第11章24話 素敵な世界へ導いてくれた大好きなあなたへと、わたしの総てをかけて

◆  ◆  ◆  ◆  ◆




 『勝者決定戦』の開催通知が来てから当日までの間――

 ラヴィニアたちは最終戦に臨むアリスのサポートに全力を尽くしていた。

 いつものように仲間が手助けすることは出来ない。

 アリス一人の力で最後まで戦い抜き、勝者とならなければ『ゲーム』のクリアができないのだ。

 だから、絶対に勝たなければならない。

 どんな相手にも勝たなければならないのだ。




「…………スバル、白状する……」

「うぅ~……」


 ラヴィニアと撫子を除くメンバーが、こっそりと夜間のマイルームへと集合していた。

 ここに至るまでに遠隔通話で少々打ち合わせはしていたが、『実験』も兼ねるために最終的にはマイルームへと集まることとなった。

 開口一番ありすに問い詰められる雪彦。

 彼女が何について問い詰めているかと言うと――


「まー、ユキしか知らねぇよな、多分……」

「あとはピッピ様でしょうか? とはいえ、ピッピ様とお話するにはラビ様がいらっしゃらないとですわね……」


 ピッピとの会話は『ポータブルゲート』で中断中のクエストを経由しなければならない。

 そうなると必然ラヴィニアも同行することになり――ピッピとだけこっそり会話するというわけにはいかないのだ。


「……私たちだけでピッピと会話しても意味ないしね……」

「そうだにゃー。

 んー……ユッキー、怒らないから素直に話して欲しいにゃー?」

「う~……」


 なぜこうもラヴィニアのことを避け、雪彦に問い詰めているのかは――誰もがわかっていた。


、教えて」


 ……そう、ありすが雪彦に尋ねているのは、ジュウベェとの戦い――その決着の時についてだ。




 一度は倒したと思ったジュウベェが復活し、不意打ちでラビが瀕死の重傷を負った。

 その後、が起きてマイルームから観戦していた桃香たちからも見えなくなった――ここまでがありすと雪彦を除く全員の知るところだ。

 そこから先は、ありすはあまりよく覚えていない――ぼんやりと、変身していない自分がジュウベェにとどめを刺したところは思い出せてきている。

 問題なのは桃香たちから見えなくなり、ありすがとどめを刺すに至るまでの『間』の出来事だ。

 明らかに完全復活していたジュウベェを、満身創痍かつ魔力もほぼ枯渇していたはずのアリスとクロエラで倒せるとは到底思えない。当時の自分の力量は良く理解している。

 そして以前から皆が気付いていて敢えて触れなかったが、明らかに雪彦はその時のことに関して口を噤んでいた――


「最後の戦い、わたし一人で勝ち抜くためにはきっと『それ』が必要になる……と思う」


 この時点で誰が最後の戦いの相手になるかはありすたちは知らない。

 だが、ガイア戦を乗り越えたケイオス・ロアたちが来ることは半ば予想していたし、もしかしたら自分たちとは別のタイミングでガイアに挑んだチームもいたかもしれない。

 いずれにせよ、あの最難関の理不尽の極みのようなクエストを乗り越えて勝者決定戦に来るのだ。個人の力量としてはチート込みのジュウベェと同等かそれ以上であることは疑いようがない。

