第2話:形代と朧月

ひらひらと揺れ動く形代に元へ歩きながら、周囲を伺う。やっぱりあの形代を扱ってるのは魔力の様だ。


とはいっても、揺らぎが凄くて今にも繋がってる魔力が切れそうだ。


(ふむ……見た感じ俺達が使ってる魔力での誘導をしているバレット系と同じ感じだな)


「ともかく、今は見失わない様に……」


それから階段を上り下りのぼりおりして校舎を半周?程回った所で、当初の目的としていた〝資料庫〟へ入って行った。


「ふむ、目的の場所だし入っていくか」


――ガラガラ。


中に入ると、書庫独特の紙の匂いと薬品の匂いが鼻を突く。教えてもらった場所はここの奥の方なので進んでいく。


「凄いな……普通の本に紛れて紐で綴った本が並んでる……」


タイトルがわからないので一冊手に取ってみる。


「なになに……古今江戸四十八手図録? なんてもんおいてあるんじゃい!」


図柄が浮世絵っぽいのからアニメ画風まで、いや酷いな。


――つんつん。


「いや、待てよ、画風が古いならわかるけどなんでアニメ画風まで綴られてるんだ?」


――つんつん――つんつん。


「ん? 何かに突かれてる?」


その方向を見ると先程の形代と違い、折り紙で作ったであろう兎が足をつついていた。


――ぴょんっ――ぴょんっ。


見ている俺に気付いたのか、振り返りながら紙の兎は床を跳ね、奥へと進んでいく。


「ついて来いって事なのかな?」


兎に連れて来られた先には一人の女の子が、すやすやと寝息を立てながら眠っていた……床で。


「何で床?」


とりあえず、なんか掛けとくか。


「ブランケットは……あったあった」


ブランケットをかけてから、そーっと動いて近くにある書庫の扉を開ける。


「また中は……凄いな……」


ひんやりとして空調の効いた室内は外の光も届かない暗さである。


「うーん……スイッチはどこだろ……」


そう呟くといきなり明かりがついた。


「うわ! びっくりしたぁ……」


よく見ると奥の方に先程の形代が居て、電気のスイッチを押していた。


「あ、君か……ありがとう」


そう近づいてきた形代に言うとぺこりとお辞儀をして出て行った。


「あれが陰陽師の使うものならかなり便利だよな? 視覚情報も触覚の情報もありそうだし……」


あの子が使ってるんだろうか……でも眠ってたし……自立してる?


「まさかねぇ……」



◇◆◇◆

――ヴヴッ――ヴーーッ――ヴヴッ――ヴーーッ。


「ん、巴ちゃんから? げっ、こんな時間だ!」


時計が示すのは午後7時、巴ちゃんと別れてから4時間も経っていた。


「もしもし、巴ちゃん?」


『あっ、優希さん。やっと出てくれました、心配したんですよ?』


「ゴメン、資料を色々と深く読んじゃってて。もうそっち行くよ」


『わかりました。それで、校舎1階の武道館の方へ来て欲しいと花山院さんが』


「わかった、それじゃあ武道館へ向かうよ」


通話を切って本をしまう、それからしっかりと電気を消して施錠する。


「んんっ……これって?」


その声の方を向くと先程から爆睡してた少女と目が合った。


「えっと……オハヨウゴザイマス?」


「…………誰?」


月の光に照らされた、焦点の合わない目が俺を見る。とても綺麗な翡翠の瞳に吸い込まれそうになる。


「えっと……俺は上凪かみなぎ優希ゆうき、明日から転入してくるんだ。それで理事長からここの資料室に俺が興味ありそうな本があるって聞いてね、読ませてもらってたんだ」


さっきまで纏めていたノートを見せながら言うと、少女が目を丸くした。


「陰陽師、興味あるの?」


「あぁ、漫画やアニメで見た存在が居るってワクワクするじゃん」


そう言うとニヤニヤし始める少女。


「……むふー。私、陰陽師」


「マジか……」


「ちょっと待って……記憶を整理する……」


側頭部を人差し指で抑えてうみょうみょ言っている。


「あぁ、貴方でしたんですね。この掛物と私の形代が連れて来たのは……」


「うん、なんか廊下でひらひら舞ってるのを見かけたからさ」


「うむむ、休日だからと練習していたのを見られるとは……」


「練習?」


「えぇ、そうです。私の形代は私の巫術で、私の体の一部を入れる事で自由に動かせるのです」


散らばっている折り紙や形代を鞄に詰め込み始める少女。


「へぇ、凄いんだな陰陽師って」


落ちている形代を拾い手渡し、片付けを手伝う。


「ありがとう……それに、そうでもない。私が出来るのはこれくらいだから、戦えないし……」


そう言って目を伏せる少女、するとガラガラと扉が開く音がする。


結菜ゆいなー、この私が呼びに来ましたわ~お客様がいらしてると花山院様から連絡が来てますわぁ~」


タタっと走って来る足音が聞こえ、背後に気配が現れた。


「結菜……って誰ですの貴方!」


心愛ここあさん、こちらは編入生の……」


「聞いていませんわ! 結菜を放しなさい変質者ぁ!!」


心愛と呼ばれた少女の身体が、ふっと沈み、鋭い蹴りが飛んで来る。


「…………へっ!?」


「……あぶなっ!?」


咄嗟に飛んで来た足を掴んでしまった。だが相手は制服でスカートなので必然的に裾が舞い上がる。


「…………白色」


「ひゃぁ!?」


断じて俺は見てない、見て無いが結菜と呼ばれた彼女によって中身が報告された。


「この! 変・態!!」


掴んだ足を軸にして、もう片足が飛んで来た。




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作者です。

代休なのを良い事に仮眠したら昼過ぎまで寝てました……投稿遅れすみませぬ……。


【ファンタジー長編コンテスト】へ出しております!読者選考期間も終わりまして中間突破が出来ればと思います!


203万8000PV超えました!!ありがとうございます!

毎日、そしてここまで読んでいただける方、ありがとうございます!

読んでいただける方には感謝しかありませんが!!


♡も3万7900超えました!!毎日ありがとうございます!!

☆も1237になりました!感謝!!

感想も新規ブクマもありがとうございます!!

気付いたらブクマも5580超えました!! 感謝!!

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