第33話 入学式で色々やっちまった!

 程なくして体育館に集合し、暫定名簿に沿って座っていくが、ラビリンス専攻科は78人になり、残りが普通科だ。


 学校のカーストはラビリンス専攻科の方が上らしい。

 これはどこの学校も同じようだ。


 クラス替えの後は組み順が小さい方が上になるらしい。

 1組は特別視され、優遇も受けられると聞いた事がある。


 僕のようなモブが輝こうとするとなんとしても1組に残らなければならない。

 レイラ頼みだな。

 男女ごちゃ混ぜで並び、50音順で座ったのもあるが僕は苗字から出席番号は1だ。

 隣の列は折返しになっていて先頭に渚さんが来ていた。

 改めて見ると正統派美少女で、中学でマドンナと呼ばれていただけはある顔面偏差値に抜群のすたいる?いや、胸が少し小さいか?


「斗枡君、さっき振りね。さっきは凄かったわ。意外と胆力もあるのね」


 どうやら勘違いしてくれたようだからこのまま勘違いしていて貰おう!

 

 そうそう、体育館に入る時に探索者適正検査で使う測定器にて簡易検査をしていた。

 1人につき10秒ほどで3台あったからそれ程時間は掛からなかったな。


「渚さんはクラスで大人気だね。早速女子が集まっていたもんね」


「君にはそう見えるのね。君のような人からしたら大した話じゃないのでしょうけど、女って色々有るのよ。知りたかったら教えてあげるけど、女の子の嫌な面を見る事になるわよ」


「色々大変なんだね。知ってしまうとあの子が・・・ってなりそうだから聞かない!」


「ふふふ。女の子の会話に突っ込まない方が良いから賢明な選択ね」


 僕が次の話をしようとしたら先生達に動きがあった。


「テステス。あー、時間になったので、あー、これより本年度の本校入学式を開始する!あー、先ずは国旗掲揚と国歌斉唱!」


 ここは公立学校だからこれらは必ずある。


 その後来賓の紹介と校長の話が終わり、もう少しだ!となった時に事件は起きた!


「それでは入学生総代の挨拶。総代はラビリンス専攻科あさぬまとーます君」


「違いますよ!」


 誰かが耳打ちした。


「失礼。あさぬまとます君。あさぬま君前へ」


 僕は真っ白になった。

 あちゃ~!

 苗字的にそうなる可能性はあった。

 1組の出席番号1番というのはそういう事だろう。

 ツンツン・・・渚さんと目があった。

 可愛い・・・


「斗枡君、ほら決めてきなさい!」


 はっとなり右手と右脚が一緒に動く。

 渚さんがクスクスと笑っている。

 そして壇上に上がる直前に躓いた。

 オットットっと・・・  


 やっちまった!

 これはワザとコケテワライヲトルあれだな!

 しかし、僕にはそんなボキャブラリーはない。

 スローモーションの如く倒れており、床が近付く。


 体が自然と動き、空中で1回転し床に手を付き取り敢えず少しジャンプする。


 バトルスーツにはそれが出来る。


 もう1回転したが、体育館にあるステージの床が迫ってきた。

 今度こそ終わった!?

 無様に、しかも勢い良く転げる未来しか無い。


 咄嗟に手を付いたが渾身の力で床を押した。

 すると僕は天井スレスレまでジャンプしたが、この後落下して怪我をしそうだ。

 終わった・・・今度こそ終わった・・・

 皆の驚いた顔がはっきりと見える。


 飛んだ時に制服の上着(男女同じデザインのブレザー)が脱げてしまい宙を舞う。


 僕はムーンサルト宜しく激しく回転している。

 しかし流石に着地出来まい・・・


 ドサッ!

 もうどうにでもなれ!とバンザイしていたが、なんとステージの壇上にある演台の上にバンザイをして立つ形で、何とか無様に転げるのは防がれた。


 教師がコホンと咳払いしたのでくるっと回りながら壇上に立った。


 うわあああああ!

 キャアアアアアア!

 何あれ!

 かっこいい!

 素敵!

 人間業じゃねえ!

 彼氏になってええぇ!

 かっこつけてんじゃねえ!

 中2病め!


 色々聞こえ、怨嗟の声もあるものの拍手喝采が起こった。

 更に咳払いをされたので演台の上に立つ。

 すると宙を舞っていたブレザーが僕の肩に乗る形で落ちてきた。


 嘘だろう!

 神技だ!


 そんな声も聞こえた。


「静粛に。淺沼新入生代表は身体能力をひけらかせずに挨拶を」


「コホン。失礼しました。ラビリンス専攻科淺沼斗枡です。名前からニックネームはトーマスです。機関車トーマスかららしいです」


 爆笑が起こる。


「僕の目標は誰1人欠ける事もなく卒業する事です。僕の出来る事には限りがありますが、異常事態に同じ校舎で学ぶ者として協力しあい、生き抜く力を得ましょう。先生方、未熟な僕達を3年間どうか導いて下さい。以上!」


 ペコリとしてから降りようと慌てていたから、又もや躓き何とか踏みとどまるも結局ジャンプしてしまい、何回転かすると奇跡的に自分が座っていた席に座っていた。


 しかし上着は・・・渚さんの肩に掛かった。


「呆れるわね。ほらちゃんと着なさい。これって民生品じゃないわよね?」


「自衛隊員のだよ。あっ!服ごめんね」


「それにしても少しは自重しなさいよ。あーあ・・・これで一気に競争が激化するわね」


「何の競争?」


「君、本気で言っている?」


 体育館は大騒ぎになり、先生が静かにと言って火消しをしている。

 先生ゴメンなさい。


「続きまして生徒会より代表して生徒会長より・・・」


 その後無事に入学式が終わったが、僕は教室で質問攻めにあい、あっさりと二世だとバレた。

 そりゃあそうだろう。

 自衛隊員のバトルスーツを着ているって事は親の形見以外ないからだ。


 チヤホヤされる中、ドサクサに紛れ女子に抱き着かれた。


 あれだ、ジャンケンとかで負けた子が男子に抱き着く罰ゲームをしたんだろう。


 それでも男の子としたら嬉しい・・・です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る