第49話:王都出発

それからは各々武器や魔法のお試しをしたり日々の鍛錬をして過ごしていた。


専ら俺はエアリスと耀に二人と共に貴族の相手をしたり、馬に乗る練習をしたり、今回参戦してくれる兵士達と模擬戦だったり、馬に乗る練習だったり、副官を務める軍の方たちと共に軍の動かし方等を学んでいた、馬にひたすら乗せられた。


そして4日後、会議でエアリスが宣言した5日目になったので出発の期日になった。


俺はしこたま練習させられた馬に騎乗し、集まった貴族や一部の騎士達の前に立っていた。


「皆さん集まっていただきありがとうございます!これから前線に赴きましょう!」


正直、練習したとはいえ騎乗するのでいっぱいいっぱいである。


「よし…頼むぞー」


「——ブルルル」


跨った馬がゆっくり歩きだす。


「よっと…」


馬も気を遣ってくれてるのか、気持ちゆっくり歩いてくれてる。


ほんと…騎馬だけは下手だったんだよなぁ…自分の体で動かすのは得意なんだけど…騎馬で動き回るのだけは駄目だった…耀達はすんなり乗れていたのでなんか悔しい。


「わぁ!!!!!!!」


城門を出るとそこから大通りに入る、入った瞬間沿道から歓声が上がる。簡易的なパレードと言っていたがなんかめっちゃ人多くね?


「ハッハッハ!いやー凄い人ですな!ユウキ殿!」


大きな笑い声を出しながら隣に見知った顔が馬を寄せて来る。


「ホークアイツ侯爵!きてたんですね」


「はい!ユウキ殿が軍を率いての初陣、そのような面白い事参加しない訳がありませんぞ!それに此度はワシが副官、ワシの孫がその補佐に付きます故よろしく頼みますぞ!」


「はい!侯爵なら安心できます!」


「ハッハッハ!」


そう笑いながら下がっていった、それも束の間。


「ユウキ!」


隊列の間をミュリが抜けてきた。


「どうしたの?何かあった?」


「いやな、ギリギリまで苦労してただろう?心配になってな」


「あはは…コイツのお陰でなんとかなってるよ」


乗ってる馬の首を撫でてやると気持ちよさそうに応える。


「——ヒヒィン」


任せろばかりに軽く嘶く。


「そうか、ならこのまま向おうか」


それから二人で並びながら市街地を抜ける、外に出ると約3000の兵が待機していた。


「勇者殿!我ら全員この日の為に備えお待ちしておりました!」


「「「「おおおおおおおおおお!!」」」」


「それじゃあ!先に行った皆を助けに行こうか!」


「「「「おおおおおおおおおお!!」」」」


◇◆◇◆◇◆◇◆

それから二日後、最前線と言われていた砦まで到達した。


砦の門が開き中に入ると砦の担当官が現れる。


「お待ちしておりました!勇者様!」


「お待たせしました、それで今の戦況は?」


「7日前に出発、前線は押し返して、現在はここから馬で3日の距離に位置しております、陣は大体ここから二日半の位置にある小高い丘が本陣です。」


「ありがとうございます、それじゃあ少し休息して出発しましょうかね」


「大丈夫なのですか?」


「それについては心配いらん、行軍速度は異常に早いのでな!」


「ホークアイツ侯爵様!」


「よいよい、今は変事それにここは戦場だ、わざわざ爵位など気にせんよ」


「かしこまりました、ホークアイツ様」


「それでホークアイツさん、兵は?」


「大丈夫だ、寧ろ調子が良くて元気すぎるぞ!」


「あはは…すごいなー現代の栄養学は…」


身体強化と騎馬での行軍、輜重隊は基本、俺や皆が空間収納アイテムボックスに保管してある。食事も栄養バランスの良いものを春華とシェフの方々が用意してくれた、お陰で従来の行軍速度が倍近い速度で進んでるらしい。


「それじゃあ、このまま向こう側に橋を渡しますね!おい!橋を降ろしてくれ!」


そう言って伝令の人に伝えると程なくして橋が降りて向う側へ渡れるようになった。


「それじゃあ勇者様、ホークアイツ様。ご武運を!!」


「「「ご武運を!!」」」


そう言って見送られ、再度出発した。


「優希おにーさん!」


進行していると春華がやって来た。


「どうしたの春華?」


「えっと、今日のお昼の分の糧食の残りがこのくらいでした」


そう言って春華がクリップボードに留められた数値を見る。


「ありがとう、やっぱりスポーツドリンクが足りないか…」


「そうですね。兵士の方も、この速度で行軍した事は無いからと言ってました」


「そうしたらもう少し進んでから休息にしようか、その時に作っちゃうから手伝ってくれる?」


「はい!任せて下さい!」


「ありがとう、助かるよ」


「そうじゃのう、ハルカ様の知識は大変役立ちますぞ」


「えへへ、ありがとうございます」


「惜しいのう…ユウキ殿の嫁子でなければ、ワシの孫に歓迎したのじゃがのう…」


「あはは、ダメですよ~春華は俺の大切な奥さんの1人なんで」


そう言うと春華が顔を赤くして照れ始める。


「そ、それじゃあ、また休息の際に来ますね!」


そう言って踵を返して戻って行った。


それからしばらく進むと、物見に出していた兵達が戻って来た。


「勇者様!副官殿!」


「どうしました?」


「そんなに急いで…敵襲か?」


水魔で出した水を渡しながら返答を待つ。


「いえ!まだ戦闘には入っておりませんが…敵の一群が見えましたのでご報告に参りました!!」


「ありがとう、それを飲んだら耀とユフィと冬華とメアリーを呼んで来て」


「かしこまりました!」


そう言って水を飲んだ兵達が散らばっていった。


「さて…ド派手に参戦の狼煙を上げましょうか…」


「ハッハッハ!お手並み拝見だな!」


「強いですよ、俺の嫁達は」


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ユキの獣化状態のイメージイラストアップしております!近況ノートで見て下さい!


次回:敵が可哀想

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