第5話:ご愁傷様です、鷲司さん…

両親と挨拶をし終えたその日の夜、春華と冬華が鷲司さんと姫華さんと一緒に帰って来た。


「おにーちゃん!!」


家族での話し合いが終わり、皆夕食を食べた後、早々に帰路に着いた(みんな一様に馬に蹴られたくないと言っていた)。それからお風呂に入りに行った耀を見送って、リビングのソファーでくつろいでいると後頭部からの衝撃に襲われた。


振り返ると唐突に冬華にキスをされて押し倒される。


と思ったら馬乗りになった冬華が途端に泣き始めた。


「よかった…よかったよぉぉぉぉぉ」


ボロボロと涙が止まらくなった冬華を抱きしめて頭を撫でる。


「心配かけたな、ゴメン冬華」


「ホントだよぉ…すっごくすっごく、すっっっっっっごく心配したんだから!」


「ごめんな本当に…」


「本当ですよ…私もすっっっっっっごく心配したんですよ?」


呆れと喜びの入った涙目の春華に膝枕をされる。


「春華、ありがとう」


みあげていると春華にキスをされた。


「これで許してあげます」



◇◆◇◆◇◆◇◆


それから優しく微笑んでる春華の頬を撫でていると唐突に咳払いの音がした。


その方向に視線を向けると鷲司さんが気まずそうな顔をしていた。


「そろそろ…いいか?」


「あっ、はい。ほら冬華、こっち座って」


「うぅ~」


のそのそと左の膝上に座ってくる。


そして春華が無言で右の膝上に座ってくる。


「ちょ、二人共…」


「良いじゃない、二人共それなりに心配してたんだら。ねぇ鷲司さん?」


姫華さんがすかさず援護射撃を入れてくる。


「まぁ…うん…それ位なら」


なんかすみません鷲司さん。


「良いのよ、最近二人が甘えてくれなくて寂しがってるだけだから。それにね、ここだけの話なんだけど、鷲司さんずっと優希君が息子になるーって喜んでたのよ」


「姫華…その話は…」


「あら、良いじゃない。優希君の事聞いて、こっちが注意しても飲んだくれになってた癖に」


「そうそう、お父さんを説得するのに私達まで駆り出されたんだから…」


「本当に困ったお父さんです…」


二人が膝の上から講義をする。


「おほん、とりあえず優希、お帰り。良く帰って来てくれた」


少し恥ずかしそうに鷲司さんが言う。


「優希君お帰りなさい、春華と冬華に優希君は大丈夫と聞いていたけれど少しやきもきしちゃったわ」


事件直後に二人に会いに行ってた姫華さんは当初二人があっけらかんとしてて逆に心配したそうだ。


「だから言ったじゃん、おにーちゃんは生きてるって」


「まぁ私と冬華には不思議と優希おにーさんが生きてるってわかってましたからね、でも何でわかったんでしょう?」


「あ、それ私も聞きたい」


丁度お風呂から上がった耀が髪を拭きながらやって来た。


「こんばんは、鷲司さん姫華さん」


「こんばんは水城さん」


「こんばんは耀ちゃん」


そう言えばさっきはそのまま打ち上げみたいな感じになっちゃったし説明する暇なかったっけ?


「あーそれは…うん、まぁこの機会だし話しちゃおうか。多分その指輪が原因?要因?なんだよね」


「この指輪ですか?」


「そういえば優希が居なくなるちょっと前の朝にくれたやつだよね?」


「そうそう、朝いきなり神様から5人分渡されたんだよ」


「おにーちゃん、神様って…いきなりどうしたの?」


冬華が呆れた様な顔をしている。


「あっそうか…そこから話さないといけないのか…」



それから、この世界の神様の事をや異世界の事を説明したら、最初は怪訝な顔をされたんだけどなんとかわかってもらえた。


「そうだったのね、優希君が只者じゃないとは思ってたけど、まさか神様と繋がりがあったなんて…」


「そうだな、俺の技も簡単に真似してたが…そう言う事か」


なんか姫華さんと鷲司さんに感心された。


「あっ、鷲司さん。それは元々優希の持ってる能力です、優希は昔から真似っこが上手くて、遊びとかでも私の真似や上手い人の真似をして、すぐに上達してたんですよ」


耀さん!それ今言わなくても!ってなんで親指立ててるの!


「ほう…やっぱり優希は小鳥遊流を継ぐのに丁度良さそうだな」


「ちょっと待ってください!お弟子さんでもっと良い人とかいないんですか!?」


「うーん、無理ね」


「姫華さん!?ちょっとどうゆう事ですか?」


「だって、ウチの道場で一番強いの春華だもの」


「そうだね、春華には私もかなわないよ」


「まぁそうゆう事だ、その内鍛えてやる、立派な後継者になって貰うからな」


「良かったね優希!就職先見つかったわね!」とニッコニコする耀。


(どうしてこうなった!!!!!)


「それにしても、いい男になったわね…」


「ですよねー姫華さん、見る目があります!」


「ちょ!おかーさん優希おにーちゃんはあげないからね!」


「おかーさん!優希おにーさんは渡しません!」


「大丈夫よ~私鷲司さん一筋だもの」


「嘘だ!今目が本気だった!」


「優希おにーさん、警戒してください!あの目はお父さんが絞られた前日にしてた目です!」


「春華!?何故それを!?」


おお、珍しく鷲司さんが狼狽えてる…いや娘に夜の事情を知られてるのは恥ずかしいな。


「流石に手は出さないわよ~代わりに鷲司さん…今日は覚悟してくださいね♪」


「ひっ……」


ご愁傷様です、鷲司さん。


「優希、貴方もよ?」


「え?」


俺の寝不足が決定していた。


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この作品はNTRはありませんので!

姫華さんルートはありません!

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