第6話 調査結果
*
次の日の3月22日、午前8時00分。
オレは朝食などの所要を済ませ時間を確認すると8時丁度だと分かったので、そろそろKに依頼した調査の件で連絡を取ろうとするが、それよりも先にチューニレイダーが青く点灯する。
この装置が点灯しうるライトの色は三種類。赤、青、黄の三つだ。
青色の点灯は「K側からの連絡」を意味している。
オレはチューニレイダーの機器をうなじ辺りに装着し一定の操作をする。
そして「キーン」と痛みのような音が鳴る流れ。
こればかりは慣れないな。
『――おはようございます。こちら……あっ……Kだけど……今、時間大丈夫?』
この声ばかりは何度聞いても澄んでいて、とても透明感のある声だと感じる。
「おはよう。最初の時点で若干敬語が混ざっていたが、まぁいいか」
『うるさいです……じゃなくて、うるさい?』
何故に疑問形?
『でもそんな軽口が叩けるなら時間はあるんでしょ?』
「ああ、大丈夫だ」
『じゃあ早速、調査結果の件。今日私、寝ずに調べたんだから役に立ててよ?』
「寝ずに?」
『寝ずに』
「そうか、ありがとう。オレのためにKが削ってくれた睡眠時間は無駄にはしない」
『それ嫌味?』
「まさか」
本当にそんなつもりはないが。
「……で、結果はどうだったんだ? 何か雷電一族の生き残りに関する手掛かりは掴めたのか?」
『結論から言うと大した手掛かりは掴めなかった。申し訳ない。その上で言うけどおそらく雷式部・鬼狩り事変での生存者は一人』
「
『そういうこと』
やはりそれは変わらないことのようだな。
『それ以外の生存者はおそらくゼロ。これは救助に向かった異能者からの報告書があるから確かな情報だと思う』
「そうなのか?」
そんな話は
『ええ。私の手元にあるこの履歴書によれば、報告者は御三家「伏見」の
「旬さん?」
『うん……そう書いてある』
旬さんとオレの関係はいわゆる師弟だ。これを他人に知られてまずいかと聞かれれば、かなりまずい。何故ならオレ達は一般的な師弟とは違うからだ。
『そんなことよりも、私さっき大した手掛かりは掴めなかったって言ったよね』
「ああ、言ったな。つまり多少の手掛かりなら掴めたと?」
『そういうこと。本当に微かな成果を、一つだけ手に入れた。かつての履歴や戦闘経歴等の資料じゃなくて、現在の
ここで出ている「
「エレクトロマギオン? ああ、電気系統のマナのことか。たしかその英称だったはずだ」
『さすが博識。そう、電気系統のマナのこと。問題はIW内のそのマナを感知した数値の統計結果がちょっとね』
特に何も問題ないように思えるが。
その時気付いた。
「いや待て……あり得ない」
電気系統の異能を扱うにはマナの内包要素として電気系マナが欠かせない。
電気系統の異能を扱うには電子を自由自在に動かすクーロン力と電気的ポテンシャルを操作できる必要がある。
それは即ち、雷電一族。
電気系統の異能を使えるのは「雷電」の名が付く人だけ。
この世界で唯一電気の異能が使える一族、それが雷電一族。
「おかしいよね。雷電一族は凛さんだけなのに、数値上はそこにもう一人いるって出てるんだから」
雷電凛しか持ち合わせていない
『あなたの言う雷電一族の生き残りが、この世に居るかもしれないということ。それでも、あくまで可能性の話でしょ? だから「微かな成果」とは言ったけど』
「なるほど、よく理解できた。調べてくれてありがとう。情報は以上か?」
『そうだね。残念だけどこれ以外の情報となると噂の域を超えないものばかりになってしまうかも』
「分かった。まあ、これだけのことを知れただけでもKに調査させて良かったと思ってる。それに朝から連絡をくれてありがとう。感謝してる」
『いいえ。私はあなたの
「ああ。頼ることにする」
自分で言った瞬間、襲ってくる違和感――。
この時のオレの頭には、凛の声がよぎっていた。
凛の髪に未だ異変が現れていなかった頃のこと。
その時の彼女の――凛の声が脳裏にちらつく。
―――「これからも、統也が私を頼ってくれるなら、私に出来ることは何でもやるから」
そして、その時オレはこう答えた。
―――「ああ。頼ることにする」と。
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