第6章247話:半泣き

「侯爵に、殺人の罪をなすりつけるんすか?」


と、バネオンさんが聞いてきた。


「罪?」


私は目を細める。


そしてアサルトライフルを、バネオンさんに向けた。


「私がモドルドたちを殺したことの、どこが罪だと? モドルドや兵士たちを抹殺したのは、どう考えても、こちらの正当防衛じゃないですか?」


「う、は、はい! そうっすね!」


「わかればよろしい。以後、おかしなことは口走らないように」


「はいっす!」


バネオンさんがビビりながら返事をする。


私はアサルトライフルの銃口を、彼から離した。


バネオンさんがオドオドしながら聞いてきた。


「で、でも、その内容だと、役人にウソの話をすることになるっすよね?」


「そうですね」


ビルギンス侯爵の手下がモドルドを殺した……というのは、私の創作だ。


虚偽のストーリーを役人に伝え、ビルギンスを告発することになる。


もしウソがバレたら、偽告罪になる可能性がある。


「というわけで、役人に告発をするのは……ルーシーさん、あなたがおこなってください」


「え!!?」


ルーシーさんはビクっとして、慌てて言った。


「わ、私、役人にウソなんてつきたくないです!」


ルーシーさんの言葉に、私は答える。


「そうですねー。私も役人にウソをつくのは嫌です。だから、ウソをつくのは、あなたが頑張ってください――――私の代わりに」


「そ、そんなっ」


「んん? 何か文句でも?」


私はルーシーさんにアサルトライフルの銃口を向けた。


ルーシーさんは青ざめる。


ガタガタと震えるルーシーさん。


「も、文句はありません! 全力で、役人にウソを伝えて参ります!」


「よろしい」


と、私はアサルトライフルを彼女から離した。


ルーシーさんは半泣きになっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る