第32話 繋ガル事実

 彼とあの人がいなくなったと聞いたその日の昼休み。


私と美華は屋上にいた。

二人ともご飯も食べる気になれず。その場で寝そべりずっと空を見上げる。


まだこうして彼女がいてくれてるからよかったものの、彼女ですらいなかったら、私はこの屋上で、全てをお終いにしようとしていたのかもしれない。

彼女が何も言葉を発さなくても、隣にいてくれているだけで、私はなんとか自分を感じられているのだ。


 私が美華に声をかける。


 「圭、辞めちゃったね」

彼女はやっと声を発した私に対し、ゆっくりと手を繋ぎこう答える。


 「そうだね」

その手は暖かかった。彼に握られたあの温もりと同じ温度。

私は思い出し、そのまま彼女に寄り添った。


 「圭。何も言わずにいなくなっちゃったよ」


 「うん」


 「どうして私に何も言ってくれなかったの?」


 「うん」


 「私たちに話してくれれば、また別の方法があったかもしれないじゃん」


 「そうだね...」


 「どうしてあんな自分勝手なの?」


 「うん」


 「結局あの人の事が好きだったの?私の事は遊び?」


 「わからない...」


 「圭。最低だよ」


 「うん」


姿を消した彼に対しての思いをぶつけている時、彼女は何も否定をせず。頭を撫でながら私の話を聞いてくれた。


昼からの授業もサボり、教室には戻らずずっと屋上にいた私達。

私の胸にため込んだ、どこにも吐き出すことの出来ないこの思いを彼女は陽が暮れるまでずっと聞いてくれていた。



 そして陽が沈み、私たちは学校を出る事にした。

屋上から降り教室に戻る。

すると、遅くまで部活をしていた生徒たちが、教室にカバンを取りに来ていた。


その人は美華をイジメていた生徒。


私たちは何も話しかけず、カバンを取り、教室をでようとする。



すると

 「唯愛!美華!ごめん!」

女子生徒が口を開いた。


 私たちは彼女から背を向け、その場で立ち止まる。


 女子生徒A「本当にごめん。あんな事をして...。先生たちに巻き込まれていた二人の事をどれだけ傷つけた事か...」


 美華「巻き込まれていたって?どうゆうこと?」


 女子生徒A「私たちは、ゆみ先生に、唯愛と圭先生が付き合ってるって聞いたの。公園でいる様子を見て、一人の生徒だけによしよしして、それで私達許せなかったんだけどさ...。」


 女子生徒A「圭先生が家族の事で唯愛と話していたって言ってたけど、どこか信じれなくて...。でもゆみ先生が圭先生と不倫してるってわかってから、これは嫉妬して唯愛の事を付き合ってるんだって、事実でもないことを言いふらしたんだと思って。唯愛、家族の事で大変なのに...。先生が真剣になって話を聞いてくれてただけなのに...。」


 美華「でもそれも本当かどうかなんてわからないでしょ?」


 女子生徒A「そうなんだけど。ゆみ先生があのキスをしていた日よりも前の時に言ってた。"公園での事なんてもうどうでもいいの。もう私は彼といい関係になってるから”って。その時の先生の浮ついた目を見て思ったの。二人の不倫に二人が巻き込まれただけなんだって...」





私は全てが繋がった。



彼が嘘と事実をうまく混ぜる事により、私達からゆみ先生を遠ざけ、それに他の生徒たちからの誤解を解こうとしていたのだ。

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