 ならば、一人で戦うしかないありすにとって最も『力』となるのは、そのジュウベェを倒した時の力だろう……そう考えるのは不自然なことではない。

 今まで培ってきた力はもちろん使うが、『手札』が増えることに意味がない、などということはないだろう。

 使わなければそれで良いし、いざとなった時の『切り札』になりうるのであれば用意しておくに越したことはない。


「…………わかったよ……でも、僕も見たまま話すけどわからないことはいっぱいあるよ……?」

「ん、問題ない」


 自信なさそうに言う雪彦に、ありすはにゅっとサムズアップで応える。


「……じゃ、じゃあ話すけど――」


 異を決し、ありす、そして皆の顔を見てから雪彦はあの時の出来事を話し始める――




「「「「「……」」」」」


 雪彦の話を聞き終えた後、ありすを除く全員が深く沈黙した。

 理解が及ばない――明らかに『魔法スキル』の域を超えた事象が起きている、と判断せざるをえないからだ。


「ん、わかった。ありがとう、スバル」


 ただ一人、ありすだけはいつものぼんやり顔のままではあるが動じず小さく頷いていた。

 この時のありすの内心について、きっと誰もが推し量ることはできなかっただろう――




 ――「




 ――




 誰に言われた言葉か思い出すことはできない。

 けれど、心のどこかにありすはこの言葉を刻んでいた。

 『答え』は自分の中に既にある。

 ただ『答え』から目をそらしているだけで。

 ありすはもう知っているはずだったのだ――ジュウベェを倒すきっかけとなった超越魔法エクシードスキルの存在を。

 そしてそれが『ゲーム』にはありえない異常な魔法だということを。


「――皆、お願いがある」


 けれどもありすは躊躇わない。

 目を逸らし続けていた『答え』はもう逃げようもなく突きつけられている。

 そしてそれが最後の戦いできっと必要になるということも直観している。

 ならば、


「これからわたしの練習につきあって」


 求めるのは『勝利』のみ。

 そのために必要ならば、どんな危険があろうともありすは躊躇うことはない。


「……うーちゃんがいつも言ってるように、あんまり夜遅くは賛成できないんだけど……」

「今回ばかりは、うーちゃんには内緒で手伝うしかないかにゃー」

「だな」

「あまりに遅くなるようなら、私が朝まででもお付き合いいたします」


 雪彦の話を聞いて、ラヴィニアにはあまり知られたくない魔法であることは全員が理解できていた。

 そして拙いことに魔法の詳細な効果が曖昧なままだ。

 この状態でイチかバチかで最終決戦で使ってしまったら、逆にアリス自身の首を絞める結果になりかねない。

 『練習』は必要なのは間違いないだろう。そして、『練習』してアリス自身が魔法の効果を自覚していけば、より使いやすく安全な魔法にカスタマイズすることも可能だ――ごく一部の例外的な魔法でなければ、だが。


「わたくしももちろんお手伝いいたしますわ♡」

「うん。僕も!」


 全員の想いは同じだ。

 最後の戦いに勝つ――そしてその勝利をラヴィニアへと捧げる。

 そのためにできることはやり尽くす。たとえラヴィニアに内緒で夜中に『ゲーム』をすることになったとしても……後で怒られるかもしれないが、それよりも勝つことの方が大事だ。


「ん……ありがとう、皆」


 最後に戦うのはアリス一人ではあるものの、そこに至るまでの戦いの全ては仲間と共にあったものだ。

 自分一人だけでは絶対にに至ることはなかった――そうありすは思い、あらためて勝利を誓うのであった。




◆  ◆  ◆  ◆  ◆




 ラヴィニアラビにとって『ありす』とはどういう存在なのだろう?

