第42話:永愛の宝玉

ミローズを出発してからすぐに転移で宝石獣カーバンクルの里へ飛ぶと、挨拶もそこそこに歴代里長の祠へ向かう。


「ユウキさん、お願いします」


「わかった、じゃあ。はぁっ!」


セレーネと共に魔力を流し祖先たちを呼び出す。


『おぉ【虹の子】と伴侶か。何かあったのか?』


『相変わらず、問題に付き纏われてるわよね』


「「あはは……」」


『それで、今日はどうしたんじゃ?』


『それに何か違和感が……』


「それはですね、少し旅行に出かけた際にこちらをいただきまして、何かに仕えないか考えたんですが、何か良いアイデアは無いですか?」


セレーネが首にかけた袋から、例の宝石を取り出した。


『それは……同胞はらからの宝玉か……』


「宝玉?」


『あぁ、婿殿。宝石獣は死すとその宝石を残すが、我々はそれを宝玉と呼んでいる。その中にはその者の魂の一部が残り、永遠に残り続けるのだ』


『えぇ、今の子達は呼ばないけど、【永愛えいえんの宝玉】とも呼ばれていて。夫婦や恋人との死後も、その愛情は永遠を誓うというものよ』


「へぇーそうだったんですね。だからあんなに惚気た手紙が入ってたんですね」


『そうじゃ、その宝玉こちらに持ってきてくれるか?』


「はい、どうぞ」


『失礼するぞ……はっ!』


ご先祖様が魔力を移し与えると、先程まで物言わなかった宝玉が淡い光を持ち、宙へ浮く。


『えっと……ここは……』


『宝石獣の里で、ここはその祠じゃよ』


『でも、私はあの街で……』


『そうだ、お主は外で命を燃やした。その後長い時を経てこの地に帰って来たのだ』


『そうだったのね、でもなんで私ここに居るのかしら?』


『それは、そこにいる二人が連れてきて来れたのじゃよ』


すると宝玉の主がこちらを向いた。(姿は見え無いけど……)


『はぇー私と同じ人間ヒューマンに恋したのね。それにしても私の旦那に並ぶ程の良い男ねぇ』


「あげないですよ! ユウキさんは私のです!!」


セレーネが俺の腕に抱き付く、柔らかい感触が右腕を襲う。


『大丈夫大丈夫! 私はもう死んでるし、それに旦那様一筋だから!』


そう笑い、俺達の周りを飛ぶ宝玉、中々にクセが強そうな人だ。


『まぁ、せっかくだし私の力、貴女にあげるわ』


「へっ?」


『だーかーらー私の力を貴女にあげるのよ、大きな戦いに行くみたいだし、必要でしょ?』


「え、えっと……はい」


『それに、貴方とその旦那様を見てると私達の若い頃を思い出すのよ。なのでつべこべ言わず貰っておきなさい』


「ありがとうございます……」


『そうねぇ……何か魔力を宿せる武器、あるかしら?』


「えっと……」


『そうじゃのう、我々が作った武器はどうじゃ?』


横で見ていた元里長達が寄って来る。


『あれなら魔力を宿せるからの。さぁ、出してみると良い』


「はっ、はい!」


空間収納アイテムボックスの魔道具から武器を取り出す、すると宝玉が品定めする様に見ている。


『凄いわね……こんなすごい武器、私見た事無いわ』


『ワシらが丹精込めて作ったからの』


『うんうん、これなら十分ね。それじゃあいくわよ!』


『ワシらも補助するぞ』


するとセレーネの刀に宝石が吸い込まれていき宝玉の形が変化する。それは柄頭より伸びていた腕貫へと小さめの宝玉となって付く。


『よし、これで大丈夫。これで宝石魔法が使いやすくなったはずだから』


「ありがとうございます!」


お辞儀するセレーネに光球となった宝玉の持ち主が近づく。


『頑張りなさいよ~あんな良い男もう見つからないわよ』


「ふぇ!? そ、そうですね!」


『うんうん。私、素直な子は大好きだからね。また来てよ』


「わかりました。えっと、マーレルさん!」


『ふふっ、名前。呼んでくれてありがとうね、セレーネちゃん』


そうして余韻を味わう様にセレーネの周りを離れ他の里長達と楽しそうに話すのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆

それから、手短にセーレさん達に挨拶してお土産を渡すと、駐屯していた兵達を労ってたリリアーナに声を掛け、なんかメカメカしい釣り竿で子供達と釣りをしていたアミリアとロップルさんを回収して出発する。


「さて、帰ったらシアと共に向こうの王都へ向かわないとなぁ……」


「王都ですか、確か調べ物でしたね」


「私、行かなくて大丈夫?」


「流石に難しいんじゃないかなぁ……アミリアは顔割れてるし」


「そうね……私はリリアーナと鍛錬してるわ」


「えぇ!? 私も駄目なんですか!?」


「うーん……別に良いんだけど今回は本当に潜入だからね。リリアーナが本当に綺麗すぎるから目立っちゃうんだ」


そう言うとリリアーナが顔を赤くしてそっぽを向く。


「もうっ……口が上手いんですから……仕方ないですわ、今回はアミリアさん達とお留守番してますわ」


「私は行かない方が良いと思いますので、リリアーナ様達と鍛錬してますね」


「うん、ありがとうセレーネ」


「ねぇねぇ聖騎士様、聖騎士様! 私は?」


ロップルさんが身を乗り出して聞いてくる。


「駄目です、流石にロップルさんの見た目は目立ちすぎますし、あそこは獣人が本当に奴隷として扱われてますのでオススメしません」


「むぅ……そう言われるとちょっと気が引ける……」


「という訳で、今回も我慢してて下さい。代わりに宝飾品をまた売ってきますから」


「わーい! じゃあ出発までに結構作っちゃうね!」


そう言って喜ぶ姿を皆で呆れながら馬車を魔王都へ走らせた。



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