第38話 神仙界の白仙人序奏
エピオード王国の南の果てに桃源山という高い高い山がある。
そこには天国の様な理想郷が有ってそこで採れる果物には
不思議な力が秘められていると云う。
不死の桃、長寿の梨、治癒の葡萄。等々。そして、それらの
果実の液を、奇跡の泉の神聖な水で希釈すると美味しくて
飲みやすく即効性のポーションが出来ると言われている。
だが不死の桃は100年に一度1個しか実らないと言われていて
その価値は計り知れない。長寿の梨も100年に一度、たった
の2個しか実を付けないのだと言われている。
それらの果実液を最適な割合で調合してそこに絵里紅草の汁を
数滴垂らすと、いかなる
しまう【エリクサー】と云う伝説の薬が出来るのだそうだ。
これは僕の曾曾婆ちゃんから幼いころ聞かされたお話である。
その桃源山に【エリクサー】を作れるたった1人の仙人様が
住んでいて、100年に1度里に降りてきて【エリクサー】を
売って代わりに調味料や生活必需品を購入して、魔法の鞄に
いれて山に帰って行くのだとか。
僕は同い年の女性と結婚して幸せに暮らしていた。仕事の
商売も順調に進んでいる。おかげで財産なら有り余るほど
もっている。
ところが、妻のメアリーが、原因不明の病に倒れてしまった。
僕は国中の薬師、治癒魔法使い、神殿の聖女様に
が治らなかった。
「ああ、神様お願いです。どうかメアリーをお助けください」
神様に縋った。
「旦那様、薬師組合のシオン様が旦那様にお会いしたいと
参られたのですが如何いたしましょうか?」
番頭さんが告げて来た。
「なんでも【エリクサー】が手に入りそうだとおっしゃって
おりますが」
「なに!【エリクサー】だって!今すぐお通しして」
「こちら、桃源山から降臨なされた白の仙人様です」
シオンさんのお隣に髪の毛も長い髭も、纏っている
ローブも真っ白な老人がいた。
「これが【エリクサー】です。ですがこれは長寿の効果の強い
成分が入っているので奥様だけが長寿になって旦那様が
お亡くなりになった後もお一人で生きていかなければなりません」
「僕も妻と一緒に寿命を迎えるにはどうすれば良いのでしょう」
「あなたも1滴お飲みなさい。そうすれば100年寿命が
延びるでしょう。そのころ儂がもう一度ここに来るので
その時に長寿のポーションを持ってきます。その時不要なら
買わなければ宜しい。必要ならお買い求めください」
「解りました。【エリクサー】を売ってください」
「はい、どうぞ。10億ゼンです」
10億ゼンは今僕が持っている財産の半分だ。
長寿ポーションはいくらですか?」
5000万ゼンですが100年後の貨幣価値でもっと高く
なるかもしれないですよ。宜しいですかな」
仙人はスポイトで瓶から1滴取り、僕に飲ませて残りを
全てメアリーに飲ませた。1滴飲んだだけで気分爽快
持病の腰痛も治った。当然ながらメアリーも全快した。
あれから100年、僕とメアリーを残して皆天国に召されて
しまった。僕は思う。
あの時あの1滴を飲まなかったらメアリーは今頃独りぼっちで
これからも知り合った人たちとの辛い別れを味わって行くことに
なるのだろう。
僕は白の仙人の訪れを心待ちにしている。貨幣価値も大分
さがってしまい、今では100億ゼン位出さなければいけない
だろう。だけど心配ない。僕も頑張って商売に励み、その位なら
支払えるようになっている。
仙人様が来られた。
「5000万ゼンでいいですよ。儂も品種改良を重ねて安く
作れるようになったからね」
「金儲けに走った僕は骨折り損だったんですね」
「いいえ、余ったお金を社会福祉に使う事をお勧めしますよ
病気になる人を減らす事業に投資するとかね」
僕は仙人様の言う通りに社会福祉事業に投資したり
妻と一緒に貧民街で炊き出しを行ったり
寄付をしたりして、人々から尊敬されてしまっている。
僕は決心した。白の仙人様の伝説を後世に残そうと。
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この白の仙人は【異世界屋台日ノ本屋】の第61話以降に出て来ますので興味のある方は、そちらもお読み下さい。よろしくお願いいたします。
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