第45話:宝石獣の里へ……

翌朝城門前にリリアーナとセレーネ、そしてノクタールさんが居た。


「ではお父様、行ってまいります」


「あぁ、私の名代として頑張っておいで。ユウキ君、娘が暴走したら頼むよ」


「お父様!?」


「はい、ノクタールさん」


「カミナギ様!?」


「それとセレーネ君。もし、どうしても困ったら私の名前を出しなさい。君は私の庇護下だからね」


「はい。ですが、良いのでしょうか?」


「構わないよ、宝石獣は本来国で保護していたのだから、セレーネ君が気にする必要は無いよ」


「ノクタールさん、そういえば国で保護してるのは聞いたんですけど、どうしてセレーネが捕まってしまったんですか?」


「うーん、それは私としても知りたいんだ、一応里のある森では方向が狂う様な催眠魔法をいくつも展開してるのに」


俺とノクタールさんの視線がセレーネへ向かう。


「えっと……その……」


もじもじとするセレーネ、言い辛い事なんだろうか。


「セレーネ、もしその時の事が辛くて言えないなら言わなくていいよ」


「そうだね、出来れば知りたかっただけで。セレーネ君が言いたくないなら言わなくて大丈夫だよ」


俺とノクタールさんが気まずい空気を察して言うと、セレーネは顔を赤くする。


「いえ……大丈夫です! そんな大げさな話じゃなくて!」


おろおろと顔を赤くして言うセレーネ。


「もし、男性に言い辛い事でしたらわたくしが聞きますわ」


リリアーナがセレーネの肩に手を添える、確かに男だと言い辛いことあるよな。


「い、いえ! その……その森にかけてある催眠魔法に、ドジをしてかかってしまったんです、。それで森を彷徨って疲れたタイミングで眠っちゃったんです……、その時運悪く私を攫った人間達に見つかってしまって……」