 ……ありすは顔にも口にも出さずとも、ずっとそれを気にし続けていた。




 ありすにとってラヴィニアラビの存在は――『救い』であった。




 ラヴィニアラビと出会うまでも、別にありすは孤独であったわけではない。

 クラスに仲の良い友達もいた――桃香たちのように若干距離感を計りかねてなかなか接触できない子もいたが――親だって自分を愛してくれているのはわかる。

 けれども、ありすが心の底から全てを曝け出し、本音で、全力でぶつかれるような相手はいなかった。

 ……これはありすがなまじ大人びているせいもあるだろう。

 両親が共に仕事をしていて一人でいる時間が長いことについて、不満に思う時はあってもそれを無意識のうちに押し込めていた。

 友達はいても、趣味を分かち合える者はいなかった――これは若干ありす側の趣味が同世代の同性と離れていたせいもあるが。




 退屈ではないが刺激もない。

 孤独でもないが一人。

 そんなある意味で『灰色』の、靄がかかったような生活を一変させたのがラヴィニアラビの存在だった。




 『ゲーム』という不思議な、現実とは思えない出来事に触れることが出来た。

 『ゲーム』を通じて、桃香たちと仲良くなることが出来た。

 血は繋がらないが兄や姉と慕う相手も出来た。

 不思議な世界での戦いで大きな成長を遂げることが出来た。

 かつてラヴィニアラビに告げた言葉――『この「ゲーム」に参加したことを微塵も後悔していない』は、紛れもなくありすの本音である。




 そして何よりも、ラヴィニアラビの存在自体がありすにとっての『救い』となった。

 いつも一緒にいてくれて、ありすのことを見てくれている。

 他愛のない話をして、時々ちょっぴり喧嘩したりして、一緒にテレビを見て笑いあったり、ゲームをしたり……。

 まるで親のように。

 姉のように。

 妹のように。

 そして、『親友』のように。




 ラヴィニアラビはありすの欲しかった総てをくれた『恩人』である。

 少なくともありすはそう思っている――ラヴィニアラビもまた同じように思っているのだが、互いに気付いてはいないが……。

 だからありすは受けた『恩』を、これまでの総てを返したいと思っている。




 ありすがラヴィニアラビへと返せるものは、『ゲームの勝利』――これだけだと思っているのだ。

 ラヴィニアラビが『何か』を隠しているのは何となく察している。説明してくれないのに微かな不満はあるが、きっと余計な心配をかけないようにしているのだろうと解釈し、気付かないフリを続けている。

 隠している『何か』がわからなくとも、それが『ゲーム』に関係していることは理解できている。

 だから恩返しのためには『ゲーム』に勝利し、ラヴィニアラビの抱えている不安を解消する……それしかやれることがない。




 また、

 嫌で嫌でたまらないが、どうしようもない『別れ』がこの世にあるということは既に理解できている。

 ならば――せめてラヴィニアラビが安心してありすたちと別れられるように、『ゲーム』に完全なる決着をつける。

 それがありすのできる唯一の恩返しなのだと信じている。




◆  ◆  ◆  ◆  ◆




 ラヴィニアラビが思っている以上に、この最終決戦に対するありすの想いは強い。

 総てをくれたラヴィニアラビへと、自分の総てをかけて勝利することで返す――そのためならばやる。

 それがありすの固い決意であり、ありすをサポートする仲間たちの決意だ。


「あーちゃん、魔法の内容はわかった?」

「ん、今ははっきりわかる……」


 やるべきことはシンプルだ。

 ありすが勝利するための『切り札』は、間違いなくジュウベェクラウザーを倒した超越魔法|世界ヲ殺セ、黒ノ巨人《スルト・ラグナレク》となるだろう。

 ただし、アリスの魔法の性質上、『一撃必殺に限りなく近い威力』は出せるものの、『確実に一撃必殺できる』魔法は作り出すことは難しい――これは他のユニットも同様だ。例外的なのは、問答無用で相手を腐らせる・風化させるというベララベラムの魔法くらいだろうか。

 しかも《スルト・ラグナレク》はである。

 相手に直接ダメージを与えるのではなく、アリス自身へと強化を施す魔法なのだ。これではどうやっても『一撃必殺』にはなりえないだろう。

 もっとも、補助効果としては破格としかいいようのないものを持っている。


 ――『ゲーム』のルールを根本的に無効化する魔法


 それが《スルト・ラグナレク》の能力――『世界を殺す魔法ルール・ブレイカー』だ。

 要はユニット全ての力を封じることができる、ナイアの【支配者ルーラー】とは異なる方向での相手の無力化能力であると言える。


「でも、このままじゃ使


 雪彦の告白により記憶を取り戻したありすの脳内には、今やはっきりと《スルト・ラグナレク》の詳細が浮かんできている――他の魔法と同様に。

 その詳細に従えば、使、というのがありすの正直な感想だ。

 効果は破格、しかしその反面制御不能の暴走状態になりかねない、というのが理由の一つ。


「……魔力が尽きたら、負ける」


 もう一つはかなり深刻だ。

 総ての動作に魔力消費が伴うことになる《スルト・ラグナレク》はある意味『無敵』になるが、基本動作以外の行動以外に制限ができてしまう。

 クラウザー戦においても、結局それが原因で苦戦を強いられることとなった――奇跡的にラビが回復をしてくれたおかげで何とか勝ち切ることができただけで、とてもではないが『安定した戦い』が出来る魔法ではないのである。

