第13.5話 閑話 ウィステリアのきもち。

さいしょは、しっぱいした。とおもったわ。


おかあさんや弟と妹たちに、かっこいいところを見せたくて、

こっそり出かけたのがまちがいだった。


もうひとりで狩りが出来るって、しってほしかった。

風のまほうもじょうずに使えるし、足だって一番はやい。

森のまものだってやっつけれる。

そうおもっていた。


でも、ぜんぜん、だめだった。

おおかみのまものにすら、勝てなかった。

おかあさんなら、簡単にやっつけちゃうのに。


もうどれくらい走っただろうか。からだがいたいし、目もかすむ。


わたし、しんじゃうのかなあ。いやだなあ。


おかあさん、おこってるだろうなあ。しんぱいもしてくれてるんだろうなあ。

弟や妹も、しんぱいだなあ。わたしがいないと、いたずらばかりするからなあ。


あいたいなあ。しにたくないなあ。


もう、はしれないや。だってねむたくなってきたもの。

わたしはじめんにねてしまったわ。


すこしして、からだがあたたかくなったの。

やさしいあたたかさ。きもちいい。

でも、わたしがいいきもちでねむっているのに、何だかすごくうるさかった。


がんばれ、がんばれって、すごくうるさい。

わたしは今きもちいいの。

まったく、じゃましないでほしいわ!


そのこえは、目がさめるまできこえてた。

うるさかったけど、わるい気はしなかったわ。


めをあけると、しろい髪をしたにんげんがいた。

わたし、にんげんってはじめてみたの!びっくりしたわ!


だって、ぼろぼろ泣いてるんだもん。

泣いたとおもったら、急にうれしそうになって、ねちゃった。


へんなやつ。



でもなんとなくわかってたわ。この子がたすけてくれたこと。

きずもすこしなおってるみたい。


まったく、この子がおきるまで、みはってなきゃいけないじゃない!

手がかかる子ね。


でも、でもね。


ありがとう。ありがとね。


わたし、ほんとうはすごくこわかった。でも、いまはすごくあんしんしてる。


この子がそばにいるからかも。へんなやつ!



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この子はアルっていうらしい。


へんななまえ。アルはさかなもとれないみたい。

わたしがまほうをつかってみせたら、びっくりしてたわ。

そうよ。わたしはすごいのよ!

たくさんほめてくれたから、うれしかったわ。


でもアルったら、わたしがきずついてるのに、森にかえそうとしたの。

ひどいわ!だからたくさんおこってやったの。

れでぃをぞんざい?にあつかってるわ。


そしたらついてくる?だって。まあいいわ。

アルがしんぱいだから、少しいっしょにいてあげる。



そのひはわたしのたからものになったわ。

うぃすてりあ。うぃすてりあよ。わたしのなまえ。

すごいわ!かっこいいなまえ!うれしかったなあ。せんすはあるじゃない。


だからおれいに、たくさんあそんであげた。

いっぱいかわいいっていってくれるから、ついちょうしにのっちゃったわ。


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