見えていなかったもの
ローラーに乗る鈴香のそばには彼女の両親の姿があった。鈴香がレースでちゃんと力を出せるように、色々と準備をして助けてあげている。
いぶきの場合は、チームの監督がいつもそうした準備をしてくれていた。
何か、当たり前のように思っていたけど、
会場には帽子をかぶった役員や、字の書かれたチョッキのようなものを着た係の人たちがたくさんいた。
スタートゴール地点で働く人、コースのあちこちで働く人、本部の建物の中で働く人、などなど。
いぶきが転んだ時にすぐに来てくれた
写真をとる事を仕事にしている人もいるし、ピットと呼ばれる場所で、飲み物を渡したり
いぶきは今回、観客の中の1人になっていたけれど、観客もレースを支える大切な一員だ。
自分が走っているレースをこんなふうに見るのは初めてだ。いったいどんな感じなんだろう?
鈴香は
最初から付いていける人がいなくて、ずっと
自分自身と戦っているように全力でゴールまで
もしも走ってる私を私が見たらどう思うかな? 鈴香みたく真剣っていうよりは、もっと感情で走っているような気がする。遊びの
鈴香の真剣さと同じくらいにびっくりしたのは、後ろの選手たちの頑張っている姿だった。
1位を
レースでは優勝する事だけに
走れない自分。
走りたい。
彼女たちと同じ場所で一緒に頑張りたい。
レース会場に来た時に、ここは自分の
私は観客じゃない。私は選手。
会場で多くの人たちに声をかけてもらった。
「しっかりケガをなおして早くもどってきてね」と。
嬉しかった。自分を待っていてくれる人達がいる。
🐝
「帰ろっか」
いぶきはそう言って父親に向けて顔を上げると、いっぴきのミツバチが目に入った。
ブ〜ンブ〜ン。
「あ! ミツバチ!」
思わず声が出た。
「そう言えば、この会場の近くに小さなミツバチ
父親が意外な事を言った。
「え⁉︎ 本当? そんなものがあるの? ミツバチがいっぱいいるのかな? 行ってみたい! 父さん、連れてって。お願い!」
「おやおや。いぶきがミツバチ農園に
「わーい! 行こう行こう! 父さん、だ〜い好き!」
駐車場に急ぐ2人の
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