 ありすから詳細を聞いた他のメンバーも頷く。

 もし《スルト・ラグナレク》の効果がクリアドーラの旭光のような、デメリットはあるが制限時間内であれば魔法を使い放題になるものであれば悩むことはない。

 無限の魔力に任せた力押し――《星天崩壊エスカトン天魔ノ銀牙ガラクシアース》を連発すれば済む話だった。


「うん。だから――あーちゃんがやることは、魔法を改造することだと思う」

「にゃはは。魔法は想像力の産物……なら、きっと一度作った魔法でも改造できるはずにゃー」

「なるほど……わたくしの召喚魔法と同じということですわね」


 魔法は新しいものを作るだけではない。

 既にあるものを改造することも可能だ。

 桃香ヴィヴィアンの召喚獣のように『記録』しておける霊装とは別に、他の魔法であっても都度調整することは可能だ――アリスが巨星魔法や神装のダミーを作ったりするのが正にそれである。

 ただ、これもまた召喚獣とは異なり『記録』しておけないために都度調整する必要がある、という点が面倒であるとも言える。特にジュリエッタのライズのように強化幅を毎回考えるのは、一秒を争う戦闘中には難しい。

 だから、《スルト・ラグナレク》を最適化する。それが楓たちの考えだ。

 どう最適化すれば『切り札』たりえるか? ……それを考えるために、仲間たちがいるのだ。


「ん、わかった。

 ……皆、お願い」


 全ては勝つために。

 ありすは素直に仲間の力を借りることとした――




◆  ◆  ◆  ◆  ◆




 実際に《スルト・ラグナレク》を使っての実験は、――、それも仲間内での対戦のみとありすたちは決めた。

 なぜならば、ラヴィニアラビが語らずとも彼女たちも気付いていたからだ。

 ――に。


 気付くきっかけは幾つもあったが、一番の理由は『ガイア戦出現までのタイムラグ』にある。

 三界の覇王を征した後、ガイアのクエストが出るまでの不自然な間――この間を、楓たちは『他のチームが来るのを待っていたのだろう』と予想していたが、では? という疑問がある。


『…………多分、ピッピが言っていた通り「このゲームはクリアを想定していない」――裏を返せば「」んだと思う』


 楓たちは知らないが、『ゲームの勝者』には莫大な利益を生むであろう『ゲームの運営権』が与えられる。

 詳細まではわからずとも、勝者の特典を与えたくないという思惑があるのであろうことは予想がついた。

 その予想を元に楓たちは『真実』に限りなく近いであろう予測を立てている。


『私たち――うーちゃんがゲームの勝者になるのを妨害するために他のチームが参加するのを待っていた』

『そして、多分……そのチームは運営の息のかかったチームだと思うにゃー。

 ……どっちのチームがそうなのかまではわからないけど』


 この時点で想定される対戦相手は、美鈴ケイオス・ロアとゼラ。自分たちの知らない誰かが参加する可能性は一応あるが、考えても仕方のないことなので切り捨てておく。

 どちらかの使い魔が運営からの回し者なのではないか、と楓たちも疑っているのだ。そして、おそらくその考えが間違いではないだろうとも予想している。

 『クリアを想定していないゲーム』の最終クエストへの挑戦権を得てしまったチームが現れた。そのため、運営側のチームが一人勝ちを阻止するために自分のチームも最終クエストに送る。

