アイドルへの第一歩
次の日の朝6時に私達はダンジョン前に集まった。
「みんなおはよう。朝早くに集まってくれてありがとね」
「おっはよー!」
「おはよ」
「おはよう、みんな♪」
「じゃあ、入ダン許可書も貰ったし、早速入ろうか」
「おお、ここがダンジョン……!」
「朝のグラウンドみたい」
「もっと人がいると思ったけど、全くいないんだね~。でもそっか、確かにこんな朝早くにダンジョンに来る人なんていないよね~」
「そうだね、ダンジョンの階層にはいろんな種類があるけど、第一層は平らなグラウンドっぽい風景なの。見晴らしがいいから、魔物を見つけやすいし。ほらあそこ」
1層から10層は言わばチュートリアル、罠や迷路も無ければ、強い敵もいない。一層に至っては、もはやダンジョンと言うよりも練習場に近い見た目をしているの。
練習場……じゃなくて1層に現れるのは、最弱の魔物として有名なポヨポヨしたアイツだ。
「可愛い! あれってスライムだよね?」
「魔物界のマスコット的存在に相応しいフォルムだね」
「ポヨポヨしてるね~」
「さて、スライムを見て心を和ませたところで、改めてトップアイドルへ至るまでの道筋をざっくりと説明するね」
1.ダンジョン内で「このメンバーとアイドルになりたい」と願う。すると、【魔法少女】という
2.魔法少女は言わば下積み時代。魔法の精度を上げたり、使える魔法の種類を増やしたりしながら、経験を積む。(ゲームならレベルがあったけど、この世界には無いらしい)
3.【魔法少女】で三属性魔法全てを習熟したら、上級職業の一つ【アイドル】に「昇進」する事が出来る。
上級職業になると、
4.【アイドル】になると動画の撮影が出来るようになる。そこで、ダンジョン内での活躍を動画配信サービス等にアップしてファンを増やす。
5.【アイドル】として経験を積むと、とある特殊職業に就く事が出来る。ここまで来れば生配信を出来るようになり、本格的なアイドル活動を行えるようになる。
「つまり、まずは魔法少女になるって事だね!」
「魔法少女。ちょっと怖い印象があるよね」
「怖い? 私はキラキラしたイメージかな? 小さいころ、憧れたな~♪」
たぶんリンちゃんの想像している魔法少女は、世のアニメ好きに「魔法少女=ダーク」っていう印象を強く植え付けたあの作品だよね。で、ユズちゃんが想像しているのは、日曜日の朝に放送される子供向けの番組かな?
「あ、この世界の【魔法少女】はヤバい存在じゃないから、リンちゃんは安心して良いよ」
「『僕と契約して……』って言われない?」
「言われないよ。というか、それ以上は危険だからやめてちょうだい」
「分かった。あ、ちなみに片手でダンプカーを止めたりは?」
「できないよ! いやほんと、危険だからやめて!」
「ごめん」
「こほん。【魔法少女】になる条件として、異性との恋愛に興味が無いことが必要だけど……。みんな大丈夫そう? ちなみに、同性との恋愛はOKよ」
「もちろん!」
「あんなガキと恋愛なんて考えられない」
「うん、それなら大丈夫!」
「じゃあ、改めて。みんなで祈るよ!」
私はみんなの方を向く。ハルちゃんは期待に瞳を輝かせているように見える。リンちゃんは興味無さそうな顔をしてるけど、仕草がソワソワしてる。ハルちゃんは満面の笑顔を私に向けた。
「せーの!」
((((私達でアイドルになりたい))))
〔
〔
〔
「「「え?」」」
何が起こるか説明してなかったからね、私以外の三人は驚きの声を上げた。これはジョブやスキルを手に入れた時に聞こえる音声だ。ゲームではメッセージボックスが表示されるだけだけど、この世界では実際に音声として知覚できるみたいね。
ちなみに、この世界ではこの声を「祝福の声」なんてお洒落な呼び方をするらしい。
私達はほぼ同時に目を開けて、互いを見つめる。
「ヒ、ヒメちゃんがお姫さまになってる?!」
「三人が服装が変わってる。可愛いね、この服」
「ヒメちゃん、綺麗~! リンちゃんはクールでカッコいい~!」
