第2話:お弁当と積み重なる違和感【改稿版】
午前の授業を終え昼休み時間となった、お昼ご飯の為、席に寄ってきた耀と一緒に机を合わせ弁当を広げる。
「優希、今日はお弁当?」
「そうだよー、母さんが新作試したから耀にも食べてもらえって」
「やった、
「耀の舌は母さんも頼りにしてるからね、それじゃあ飲み物を買ってくるよ、何にする?」
「いいの? じゃあ私はお茶で~」
「了解、いってくる~」
「いってら~」
そんな緩い会話をし終えて、食堂前の自販機コーナーまで向かう、俺と耀、二人分のお茶を買い終え、戻る途中顔を合わせたくない奴が、踊り場で待っていた。
ちなみに、ある事が原因で一度振られている。
(面倒だなぁ……急ぐからって人通りの少ない道を選んだのが裏面出たか……)
至極面倒なので、関わらない様に無言で久墨の横を通り抜けようとすると「おい、ちょっと待てよ」と声をかけてきた。
「あー、はい何でしょうか? 耀と弁当食う時間無くなるんで、後にしてください」
面倒くさそうに返すと久墨は舌打ちするとゴミを見るような目でこちらを見つつ声を発した。
「調子に乗るんじゃねーよ、このクソ陰キャ!!」
開口一番罵って来た、誰よこいつの事成績優秀とか言ってるの?
「調子に乗ってる? 何のことですか?」
「耀の事だよあれは俺にこそふさわしい女だ! 近寄るんじゃねぇ!」
もう一度言う、ホント誰こいつの事成績優秀と言ってるの?
というか、耀はあの事でこいつの事、本当に嫌ってるんだけどなぁ……。
「ほんと毎回毎回、面倒な人ですね。耀の恋人にでもなったんですか貴方?」
「うっさいな!! 自分の女の周りに羽虫が飛んでたら追っ払うのは当然だろ!」
なんだろう……超理論過ぎて呆れて声も出ない。
「あーそれ長くなります? もう俺行くんで」
面倒なんでさっさと階段を上がる
「ちょ! 待てよ! っとと」
いきなり肩を引っ張られ振り向かされると胸倉を掴まれる……かと思ったら体制を崩してる。
これ、ホントに掴んでるの? 凄みも圧力も、全く無いんだけど……。
「何ですか? いくら
丁度、上の階から降りてくるであろう女子の声がしてくる。
久墨にも聞こえたのか舌打ちして手を離す、声を荒げるわけにもいけないので久墨は怨めがましい目をして去って行った。
(なんかアイツ、いつもより迫力が無かったな……)
それから教室に戻り、待ちわびたであろう耀と共に、お弁当を開けると色とりどりのおかずと下段には白いご飯が入っていた。
今日のおかずは野菜の肉巻き、うなぎに卵が巻かれたう巻き、ほうれん草とアスパラの胡麻和え、豆腐ミートボールに新作のきのこと海老のテリーヌだ。
「おっ、それが優佳さんの新作かおいしそうだな~」
「何をナチュラルに、人のおかずを全部食べようとしてるんだ、一つだ一つ」
「えー、いいじゃんケチ~」
「全部は駄目だ、俺も食べたい」
「じゃあ私の自信作のから揚げを進呈しよう」
「よっしゃ、久しぶりの耀のから揚げだ」
(このやり取りも、耀の弁当の味も懐かしいな……)
「うっわこのテリーヌおいし……ちょっ優希どうしたの!?」
「えっ?」
唐突に耀に驚かれると耀はハンカチを出して顔を拭いてくる。
「あぁ、ごめん……耀のから揚げが本当においしくてな」
懐かしすぎる感覚から、いつの間にか涙が出てしまっていたみたいなのですぐに笑顔で取り繕う。
「なっ、しょっちゅう食べてるじゃん……そ、そんなにおいしかったの?」
「まぁ、俺にとっては母さんの味より慣れ親しんだ、いわゆるお袋の味って奴だからな」
母さんは揚げ物をあまりしたがらないので、から揚げなどの揚げ物に関しては耀の方が得意である。
それに母さんの仕事上、耀に夕食を作ってもらう事は少なくない。
「仕方ないわね、
「まじか、神かよ。じゃあ夕飯ウチで食うか?」
「いいの? また優佳さんに料理教えてもらおうっと」
「いいんじゃね? 母さんも耀と一緒なら揚げ物もやるだろうし」
母さんは耀が居るとウッキウキで料理をするからな、おかずが増えるのには文句も無いし、耀の食事は今の俺にとって涙が出る程嬉しいからな。
「それに、優希の体育初ゴール記念をしなきゃね♪」
「止めてくれ恥ずかしい、あんなのまぐれだよまぐれ」
「まぐれじゃないよ!? 3人抜いてゴールを決めたんだよ!」
「いやまぁ、やったら出来たからなぁ……」
「それでもすごいよ! 意外な才能発揮しちゃったね!」
そう言って頬をつついてくる耀、流石に学校なので辞めて欲しいが、耀にはお構いなしだろうしな……。
「恥ずかしいからやめて!」
「うりうり~」
それからふざけつつも耀と残りの弁当を食べきった。
夕食の楽しみだなぁ……。
〝周りの心の声((((((早く結婚しろよコイツら!!!))))))〟
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