第11話:賀茂さんの悩みと巴ちゃんの悩み

「賀茂さん、調子はどう?」


隅っこで怪しい儀式を行っている彼女へ声をかける。


「ふひひ……上凪さん、私は至って絶好調ですよぉ~」


「聞き方悪かったね……〝訓練〟の調子はどう?」


そう聞くと顔を暗くする。


「あんまり調子よくないですぅ……皆さん、どんどん上達してますし、私のへっぽこな力じゃあんまり上手く出来ませんし……」


急にしょぼくれて、喋り方が普通になる。


「そっか、じゃあとりあえず、練習しようか」


「ふぇえぇ……」


「大丈夫、上達出来るように手伝うよ。それに賀茂さんは魔力量も高いし上手くいけば魔法や呪術も使える様になるよ」


「えぇ……私。戦闘より占いとかのが好きなんですけど……」


「そっか、でも何でこの学校に?」


「私の家系はどうやら賀茂保憲という陰陽師の末裔らしいのです、それで昔から呪術とか陰陽術とかの本を与えられていたのです。それで簡単なおまじないとかクラスメイトの占いとかしてたら不意に本当に実現し始めちゃって……」


「それで、この学校に入れられたんだ」


「はい……」


しゅんとなる賀茂さん、とは言えこの学校にいる以上は戦う事は避けては通れないだろう……。


「それじゃあ、一つ確認させて。この学校を辞めたい?」


才能があっても、当人のやる気で変わってしまうのがモンスターとの戦い、本当に戦うのが嫌いであればどうにかしてあげたいけど……。


「それは……わかりません……クラスの友達も、パーティメンバーも私に優しくしてくれます。でも私は上手く出来なくて足を引っ張って……」


尻すぼみになっていく賀茂さん、多分だけど今のままじゃ足手まといだから踏み切れない所もあるのだろう。


「まだ、決めきれないよね。それで、一つ提案なんだけど。サポートとして皆を助けたりするのはどう?」


「サポート……ですか?」


「うん、魔法を使った支援型の戦闘方法なんだけどね、上手く使えばパーティの皆を助けられるようになるんだ」


「そ、それでしたら興味があります」


揺れていた瞳がこちらを向き大きく意志を宿し始めた。


「わかった、夕食を食べたらダンジョンに向かおうか」


「だ、ダンジョンにですか!?」


「うん、敵が居ないと出来ない技だしね」


「わ、わかりました!」


――——キーンコーンカーンコーン。


そんな話をしていたら終業のチャイムが鳴ってしまった。


「じゃあ、後でグループチャットの方に連絡するね」


「は、はい!」


「それまでは、なるべくリラックスしててね」


「リラックス……フヒヒわかりましたぁ~」


怪しい笑みが帰って来た賀茂さんに少し苦笑いしながら終了の片づけと武道館の修復を行うのだった。



◇◆◇◆

「巴ちゃん」


「あぁ、優希さん監督お疲れ様です」


花山院さんの元へ向かった巴ちゃんが気になり向かっていると戻ってくる彼女とかち合った。


「ありがとう。それで、花山院さんとの話は?」


「はい、大丈夫です、あちらも頭が痛いと思う内容でしたので……」


二人が頭を悩ませる事……。


「それってあの、ボコボコになってたあの二人組の件?」


「はい、それで彼らは?」


「えっと、軒先に吊るしてる」


一応全身綺麗に治してあげた、上での吊るし。まぁつま先が届くくらいの高さだし自力で脱出は出来るでしょ。


「なら良かったです、それで優希さん詳しい事は花山院様を含めて、夕食の席でお話したいのですが、これからでも大丈夫でしょうか?」


「わかった、その前に土御門さんと西園寺さんを引き取って来ないと……」


一応下校時刻だし、二人共そろそろ帰って来ないと駄目だろうしな。


「そうですか、ではお先に宿で待ってます、お時間の調整をしておきますね」


「ありがとう、じゃあ行ってくる」


「はい……」


サッと唇を合わせるだけのキスをして異世界へ飛んだ。


◇◆◇◆

「という訳で、皆着ちゃった……」


「ふぇえぇぇぇぇ!?」


深いフードとベールの間から目だけを出したスタイルの賀茂さんが素っ頓狂な声を上げる。


「良いじゃないですの賀茂さん、私も今日覚えた事を試したいところでしたの」


「私は、優希さんの魔法に興味がある」


「うちは監督役どす~皆はんの成長を依頼した責任がるさかい~」


「はぁ……耀さんになんて説明すれば……」


細川君も誘ったのだが、魔力がすっからかんという事でお休みをしたいとの事だった。


「それじゃあ、とりあえず行きましょう」


「「「はい!」」」


ダンジョンに潜り、探索魔法を使いながら進んで行く、昨日も掃討してたからか全然モンスターが居ない……。


「うーん、帰りは一瞬なのでもう少し奥まで行きますか……」


「ダンジョンはここまで出えへんものなんどすか?」


「そんな事は無いですわ、いつもの実習ならもう何体も出会ってますから……」


「ちなみに優希はん、昨日は何階まで掃討したんどすか?」


花山院さんが不思議そうに聞いてくる。


「えっと……一応最下層までですね」


「さいっ!? 私達でも4階層が一番奥なのに……」


「優希さん凄い……」


「だから、なるべく奥の敵も倒さないと、溜まって来るからね」


「そんな膿みたいに……」


賀茂さん、膿とか言わないの……。


「それを言うならニキビの穴から出るヤツの方が……」


「角栓ですわね、あれを出す動画何故か見てしまうんですのよね……」


「わかります、なんか見てしまいますよね……」


お嬢様集団、そんなので良いのか……


少しモヤりつつも、やっと敵が探索魔法に引っかかった。




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作者です。


【ファンタジー長編コンテスト】へ出しております!読者選考期間も終わりまして中間突破が出来ればと思います!


208万1000PV超えました!!ありがとうございます!

毎日、そしてここまで読んでいただける方、ありがとうございます!

読んでいただける方には感謝しかありませんが!!


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☆も1252になりました、めちゃ増えてて感謝です!!

感想も新規ブクマもありがとうございます!!

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