「そうか……教えてくれてありがとう。確かに、過去にかけた効果範囲の再考を考えるべきか、それとも魔道具を持たせるべきか……(ブツブツ」


ノクタールさんが考え込みぶつぶつと考え始めた、確かに昔と違ってセレーネ達、宝石獣カーバンクルの行動範囲は広がってるだろうし、考えた方が良さげだ。


「リリアーナ、ユウキ君。里から近い所の、おおまかで良いから催眠魔法の効果範囲をこの地図に書き込んでくれ。それを受け取り次第、張り直しをしようと思う」


そう言って懐から地図を取り出した、どこにそんなの仕舞ってるのだろう……。


「わかりました、任せて下さい」


「わかりましたわ、お父様」


それから到着した馬車に乗り込み出発した。


「それではお願いします」


「かしこまりました、はっつ!」


御者さんから歩き出しの合図を受け取った馬が歩き出す、朝日が昇るかどうか位なのでゆっくりと歩き出す。


「寒くないですか?」


「えぇ、カミナギ様よりいただいたこの奇妙な膝かけ、凄く温かいです」


安物のブランケットと防災用のアルミシートを手に喜ぶ御者さん。


「灯りの方はどうですか?」


「はい、この『カイチュウデントウ』のお陰でかなり明るいです」


馬車に取りつけたLEDライトは問題無く作動している様だ、かなり明るいけど……。


「それじゃあ、何かあったら伝えて下さい」


「畏まりました、それでは」


歩いてる位の速度なので、キャビンに戻るのは楽だ。


「おかえりなさいませご主人様」


「おかえりなさいカミナギ様」


キャビンに乗ると二人が声を掛けて来た。


「いやー寒いね、二人共大丈夫?」


「はい、このお布団凄く温かいです


「そうですね、とても柔らかいですし、触り心地も凄く良いですね」


二人が使っているのはユフィ制作の魔道具で魔石を着けると布団全体が温かくなる装置が付いてる魔道具だ、炬燵と電気毛布から着想を得て作ったらしい。


一応、冷暖房が出来る空調魔法を使ってるからそこまでは寒くないけど、ぬくぬくしてた方が気分が良いからね。


◇◆◇◆◇◆◇◆

そうして揺られる事3時間、森の入り口に到着した。


「すみません、ここからは入れませんので……」


整備されてないので、ここからは歩いて進むことになる。


「いえ、大丈夫ですよ」


「そうです、助かりました!」


「ありがとうございます、お陰で快適な移動でしたわ」


「もったいなきお言葉! 私この仕事が出来て感涙です!!」


むせび泣く御者さんを見送ると、森の中へと入って行く。


「結構足場が悪いな、二人共大丈夫?」


「はい、私は飛べますので、問題は無いです」


「そうそう、この絶妙に足を取られる高さの草、懐かしいです……」


「いや、セレーネ……歩き辛くないの?」


楽しそうに踏みしめるセレーネを見てちょっとだけ拍子抜けをした。


「えぇ! 大丈夫です!」


「それじゃあ、ゆっくり進んでいこうか」


「「はい!」」


そうして森に入り早3時間、日が届くのでわかるが丁度お昼くらいの時間だ。


「うーん、お昼にしたいけど丁度いいとこ無いかな?」


「そうですね……川も遠いですし、どうしましょう……」


三人で頭を突き合わせて悩む、正直食べるところ作っても良いけど、里に結構近いのであまり痕跡を残したくない。


「私はお腹はそこまで空いてませんね」


「私も、まだ大丈夫です」


「じゃあ、少しお菓子を食べて。あと一息頑張ろうか!」


「「はい!!」」


ちょっとお菓子をつまんでから再度歩き出す、しばらく歩くと薄っすらと魔力を感じる。


「カミナギ様」「ご主人様」


「ここが催眠魔法の境目みたいだな、まぁ俺達には効かないけどね」


「そうですね、私ははっきりと魔力が見えますので」


「私も、なんとなくですけど見えます!」


なんとなくもやったしたものが見て取れる。


「じゃあ行こうか」


「わかりました」


「はい!」


そうして三人で歩き重複してかけられている催眠魔法の森を抜けると、そこは小高い丘で、眼下に湖が見えた。


「すごい……」


「綺麗だな……」


湖畔に集落があり反対側には大きな小麦畑が広がっていた。


「やっと……帰って来れました……うぅ……」


うずくまって涙を流すセレーネ。攫われ、軟禁生活と戦いで命が失われる直前だったからね。


「ゴメンな、もっと早くくれば良かったね」


「いえいえ! ご主人様のお陰でこうして帰って来れたんです。でも見た瞬間ほっとし過ぎたというか……気が抜けちゃいました」


涙で顔を濡らせながらにへらと笑うセレーネ、そんな彼女の頭をリリアーナが抱きしめ撫で始める。


「私も、気付かなくてすみませんでした」


「そんな! リリアーナ様に謝ってもらう必要は!」


そんな感じでセレーネがわたわたしていると周りに複数の気配が現れた。


「動くな!!」


「武器を捨てろ!」


「懲りずに又来やがったな!」


「「「この人攫いめ!!」」」


全裸の成人男性たちが武器を突き付けて来た。



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作者です!

全裸の成人男性たちは一体何者なんだろう……


永続式の催眠魔法がどれくらい見えるかについて。

リリアーナ:魔力が見えるのでしっかり見えます。

セレーネ:昔は見えなかったが闘技場での戦いや優希との手合わせでレベルが上がってなんとなく見える。

優希:良く見える鑑定使えば魔法陣の設置位置まで見える。

(オマケ、現代組)

耀・ユフィ:リリアーナより見えて魔力の流れや設置位置まで見える。なんなら魔法陣もいじれる。

春華・冬華・ミュリ・エアリス:割と良く見える。

鈴香・メアリー・ユキ:本能的に危機察知で回避できる。

巴:見えない

里菜:とある事情により良く見える。


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