|章間|②∶お見合い【前半】

◇紡 巴side◇

「お嬢様、良くお似合いですよ」


「あっ、ありがとうございます」


着付けが終わった私は、姿見の前でおかしな部分が無いかチェックする。


今日の着物は祖母から貰った着物を直したものだ、祖母もお見合いの際に着ていたので『良縁に恵まれますように』とわざわざ手間をかけてくれたものだ。


今から私はお見合いに向かう、本当は優希さん、耀さん、春華ちゃん、冬華ちゃんが赴いている失踪した子供達の救出作戦に参加したかった、だけど今回のお見合いは数カ月前から決まっていた事だったし、何よりお父様のお仕事に役立つ事だった。


「お相手は知らない人ですが、こんな私で大丈夫でしょうか…」


そう聞くと長年勤めていて私を子供の頃より知っているばあやがニッコリと笑い答えた。


「昔のお嬢様でしたら不安でしたが、今のお嬢様ならば大丈夫です!このお嬢様のおむつを替える頃より見てきました、このばあやが自信をもって太鼓判を押します」


「ありがとう、ばあや」


「それとお嬢様、こちらをお持ち下さい」


手渡されたのは何故かICレコーダーだった


「何故これを?」


「何かあった時用ですよ、備えておいて損はありません」


不思議に思ったが私は受け取り懐へ収めた。


◇◆◇◆

時間になり、会場にて顔見せとなる。誰が来る等は伝えられていなかったが見た目は気の良さそうな青年だった。


「私は、つむぎ ともえと申します、今日は来ていただきありがとうございます」


「僕は久墨ひさずみ 木阿きあ君の一つ上に当たるね」


(名前を聞いた途端あの人の顔が浮かび、腹の底がカッと熱くなる)


「良いお名前ですね」


あの話を聞いてしまい腹に来ているがあくまで冷静に答える。


「あの、久墨様…」


「木阿で良いですよ巴さん」


「かしこまりました木阿さん、それで…」


「堅苦しい話は置いといて、お互いの事を知ろうよ」


「そうですね」


(まあ私の質問は後で良いでしょう…)


◇◆◇◆

それから2時間経ったが彼の話はまだ続いていた、内容はすべて自慢話だが。


(興味が無いは失礼なのでしょうが…ここまで苦痛だとは思わなかったですね)


正直この人に惹かれる部分が全く無い、その割に私の胸ばかり見て話すのがとても不快に感じてしまう。これなら優希さんのお話のが数倍楽しい、あの人も胸を時たま見て来るけどそこまで嫌に感じませんし。


(ん?何でそこで優希さんが出てくるのでしょう?)


ふと出てきただけだと思うけど何かが引っかかる。


(お菓子作りの話をしても、学校の話をしても3言目には自慢話、お相手がつまらなさそうならば考え物ですが好きにお話しているなら止める必要もありませんしね)


今頃子供達の救出の為に動いている友人達が気が気でない…


「ん?巴ちゃんどうしたんだい?」


「いっ、いえ…今日友人達がダンジョンに挑むと言っていまして、少し心配なんです」


「そうだったんだね、もしよかったら連絡をしてくると良いよ」


「ありがとうございます、失礼します」


廊下に出て控え室に戻りスマートフォンの待ち受けをみると、ニュース速報が入っていた、Y県F市のダンジョン、つまり皆が行ったダンジョンである。


「えっ?」


その速報から生中継を見ると惨状が広がっていた、壊されたプレハブに車両、倒れる人々、映し出される異形のモンスターこの世のものでは無い惨状が広がっいていた。


そしてその惨状の中、輝いている友達たち、ほっとすると同時にあの人の姿が見えなかった。


必死に他のチャンネルや生中継を探すと彼が居た、最も望まない無い形で。


「っ優希さん!?」


画面の向こうの彼は地に伏していた、彼を守る春華ちゃんの動きにカメラが肉薄する。


背後に倒れている優希さんはピクリとも動かない。


(なぜ私はあそこにないのだろう…居ても意味が無く役立たずなのは知ってるがあの人の力になれないのは悔しくてたまらない…)


胸に様々な感情が巡る頭がぐちゃぐちゃになる、言い表せないこの気持ちが何なのかわからないけどこのままこの人を喪うのは嫌だと強く想う。


そこにばあやがやってくる。


「おや、巴お嬢様どうなさったんですか?」


「ばあや…」


泣きそうな顔で振り返るとばあやは手元をのぞき込んでくる。


「おやおや…それでその男性は?」


「私の友達です…今事件に巻き込まれた子供達を助けに行ってるんです…」


「まぁそれはとても偉い方ですね、それでお嬢様はそのお方をどう思ってらっしゃるんですか?」


「どうって…友人としては好ましいと思っております」


「本当に只のご友人でしょうか?」


「えっとそれは、どうゆう?」


「その御方は上凪優希様ですよね?」


「えぇ!?何故わかったのですか?」


「いえいえ、ここ最近お出かけしてはお嬢様が楽しそうに話すお方でしたので」


そう言いながらばあやは朗らかに笑う、その指摘に私は赤くなる。


「そうですねぇ…日々のお話の3割位でしょうか?結構な頻度でお話に上がりますよ」


「そうだったんですね…知らなかったです…」


「てっきり私は、お嬢様がその御方の事を愛しく思っていらっしゃるのかと」


「好まし!?、いえ、お嫌いとかでは無いですし、初めての男性の友人という事はありますが、そこまで考えたことはありませんし、それにそれに、私の親友の旦那様ですから…」


「おや?その御方は大変な好色家なのでしょうか?」


「こっ…いえ、そういった方ではありません寧ろ逆ですし、婚約者の方々を大事にする方です、それに最初私が困っていた、助けを求めていた時に手を差し伸べてくれた方です」


「そうですか…ではお嬢様、この度の縁談の方か上凪様どちらとご結婚されたいですか?」


「えぇ!?そ、そんな急に何を?」


「急ではありませんよ、このお話が進めばお嬢様はあの方とご結婚なされます、ただ今ならばお断りすることも可能です」


「でも…」


「今回のお話、正直このばあや、あまりいい縁談とは思えません、それと私の愚考ですがお嬢様が上凪様とご結婚なされる方が紡家にとって利があると思います」


「えっ?どうして…」


「上凪様のご婚約者様は今出ている小鳥遊家のお嬢様と、こちらに映っている恐らくお嬢様のお話によく出てくる、水城様ですよね」


「はい、この三人です」


「だとしたら皆様、これから話題になります、恐らく日本の中心になるかもしれません。その際にお嬢様が居ることで財界や政界の方の参入を牽制しやすくなります、対立している方々に婚約者を送り込まれる方が御爺様も御父様も不利になります。それに正直今回の方はとても魅力に感じません」


そう言ってばあやは耳につけていたインカムを私に渡す、それを装着すると先程私達が居た部屋の音声が届けられた。




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あとがき



作者です。

9万5千PV超えました!

♡も2000超えまっしたぜ!!!!ありがとうございます!

☆もいただきました!嬉しい!!!

フォローもありがとうございます!!


今日明日更新で軽いざまあ回です。


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