 しかし、結局最終クエストはクリアされてしまい、苦肉の策として今回の勝者決定戦を行うこととした――そんなところだろう、とも。

 いずれにしろ、『勝者決定戦で勝つ必要がある』という点に関しては変わりがない。


『美鈴ちゃんと、もう一つのチーム……どちらが運営側なのか、それとも両方なのか――わからないけど、私たちは運営のをかく必要があると思う』

『ま、今回は裏をかくというよりは――あーちゃんの「切り札」をギリギリまで隠し通すって感じかにゃ?』


 ラヴィニアラビが警戒しているのと同様、『ゲーム』での内容は全て運営に筒抜けになっていると楓たちも思っている。

 だからクエスト内で実験した場合にバレる可能性はある――もちろん、対戦であっても危険性はあるが……システム的により『狭い』対戦の方がクエストよりは安全かもしれない、という気休め程度だ。

 実験は一度限り。

 その替わり、事前に魔法の調整は時間をかけて入念に、全員の知恵を絞って。




 そうしてマイルーム内で色々と話し合い、ありすが自分の頭の中で魔法を組み立て直し――やがて《スルト・ラグナレク》の『改善版』が完成した。

 試したのは事前に考えた通り一度だけ、仲間同士の対戦かつごく短時間――魔法の発動までだ。

 数度実験すればより万全を期せたであろうが、楓たちの心配が杞憂でなかった場合に最悪の結末になってしまう可能性が高まる以上仕方がない。

 その一度の確認で、ありすは『改善版』が望んだ通りの効果を持っていることを確信。

 これをもって最終決戦へと挑むことを皆に告げた。

 『最後の切り札』は完成した。

 後は、今まで培ってきた経験で乗り切るしかない。




◆  ◆  ◆  ◆  ◆




「《世界ヲ殺セ、黒ノ巨人スルト・ラグナレク》!!!」


 アリスが用意していた最後の切り札を使用すると共に、彼女の姿が変わる。


「!?」


 その姿に、ケイオス・ロアとフランシーヌは息をのむ。

 ……なぜならば、姿からだ。




 アリスの目立つ黄金の髪は漆黒に染まり、身に纏う純白の『麗装ドレス』もまた黒へ。

 頭に戴く王冠クラウンは刺々しい装飾の頭冠サークレットへ。

 背からは禍々しい黒の翼が一対、『ザ・ロッド』の宝玉及び身体の各所に身に着けているハートの意匠は『星』型へと形を変える。


 細部こそは違うが、まるで『成長したありす』のようなその姿は――




 最後に、深紫の瞳は――血ではなく炎の如き輝く赤へ。

 アリスありすの燃え盛る闘志を顕す真紅の瞳が『敵』を射抜く。




「…………ッ!!」


 そう、ケイオス・ロアたちはつい先日に似たような姿を見ていた。

 『成長したありす』のような姿をした、ありとあらゆる魔法を使う混沌より生まれし魔法使いの王――魔王ゼノケイオス。

 今のアリスは、正にゼノケイオスのような姿になっているのだ。

 もちろん、見た目が似ているだけでゼノケイオス同様に全ての魔法を使う、ということはありえないだろう。

 あくまでもアリス自身の力しか使えないはずだ。

 それは頭では理解できていたものの、身体が、魔法使いユニットの本能が警鐘を鳴らしている。




 ――は尋常の存在ではない。

 ――はもはや人も、魔法使いも超えた存在である。




 と。




「――行くぜ、ロア。フランシーヌ、ゼラ!!」


 姿は変わっているが暴走状態にはなっていない。

 しっかりとアリス自身の意識で、意思を以て、いつもの笑みを浮かべ魔となったアリスは改めて宣言する。


「決着をつけるぞ。

 そして、当然――オレが勝つ!!」




 全ての手札は晒した。

 全員の意識が『短期決戦』へと切り替わり、全員が全力を出し尽くす状況となっていることを自覚している。

 最終決戦の決着は間もなく――ほんの僅かな時間で決まるであろうことを、誰しもが否応なく理解していた。

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