第14話 最速ムーブが決められない
「アンデッドはお前には浄化できんじゃろうが……」
ぼそっと呟くシスディアス。
「あっそう」
俺は無表情で拳を握りしめる。
「止めて!! 解く呪い解きますから殴らないで!」
「じゃあさっさと解けよ。俺には100連が待ってるんだ」
「100連とか意味わからんことばっかり言いおってからに……」
ブツブツと文句をいいながら眼を閉じると今度はブツブツと呪文のようなものを唱え始める。
唱え始めてから数分が立つと目を開くシスディアス。
「解いた。呪いは解いたぞ」
「ほんとか?嘘だったら分かってるよな?俺にはすぐに分かるからな」
「解いたと言っておろうが!!」
千里眼! アリシア・アリステル。
念ずるといつもの青い球が現れ、グーンとアップになる。
仰向けに横になる美少女の姿が映し出されたその瞬間、閉じられていた瞼が開き大きな黒曜石のような瞳が現れる。側で寄り添うように見ていたディアゴさんはそれを見て慌てて声を掛けている。
グッと拳を握りしめ喜びを噛みしめる。
「その様子じゃ呪いが解けたようじゃな……さあ儂を元に戻せ」
「は? 元に戻す? どうやって元に戻すの?」
「儂が知るか!! お主が儂をアンデッドにしたのじゃろうが……人間に戻せ」
「俺が知るわけないだろ。元に戻す方法なんて。死ぬまで殴ればいいのか?」
「はぁぁぁアンデッドになったら浄化されるまで消えることはないことはお前も知っておろうが! このまま脳みそが朽ち果てたら儂はただの歩く死体じゃ……あーうーといって歩くだけの死体になるんじゃぞ!!」
もうこいつの話を聞く義理もないし、早く帰って100連の最速ムーブを決める。今引けば★★★★★が出る気がするというか出るはず。
「また呪いを掛けたらぶっ飛ばしにくるからな。それじゃ」
「は? 儂をこのままで放置するのか! せめて浄化ぐらいせんか!!」
瞬間移動! アリシアの寝室
と念じるとベッドから半身を起こしたアリシアさんと喜びの涙を流しているディアゴさんが現れる。
「ウェブ様! 本当にありがとうございます!!」
ディアゴさんはそう言って握手を俺に握手を求めてくる。
「ディアゴさん。そんなことよりも早くほ……」
「あなたが……あなたが私を救ってくださったのね……」
俺の言葉を遮るようにアリシアさんが話しかけて来た。
「はい。そんなことよりもディアゴさんほう……」
アリシアさんはまたしても俺が喋ってる途中で口を挟む。
「私……夢で見てました……あなたが私に呪いを掛けたシスディアスから救ってくれるところを……」
「へー。そんなことよりもディアゴさんほうし」
「私はその凛々しいお姿に……」
アリシアさん俺がディアゴさんに話をしているのが聞こえてないのか話し続ける。
「ディアゴさん! そんなことよりも報酬!報酬を下さいよ!!」
今度は負けじと俺の方からアリシアさんの言葉に被せるように言った。
俺がやっと言いきるとディアゴさんハッとして話始める。
「あ、ああ。その報酬ですが、ご主人様から直にお渡しになられたいと、お嬢様をお目覚めさせられるお方が現れたその時にはとご主人様がそう申されておりましたので……」
「で、いつなの?」
「3日後でございます。ご主人さまは所用で王都に行かれておりますので……」
は?フェス終わってるし。シスディアスを速攻でやっつけてきた意味がない。
「却下。ディアゴさん今すぐ下さい。金貨3枚」
「ですから……」
「下さい! 約束でしょ?」
俺の迫力に気圧されたのかディアゴさんは「わ、わかりました……」と言って小袋の中から金貨3枚を取り出す。
俺はそれを両手を差し出して受け取り「それじゃ」と言って瞬間移動、穴と念じた。
そして俺の手には金貨3枚、目の前には穴という状況を作り出した。
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