演奏している。天気は上々で青い空に厚い綿雲が浮かんでいる。回廊のマーブルの上に座った人々が聞くともなしに聞いていた。

 時折聞こえる駅のアナウンス。

此処の電車は元公営鉄道の幹線ではなく、私企業が敷設した路線で、西の山岳地帯へと複線の鉄道が伸びていた。

 第一公用語に詳しい人なら、此の麗日に詩人の歌を詠むところだろう。


 かなり高い空に飛行機雲が二条、西へ伸びていく。


 北口の階段を下りていく。左手、駅側に黒いドレスを着た十一寸の少女が退屈そうに立っている。右手には同盟の臨時職員が募金活動を行っていた。交通誘導員の指示に従ってバスの通過した横断歩道をわたる。左、北西の方に向かって歩道を歩く。陸橋のせいで少し見通しの悪い、ファーストフードに辿り着いた。時刻は12持40分、昼休みが終わるまで後、20分程だった。


 待たせては、居ない筈だった。

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