18冊目 ★「ゲイ短編小説集」

 それはたぶん古典で、めちゃくちゃ真面目な本なんです。


 なのに、本の巻末で、いきなり師弟がカップリング論争をはじめてるんです。


 師匠(日本人男)「この作品に登場するAは攻めで、Bは受けであろう。それは~~の証拠からも明らかだ。それを前提にして読み解けば~~」と、解説を書くんです。


 ところが弟子(日本人女)は、次のページでまったく正反対の解説を書いてます。

「Aは受けで、Bは攻めでしょう。なぜならば~~」と、こちらも舌鋒鋭く論を展開するんです。


 受けとか攻めとかいう単語は使っていませんが、間違いなくそういうことを話しています。


 そして、師弟の論旨はまったく真逆!

 きっとフロイトとユング以上の、激しい議論が展開されたのでしょう。


 E・M・フォースターの著作に関するものだったかな……。

 それとも平凡社ライブラリーの、妙に怪しいタイトル群のなかにあったっけ?


 ===


 判明しました。

「ゲイ短編小説集」は大橋洋一が監訳してます。


 大橋洋一はワイルド「幸福な王子」の王子とツバメは「師匠と弟子だ」としました。

 がしかし翻訳者は「同輩だ」としました。

 それで、大橋は「ならば私が翻訳する!」と、自分で翻訳したのでした……。


 いやいや、そんなことでケンカするなよ。

 わかるけど。


 大橋「王子とツバメは年齢差カップルに決まっておるだろうが! 同輩説を主張する翻訳者の訳など掲載できるか!」といってるわけですよね。


 ちなみにワイルドの作品はもう一作「W・H氏の肖像」が掲載されてて、その翻訳者が清水晶子なので、同輩説を主張したのは彼女だと思われます。


 論争まではしてなかったですけど、意見の対立があったのは確実です。

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