そこには、魔法少女の衣装を身にまとった私たちの姿があった。よかった、無事第一関門を突破したみたいね。私はまだ戸惑っている三人を落ち着かせ、一人一人の役割について話す事にした。
◆
「まずはハルちゃん。髪の毛が赤色になって、炎をイメージしたリボンがついてるわ」
「え、ハルの髪の毛、赤色になってるの?!」
ハルちゃんは自分の髪の毛を引っ張って顔の前に持ってきて、「真っ赤っかだあ!」と驚いた。コスプレでしか見ないような真っ赤な髪色だけど、不思議とハルちゃんに似合っている。
「学校で変な目で見られないかな……」
「変身を解いたら元に戻るから安心して。それで、フリフリのコスチュームには赤がアクセントカラーとして使用されてて、胸には火を
「可愛いね、この服! 写真撮りたい!」
スマホで自撮りしようとするハルちゃん。それを見た私は待ったをかける。
「ダンジョン内は写真撮影できないわよ?」
「そうなの? ほんとだ、真っ黒になる……」
ダンジョン内では写真が撮れない。特殊なスキルや装備を使えば撮れるけどね。
「写真撮影は自分の家でしてね」
「うん!」
「話を戻して。ハルちゃんの容姿から推察するに、ハルちゃんの初期属性は火ね。元気なハルちゃんにぴったりだと思う!」
魔法少女は最初一つの属性しか使えず、レベルアップと共に使える属性が増えていく。そして、「初期属性」っていうのは最初から使える属性の事ね。
「お兄ちゃんがやってるゲームで見たよ! たしか火の玉を飛ばすんだよね?!」
「そうだね。使い方はあとで教えるわね」
「次にリンちゃん。髪の毛が青色になって、氷をイメージしたリボンがついてるわ。フリフリが少ない青を基調にしたドレスを身に纏ってて、胸元で光っているのは水のブローチ。リンちゃんの初期属性は水だね」
「水。飲めるのかな? 飲めるなら便利」
リンちゃん、鋭いね。
「飲めるはずだよ。戦う時はもちろん、飲み水の確保とかシャワー代わりにも使えるとっても便利な魔法なの!」
「使うのが楽しみ」
「ユズちゃんは髪の毛が黄色で、宝石をイメージしたリボンがついてるわ。とってもかわいいフリフリのコスチュームはアクセントカラーに黄色が使われてて、胸元には大地のブローチ。ユズちゃんの初期属性は土ね」
「土かあ。なんだか地味なイメージ……。あ、不満って訳じゃないよ? この服も可愛いし♪」
くるんとその場で回るユズちゃん。スカートがふぁさーとなって可愛さが引き立った。流石、学年の可愛いさランキング1位の女の子。仕草一つをとっても可愛い!
「土って聞くと、確かに地味なイメージになるよね。でも、土属性が進化したら、鉱石属性になるの。鉱石、それ即ち宝石なんかを含むわ」
「宝石……!」
「笑顔が素敵で、とっても可愛いユズちゃんにぴったりの属性だと思うわ!」
「う、うん。ありがとう!」
ユズちゃん、照れてる。可愛い……! ユズちゃん、元々可愛いのにその上はにかみ顔をするなんて、破壊力が抜群だ。これだけで全ての魔物を浄化できるのではなかろうか。(そんな事は無い)
「そして最後に私だけど……どんな感じ?」
「お姫様みたいなのを被ってる!」
「三人の中で、一番フリフリが少ないね」
「ドレスに赤色の宝石が付いてて、キラキラ光ってるね。まるで物語のお姫様みたい~」
「なるほど。ねえ、ハルちゃん。私が被ってるティアラって赤色?」
「ティアラっていうのは、その冠みたいなやつ? うん、赤色だよ」
「なるほど。じゃあ、私はリーダーで、初期属性は火属性ね」
「リーダー?」
「よく分からないけど、ヒメはいつだって私たちのリーダーだよ」
「とっても素敵だよ~」
「みんな、ありがとう!」
やっぱり。私の頭に乗ってるこれは、リーダーの証「リーダーのティアラ」よね。そうなるかなとは思ってたけど、いざなってみると緊張するわね。
リーダには他のメンバーと違う点があるのだけど、まあそれは時が来たら話すとして、今は無事この四人でグループを組めることを祝おう。
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