Strange youth ~イカれた少年少女~

 「機体の性能に頼り過ぎだな!ヒヅル!!」

「エムル、お前こそやたらと焦り過ぎだな……ッ!」

猛攻を回避する間隙を縫い、ビームカービンで応戦する。

頭部、バーニア、胴体!当たった!


「直線的な攻撃!」

腕を頭・バーニア・胴の順にかざし、シールドでいとも容易くいなす。

だめだ、全く決め手にならない!


 「ウォルノ、ジェゴ隊着艦ネ!艦上で敵の牽制に当たってるヨ!」

「チョウ、ありがとう!

ヒヅル、フィリス!引き上げて!艦長命令です!

副長!敵の最新機を牽制はできないか!」

「ワシらが下手に今撃てば、それこそヒヅル達を落としかねん。

それに、群がるハエ共を叩き落とすことで、ワグテールやガン・ディーヴァ含め、火器類は精一杯だ」


「彼ら自身に、賭けるしかないのか」

ミランダが叩きつける握りこぶしも虚しく、カンナギはどんどんと高度を上げ始める。


 山を越えたらもう、海だ……エネルギーが切れる前にエムルたちを置い払わないとならない!

「着艦したいっていうのに……この白黒の!本当にしつこい!」

「しぶとい猫……嫌い」

近・中距離をメインにするイゾルディアに、クナイで応戦するマドゥ=クシャでは相性が悪い。


「山を越えて海辺にはまだ敵機がいるはず。

蛇腹剣の斜線上に敵を挟めば、あの乱暴な姫様も剣を振るえないはず!」

滑空して山を降り、涼やかな海辺に向かう。

即座にイゾルディアとの間に、ゴブ・オーグを挟む。

ついでのついでに、ゴブ・オーグはすれ違いざまに腕を切り落とし済みだ。

浜辺まで追ってくるイゾルディア。


しかし、彼女が次にとった行動は驚くべきものだった。

「邪魔」

味方が射線上にいるにも関わらず、蛇腹剣を振るったのだ。

フィリスは両手のクナイで薙ぎ払うが、両手を失ったゴブ・オーグはみるみる細切れになった。

鋼鉄の姫君は、スカートが血で濡れることも、砂がつくこともお構いなしのようだ。


このパイロット……おかしい!通信を!

どんな思考したバカが乗ってるのよ!


communication by Mado=Qusha

フィリスが、イゾルディアに映像通信をする。

「!!!しょう…じょ!?」

血のような赤黒い長髪。半分隠れた顔。

首から下げた金色の円筒状のアクセサリ。

表情のない人形のような少女がいた。


「あなた、自分の味方も殺してなんとも思わないの!?」

「意味不明。

敵を殺れば、他はどうでもいい」


こいつ……敵味方の区別も、感情もないの!?

パイロットの不気味さに、フィリスは隙を突かれてしまった。

「ッッッッッ!しまった!」

とうとう蛇腹の鋭い刃が、マドゥ=クシャの左肩シールドと、足の脛骨部を切り裂く。

その様子は、虐待される猫の如くだ。


 「フィリス!うわッ!!」

「よそ見とは余裕だな!」

ヒヅルが眼下のフィリスに気を取られる間に、距離を詰めたメドラードがタックルしてきた。

体勢を崩し、高度が落ちる。

すかさず、バーロック3機が突撃機銃で追い打ちをかけてくる。

「おい、貴様ら。余計なことをするな」

「我々も掃討命令を受けているため、見過ごすことはできません。

エムル様も不本意とは思いますが、援護します」

「勝手にしろ。俺が仕留めることに……」

メドラードが二振りの剣を構える。


「代わりはないがなァァ!!」

来るか!

すかさずヒヅルは膝のビームセイバーを抜き、鍔迫り合う。

ピピピッ! ピピピッ!

communication by Medrard


「メドラード?エムルの機体から映像通信か!」

反射的に即応すると同時に、あの日眼にした銀髪の美青年が映し出される。

「相変わらず弱い!これか!特別扱いを受けた!」

「エムル!なんのために!」

「うるさい!お父様から認められるために!

俺は!お前を!!討つ!!!」


話が通じない!

バーニアをふかして、刀を押し切る!

即座にまっすぐ上昇して、バーロック2機の機銃を回避行動をとる。


……がその前に、真下からメドラードの飛び蹴りを食らってしまう。

「逃すと思ったか!!」

吹っ飛ぶ間に機銃を一発腰側面のバーニアとビームカービンに食らって破壊されてしまった。

手に持ったセイバーも吹き飛ばされ、小さく海をジュゥと熱して沈んでしまった。


「何が”ふくしゅう”だ、馬鹿馬鹿しい!

沈め……ん?」

ヒヅルの首に下がる”それ”を最近エムルは見たような気がした。

まぁいい。死にゆく男のことなんか!

エムルは二振りの刀を背中合わせで接続する。


二刀流ではない、元々大きな一本のバスターソードだったのだ!

体勢維持をしたヒヅルの前に、エムルが目の前まで接近し、バスターソードを振り下ろそうとする。


「ダメだ!!!このままでは……やられる!」

だがその時、アマテラスのスクリーンには青緑色の文字が浮かび上がるのであった。

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