第28話:町長と鑑定

詰所で鑑定した結果雛菊さんの遺体は別物だった。それでいて衛兵の中には盗賊が紛れ込んでいる為、鑑定の使える人のいる役所へ到達した。


「いらっしゃいませ、本日は……ユフィリール様!?」


「町長に逢いに来た、至急」


「はっ!はいぃぃ!」


受け付けのお姉さんが慌てて走っていく。


それから数分後、受付のお姉さんが戻って来た。


「お待たせしました、町長がお会いになるそうです」


「ん、わかった」


ユフィの後に付いて行くと町長室へ到着した。


「ユウキ、一応鑑定をしといて」


「わかった」


ユフィが扉を開ける、中に入る。


すると、眼鏡をしてきっちり、オールバックにした男性が待っていた。


(——鑑定)

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名前:スタニス ラジャン 性別:男 年齢:25

状態:恋慕、緊張

備考:真面目な青年、ユフィリールに惚れている。盗賊団の一味では無い。父親の跡を継ぎこの街を統治している(押し付けたられた)、鑑定持ち。

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(わーお、ユフィに惚れてるのかー残念だな…)


「ユ、ユフィリールさん、こんにちは。本日はどうされましたか?」


「今日は、貴方の力を借りたい」


「僕のですか!?ぜひぜひ!!」


「ん、助かる」


「それで、そちらの男性は?」


「ユウキ」


「ユウキというと…カミナギ・ユウキ様ですか?」


「そう、勇者」


「ぐっ…そう言う事ですか…」


「それで、一体どうしたんですか?」


「ヒナギクが攫われた」


「ヒナギクというと…あぁ、魔法鎧店の店主でしたか、でもあの方男性だったと記憶しているのですが…」


「いや、ヒナギクは女性、魔法で姿、変えてる」


「そうだったんですか…」


「わかりました。それで、僕はどうすれば?」


「恐らく、衛兵に手引きした奴が居る」


「つまり、それを鑑定で見抜けば良いんですね」


「そう…」


「それで、今からですか?」


「ん、早い方が良い」


「わかりました」


◇◆◇◆◇◆◇◆

それから、馬車に乗り衛兵の詰所に到着すると衛兵たちが全員出てきた。


「町長!本日はどうされましたか?」


「いやね、友人のユフィリール様の友人が昨日殺された件でね」


(何でコイツ『僕の』を強調してるのか…)


「と言いますと…誰でしょうか?」


「あぁ…ヒナギクという女性だな、今朝焼死体で発見された」


「あの…それは…事故死では?」


「ほう…ならば…その遺体を鑑定しても良いと?」


「はい、誰か!」


そうして雛菊さん(偽)の遺体が持ってこられた。


「———鑑定!」


皆が見つめる中、町長が鑑定をする。


「…誰だこのエクヘナという少女は!しかも南部の難民だと!?」


そう言うとヴァンノ(盗賊団の一味)が激しく動揺する。


「ほう…ヴァンノといったか…お前は知っている様だな」


町長が鑑定で全員を見渡す。


そして次々と盗賊団の一味をピックアップしていく。


「この者たちは盗賊団の一味だ!捕らえておけ!」


「クソっ!!こんなところで捕まってたまるか!」


「俺は!俺はまだこんなとこで!!」


次々に剣を抜く盗賊達、そしてその一人ヴァンノがユフィへと襲い掛かる。


「ユフィさん!!」


町長が体を割りこもうと走るが間に合わない…訳ないじゃん。


「お前、俺の目の前でユフィに届くと思ったか?」


俺は空間収納アイテムボックスから取り出した刀で両手を切り落とし、蹴り飛ばす、失血死しないように傷口を火魔法で灼くのも忘れない


「ぎゃあああああああああああああ」


恐らく潜入してる盗賊の中で一番強い彼が瞬殺されてしまい他の盗賊達は唖然としている。


ちょっと本気でキレてるので盗賊達の前に出る。


「ほら、逃げていいぞ?1分やるよ、その代わり1分経ったらお前らを捕まえる、コイツみたいに両手両足が無事とは限らないけどね。まぁさっきの見てて勝てると思うなら向かって来いよ、相手してやる」


抜き身の刀をだらりと下げて殺気を軽く放ちながら言う、すると腰を抜かす衛兵と盗賊が数名、残りの盗賊は諦めたのかその場にへたり込む。


「なんだ、骨が無いなぁ…」


「ユウキ強い」


「何なんですか…その強さ…」


へたり込んだ町長が言う。


「それと…『私の前で倒れし尊き命の器よ、私の力をもって癒やせ!その力はすべての傷を癒し本来の姿を取り戻すであろう!』――パーフェクトヒール」


頭の中でエクヘナちゃんの体が元に戻る様に想い描く、そうするとエクヘナちゃんの体は元に戻り、綺麗な、傷一つない体に戻った。


「ふぅ…生き返る事は無いけど…これでこの子の魂が救われます様に…」


そう言って周りを見渡すと、皆唖然としていた。


「俺?何かやっちゃいました?」


「ユウキ。普通のパーフェクトヒールは、人間の欠損を治すまでしか出来ない。でもユウキのパーフェクトヒールは、まるで生前に戻ったかの様な状態、異常…」


「えぇ…正直このレベルの回復は初めてです」


「あーあはは…まあこれで、この人たちの尋問は楽になったでしょ」


そう言うと盗賊達の顔が真っ青になった。


「とゆうわけで、どんな傷でも治すから、さっさと吐いた方が身のためだよ」


笑顔で言うと盗賊達は死んだ様な顔になった。


◇◆◇◆◇◆◇◆

そうして盗賊は衛兵たちに引っ張られていき、各々尋問にかけられ、早々に口を割った。


それから情報の擦り合わせがされて、盗賊団のアジトが判明した。


「お疲れ、町長」


「町長さんお疲れさまでした」


「い、いえ…それで、ユフィリール様。少しお時間よろしいでしょうか…」


そうしてここから離れる二人。


『ん?何?』


『この件が無事終わりましたら、どうでしょう?私と食事でも…』


『んー、ユウキに聞かないと』


『いえ…あの、二人でなのですが…』


『ん、それでも、ユウキには聞かないと』


『どうしてですか?彼は異世界の住人、貴方の恋人ではないでしょう?』


『ん、恋人じゃ無い』


『だったら…』


『旦那様、だから』


ユフィが顔を赤らめて言う、そう言えば旦那様とかユフィに初めて言われたな、まぁ初めてが半分盗み聞きというのがアレなのだが…


『なっ…』


そうして町長は脳が破壊されてしまい真っ白になってしまった…


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