第23話:十条家とは?

「ここは……」


「うぅ……頭が痛い……」


二人の女性を起すとパチッと目が合う、あーれこれ不味いな。


絶妙に着崩れた巫女服と千早で絶対誤解される。


「貴方誰ですか!?」


「桔梗ちゃんこっちに!!」


少女を抱き寄せ襟と裾を直す、少女は目に涙を浮かべ歯の根が合わないのかカチカチと鳴らしている。


「牡丹、桔梗、その方は上凪殿だ。呪詛を返されたお前達の解呪をしてくれたお方だ」


「それと、心配して下さい。優希さんその方が同意なく手を出そうとしてたら私が腕を切り落とすので♪」


どこからか出した匕首を持ってにっこりと笑う、何だろうウチの嫁達は姫華さんから圧の掛け方を習ってるのかな?


「はだけてるのんは、大急ぎで女中達がここに運んださかいだ」


「そ、そうなのですか?」


「大丈夫じゃ、ワシもずっと一緒におったさかい、手は出されてはおらんよ」


「そ、そうですか……」


じろりと睨まれながら微妙に距離を取られる、どうやらまだ信頼はされてない様だ。


「すまへんな上凪殿」


「仕方ないですよ、そもそも服がはだけた状態で目を覚まして目の前に男の人が居たら警戒しますって」


「そうか……理解があって助かんで」


それから二人の紹介を受ける、二人は親子でお母さんでの方は牡丹ぼたんさん、娘さんの方は桔梗ききょうさんとの事だ。


「桔梗は若いながらもデザイナーとしては優秀でな、お客からの評判もえらいええんや」


「じゃあ皆も気に入りそうですね」


「ほな、ここで話す事もあらへんさかいな、移動しよか」


三条さんの一声で皆揃って別室に行くのだった。



◇◆◇◆

「という事で、私は牡丹さん達とお話してきますね」


「了解、任せたよ」


「はい!」


ふんすと意気込みを入れた巴ちゃん達が、隣のテーブルに移動する。俺達は暖炉の前に座り向かい合う。


「さて、それだけじゃ釣り合わんさかいね、色々お話しよか」


そう言って色の悪いお酒とグラスを用意する。


「そのお酒……傷んでません?」


「あーこら上凪殿に治してもらえへんかなー思て。えらいうまいんやけど封甘おしてあかんくなったんや」


「うーん、治せるかなぁ……」


とりあえず『——復元』を使ってみる、傷んでない状態まで戻すと甘い香りが漂ってきた。


「良い香りですね……」


「おぉ……これや、この懐かしい香り……」


泣きそうな顔で目を細める三条さん、どうやら成功した様だ。


「上凪殿ありがとう、さぁ一杯......」


注がれた一杯は芳醇な甘さを含んだ香りのワインだった。


「こら亡き妻と楽しんだワインでな、生前に妻好んで飲んどったんやけど急死してもうて。その際にバタバタしとったら傷ましてもうたんだ」


「そんなものを頂いて良いんですか?」


「あぁ、治してくれた本人に飲ませへんのは酷やしーな」


口に含むと、色々なものが流れ込んでくるような感じがした。



◇◆◇◆

そして、その一杯が終わると、三条さんとの話が始まった。


「さて、酔うてもうたし。今やったら何でも聞きなはれ」


「じゃあ銀行口座の暗証番号を……」


「そうやなぁ……ってちゃうちゃう……他の家の事を聞かな良おしてええんか?」


即座にツッコミを入れて来る。


「でも、そこまで警戒はしなくても良さそうな気がするんですけど……」


「ほな、ワシ勝手に喋るさかい、質問があったら聞きなはれ……」


そう言って目をつぶり話を始める。


「まずは【十条家】やな、彼らは施設軍をを持っとって個としての能力は低いけど軍隊として見るならえらい練度や、元々京都見回り組の後継から発展したさかいな。第二次大戦中は御所の警備も行っとった程やわぁ」


「そんな昔からあるんですね……」


「あはは、そうは言うが我々に比べれば浅い浅い。元々【十条家】なぞは存在せんしな」


「そうなんですか?」


てっきり、昔から十条全部あるのかと思ってた。


「あぁ、十条は元々明治に開通した十条通に由来するものでな、長年京都の街を守っとった功績から一つの〝組〟として成り立ったんや」


「組ですか? 十条家じゃなくて?」


「あぁ、俗に言うヤクザやわぁ。暴対法もあって【十条家】ちゅう事にしたんじゃやで」


暴対法……そういえば里菜のお父さんと話してた時に、マフィアの知り合いがいるって事でひと悶着あったんだよな。


「そうなんですね」


「ちゅう事で、十条は私設武装をしてるちゅう事さ、恐らくアサルトライフルやロケットランチャーやらは使わへんとは思うんやけどなぁ……拳銃くらいは使うやろうけど」


一般人相手には絶対ヤバいでしょ……。


「まぁ、それ位なら……武装ヘリ位までなら相手にしましたし……」


「ほんまに、お主人間か? まぁええ、次は似たような家の【八条家】じゃな」


「あれ? 九条家は?」


流れで十・九と来るかと思ったんだけど……。


「あの家はどっちかいうたら当主と一部の者が神職へ進み、分家が介護用品メーカーでな。装備も基本的にはパワードスーツを装備した少し武術使える者出て来るだけじゃやで」


三条さんがスマホで見せて来たのは介護用パワードスーツを出しているクジョウというメーカーだった。


「へぇ……ってコレ父さんの職場でも使ってますよ!」


「ほう、そうなんか。ちゅう訳で神職ちゅう事もあり、序列は高いがそれ位じゃな」


「そうなんですね、今度お礼の挨拶に行こう……」


父さんも助かったって言ってたし。


「その際は、ワシから紹介させなはれ」


笑いながら言って来るご当主だった。



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作者です。

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