第6章279話:別れ

私は礼を述べた。


「貴重な情報、ありがとうございます。今後の旅の参考にしたいと思います」


「ああ」


とミフォルトさんはあいづちを打ってから。


「だが、この程度の情報では、【生命の秘薬】を作ってもらった礼にはならないだろう」


「いえ、十分ですよ」


「そういうわけにはいかない。自分としては、恩返しをした気分じゃない」


とミフォルトが食い下がってくる。


うーん。


私としては、アーティファクト素材以外に、欲しいものは無い。


強いていうなら錬金素材はあって困ることはないが……


私の反応を見たミフォルトさんは、


「じゃあこうしよう」


と前置きしてから提案してきた。


「何か困ったことがあったときは、僕の召喚王としての力を貸してやる」


「ミフォルトさんの能力を?」


「ああ。僕はさまざまな召喚獣を所有しているからな。できることは多いぞ」


たしかに、ミフォルトさんの召喚獣は便利な能力を持つものが多い。


魅力的な提案に思えた。


「いいですね。では、そういうことでお願いできますか?」


「わかった。じゃあ、いつか僕の力が必要になったときは、僕の棲みかを訪ねてくれ。場所は、ニズヴィーン芸術国の―――――」


とミフォルトさんが詳しい場所を教えてくれる。


「そこに来てくれれば、力を貸そう」


「わかりました。そのときがきたら、頼りにさせていただきます」


私は答える。


話が終わった。


ミフォルトさんが席を立つ。


「では、僕は妹のもとへ帰ることにするよ」


「あ……もう出発するんですか? でも、後日ヒニカさんから褒賞が出ますよ?」


ビルギンス逮捕の件において、ミフォルトさんと私たちは大きな活躍をした。


ゆえにヒニカさんから褒賞をいただける約束となっている。


しかし、ミフォルトさんは言った。


「褒賞は、もういい。それより一刻も早く、妹を治してあげたいんだ」


「……そうですか」


妹想いの良いお兄さんだな。






私たちは、ミフォルトさんを見送りに出ることにした。


宿をあとにして、領都の外の砂漠地帯にやってくる。


ミフォルトさんが召喚陣を展開する。


巨大な鳥型の魔物が召喚された。


ミフォルトさんが、その鳥の背中に乗る。


「じゃあな。いろいろ世話になった」


「こちらこそ」


と私は答える。


直後、ミフォルトさんが合図をすると、鳥魔ちょうまが翼をはためかせた。


砂漠の砂を吹き荒らしながら、空へと舞い上がる。


ミフォルトさんを乗せた鳥魔は、そのまま彼方へと飛び去っていった。


(空を飛ぶ魔物か……)


便利すぎる。


私の熱気球よりも明らかに便利だ。


召喚士やテイマーといえど、飛行タイプの魔物をゲットするのは、極めて難しい。


六傑であるミフォルトさんだからできることだろう。


(いつか、空を飛ぶ用事ができたときは、ミフォルトさんを訪ねることになるかもしれないね)


そんなことを思いながら、私たちは宿へと戻った。

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