第62話:追跡中

◇???side◇

「全く……汚いったらありゃしないわね……」


饐えた匂いのする小屋の中へ入るとそこに似つかわしくない豪華な身なりの男が居た。


「あぁ、私もこんなところで会話はしたくなかったがな見つかる訳にはいかんのだよ」


「全くお貴族様は大変だねぇ……」


「フンッ、国王に責任を追及されて首が締まる事のない冒険者様はプライドもへったくれも無いんだねぇ……」


「「……チッ」」


これ以上は無駄になるのでここでやめておく、相手もそれはわかってる様で剣を収める。


「それより仕事の話だ、商品は問題無いか?」


「あぁ、それと別件で調べて欲しい貴族の娘が居るのだが」


「ふむ、私の知ってる範囲でなら調べてやろう、だが高いぞ」


「わかっているわ、特徴は――――」



◇◆◇◆◇◆◇◆

◇優希side◇


「さて、今日はここで野営だな」


ぽっかりと空いた洞窟の中を見てセレーネに提案する。


「わかりました! それでこの洞窟は?」


「うーん、多分野生動物のねぐらだと思う」


そう言ったら熊の親子が奥からのっしのっしと歩いてきた。


「ひゅうええ!? ク、クマぁ!?」


いきなり現れた熊に身構える、すると子熊が俺の横に来て頭をすりすりと頭をこすりつけて来た。


「がうがうがう~」


「くすぐったいなぁ~ほーれ、よしよし~。……ぐえっ!」


わしゃわしゃと撫でていると隣から何かが突っ込んで来た。


「フシュウウウウウウウ!!」


「セレーネ!?」


「ぎゃうぎゃうぎゃう!!」


ぐいぐいと頭を押し付けて来るセレーネ、ときたま子熊に威嚇をしている。


「セレーネ落ち着け! そんなに威嚇したら可哀想だろ!?」


「きゃう! きゃうきゃう!」


「何を言ってるかわからない……」


「ユウキさん!! なんでそんな熊を撫でてるんですか!! 私が居るのに!!」


かなり語気を荒げていうセレーネ。


「えぇ……」「がぅ……」


ほら、親熊も引いてるじゃん!


「ともかくその子を撫でるなら私も撫でるべき!!」


そうしてそれからしばらくの間セレーネと子熊を撫でていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆

翌朝起きると人の姿に戻ったセレーネが腕の中で寝ていた、全裸で……。


「ふぅ……昨日は大変だった……」


子熊はすぐに飽きたのだが、セレーネは夜半過ぎまで時より撫でられ待ちをしていて事あるごとに撫でさせられた、最後の方は子熊に勝ち誇った様な顔をしていた。


「まさかセレーネにこんな地雷? があるなんてなぁ……」


魔獣の子を撫でてた時は何ともしてこなかったのにいったいどうしてだろう……。


「んんっ……」


いつの間にかセレーネが抱き付いて頬を擦りつけて来る。


「ユウキしゃーん……Zzz」


「さて……朝ご飯はどうしようかな……」


「がうっ」


すると母熊が大きな魚を咥えて来た。


「食べていいの?」


「がうっ」


こっちの言葉がわかっているのか、はたまた調理してほしいのか。じーっと見つめて来る。


「ははっ、わかったよ。少しまっててね」


ゆっくりセレーネの拘束を外して空間収納アイテムボックスから毛布を掛ける。


「さて……窯焼きにしようかな、香りづけ程度の香草なら嫌がらないだろうし、味は塩だけでいいか」


外に出て魔法で簡易的な調理台を作って綺麗にしてから乗せる。


「包丁は……そういえば前にリッカルドさんに渡し忘れたのがあったな……。今度鷲司さんに刀の打ち方教えて貰うしその時に作ったのをあげよう」


それからかっぱ橋で買った切れ味のいい包丁で内臓を取り出し躁血魔法で血抜きをする、これ水魔法より便利だな。


内臓を捨てようかと悩んでたら母熊が涎を垂らしてたのであげると喜んでがっつき始めた。


それから塩とハーブを魚に塗り込み簡易的な竈と窯を作る。


肉は塩コショウでいいか、先にハーブ塩を練り込んで置いておく、その後はアルミホイルで包んでたき火の中へ焦がさない様に弱火のとこに入れる。


魚は塩を振りそのまま窯の中に入れて火を調整する、3分程で薪を取り除いて蒸し焼きにする。


「肉の方は大丈夫かな~」


火の中から取り出して鉄串を刺す、肉汁が少し赤いので窯に入れておく。


「流石にこっちの世界のお肉だし、半生は避けたい……」


それから15分程、窯を鑑定で見ながら温度調整しつつ出来上がりを待っているとセレーネが起きて来た。


「すみませんユウキさん! 私すっかり寝てしまって!!」


「大丈夫だよ~熊に頼まれて料理してたし、それより服を着たら?」


「おひょう!? なななな!? 私いつの間に!?」


「朝起きたらなってたから、多分無意識に【獣化】してたんじゃない?」


「うぅ……お見苦しいものを……」


「いやいや綺麗だよ、それに意外とスタイル良いんだな~って思ったし」


「あうあうあう~着替えてきましゅ!!」


そう言って慌てて洞窟内へ入って行った。


「がうっ!」


「大丈夫だよ、もう少しで出来上がりだ」


それから着替えて来たセレーネと、起きて来た子熊と共に朝飯を食べて、俺達は出発した。


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