第37話:神楽坂さん

イタリアからの帰国をした翌日、俺は渋谷に来ていた。


「えっと…あ、いた!おーい!」


目的の人物が待っている忠犬の銅像の前で呼ぶと彼女はこちらを一瞥する。


「こんにちは、上凪さん」


「こんにちは、神楽坂さん」


「すみません、お待たせしました」


「いいえ、大丈夫です、待ち合わせ迄30分も早いので……どうせ今日は暇ですし(ボソッ」


「ん?何か言いました?」


「いえ、何でもないです」


神楽坂さんの雰囲気が重い?いや…これは憎しみ?


(俺何かしちゃったのかな?)


「何してるの?行くわよ」


先に歩いてい居た神楽坂さんが振り返り苛立った声で言う、何か俺がやらかしてたら謝らないといけないな。


「えっと…神楽坂さん?」


「はい?何でしょうか?」


相変わらず冷たい声で返してくる。


「いや、何か機嫌を悪くするような事をしちゃったかなぁ……って」


俺のその言葉にハッとした顔をして。


「すみません、上凪さんは悪く無いです、私の問題ですので」


「そうですか…何か相談に乗れそうなら、俺が相談に乗りますよ」


「大丈夫です」


「そうですか…」


無言のまま歩いて10分、俺と神楽坂さんは一つの小さなビルの前で止まった。


「今日の目的地はここよ」


「ここって?」


「Kプロダクション、私の父と母が運営と経営している総合芸能事務所よ」


「Kプロってあの?」


ミリオンセラーの歌手や、ハリウッドで活躍する俳優、国民的アニメから日常機器の音声案内までしている声優が所属している、芸能界に詳しくない一般人の俺でも知っている芸能事務所だ。


「どのKプロかわからないけど、貴方が想像する芸能人が所属している所よ」


「おぉー!凄いんだね神楽坂さんのご両親」


そう言うと少し神楽坂さんの纏う感情が少し柔らかくなった感じがした。



◇◆◇◆◇◆◇◆

神楽坂さんに連れられロビーへ入ると中は外装通りのこじんまりとしたオフィスだった、もっと大きなオフィスに沢山の人が働いて、芸能人の人が居るのかと思っていた。


階段を上がりながら壁に貼られたポスターや等身大パネル、社員さんの行き先が掛かれたスケジュール表などが点在している。


「上凪さん、どうしました?」


「あぁ、すみませんキョロキョロと」


「あぁ…もっと事務所は大きな所だと思ったんですか?」


「あーあはは…」


「大丈夫です、私も昔思いました。お父さんとお母さんは凄い人なのに何でこんなに小さい事務所なんだろうと…」


ペンキが所々剥がれ、踊り場の部分は人の手によって磨かれた手すりを撫でながら神楽坂さんは言葉を紡いでいく。


「お父さんもお母さんも、ここは裏方の人が働く所、あまり小さすぎても困るがこのくらいの小ささの方が互いの顔を見て仕事をしないといけない、それが例え嫌な人間だったとしてもだ。それに私達は表できらきらする人を管理しないといけないそれなのに他人の顔を見れない様じゃ意味が無いって。それと新しいビルにオフィス移すより経費削減になるかららしいです」


「社会人じゃないからわからないけど、理由があるんだね」


「そうね、私も未だ学生だから実感はしていなけど、その時子供ながらに父さん達はすごく仕事に真剣なのだというのが伝わって来たわ」


そう誇らしげに語る神楽坂さんからは両親の事が好きなのだと感じるくらいであった。


「一番分かったのは神楽坂さんがご両親の事大好きで、尊敬してるって事かな」


「んあぁ…」


あ、赤くなった…どこにそんな要素が…


「ん?どうしたの?良い事じゃん俺も父さんと母さんの仕事は尊敬しているよ?」


「いやまぁそうなんだけど…はぁ…もういいわ行きましょう」


◇◆◇◆◇◆◇◆

そんな話をしていたら社長室と書かれたプレートの貼ってある部屋の前に着いた。


「ここがお父さんの仕事部屋よ」


「はいっ…」


「緊張してるんだ……モンスターと対峙してる時は余裕そうなのに…」


「そりゃ人間は倒せないからね…」


「うちのお父さんはある意味モンスターだけど、倒さないでね」


「倒さないですよ」


先程の会話で少し柔らかくなった神楽坂さんと共に部屋の中に入る。


「お父さんお母さん、上凪さん連れてきましたよ」


背の高いモデルの様な見た目の男性とテレビでよく見る確か…


「えっ…まさか?神楽坂さんのお母さんってRIKAさんなの?」


「あら、鈴香言ってなかったの?」


「すみません、てっきり知ってるものだと…」


「そうねぇ…まぁ私とは違う方向性で美少女になってるから私とは似て無いしね、そこがキュートなのだけどね」


そういって笑うRIKAさん。


「オホン、私からもいいかね?二人共」


「すみませんパパ」


「すみませんお父さん」


「全く…パパと呼べと言ってるだろうに…」


「貴方、話がずれてるわよ」


「すまんすまん、それでは改めまして。神楽坂 たくみだ、この会社の社長兼関連子会社の相談役なんかもやらせてもらっているよ」


「私は神楽坂 里香りか芸名は名前をそのまま英語にした【RIKA】で仕事をしているわ、それと…娘と友達になってくれてありがとう」


「ちょ!お母さん恥ずかしい」


「それにね、ママと呼んでくれないもの」


「上凪さんの前で言わなくても良いじゃない!」


「いいじゃない♪」


「オホン。とりあえず立ったままなのも失礼になるから、座ろうじゃないか…」


巧さんがソファーを促してくれたので座る。


「それじゃあ上凪優希君、今回君を呼んだ理由は……」


それから巧さんはたっぷり溜めてこういった。




「アイドル、やらないか?」





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あとがき



作者です。


本日も読んでいただきありがとうございます!



24万8千超えました!!

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♡も5200を超えました!嬉しい!!

感想も嬉しい!

☆ありがとうございます!感謝!!

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そして調子乗って筆が進みます!!


下がってしまったけどまだ!ランキング入りしてます!

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