忘却の転生者~転生を繰り返すモノ~

ソラゴリ

第1部

プロローグ1 終わりと始まり

???視点


 いま、一つの命が消えようとしていた。

 その命は自然的な現象と人為的な思惑の両方の影響から、異世界から召喚されるという数奇な人生を歩んでいた。

 この世界には地球とは比較にならないほど少ないが、人間種が多くいる。

 そんな中で特定の命の終わりを、人間らを創造した我々がこうして、その輝きを見届けているのにも理由がある。

 それというのも、魔物と人間種の数的な均衡を観察対象が大きく崩してしまったからだ。

 

 そもそも自然というのはより適切であるように均衡が保たれている。

 食物連鎖のピラミッドもより自然なバランスになるように、自然と調整されている。

 そんな調整された世界のバランスを彼はほとんど一人で崩してしまったのだ。

 恐ろしいほどの力だ。


 我々の認識として、別世界から転移や転生してきた生物と言うのは規格外な力を持つというものがある。

 我々が観察している対象もそういう規格外だったという訳だ。

 

 そんな規格外の存在に、我々はある枷を施そうとしている。

 それは対象の魂を魔物側に転生させようというものだ。

 対象が崩したバランスを対象自身の手で戻してもらおうとしているのだ。

 と言っても、すぐに彼の魂を魔物側へと送るわけではない。

 最初の数度は人間に転生し、知識を蓄えてもらう予定だ。

 

 自然と知識への欲求が強まるのを待つのもいいが、我々の問題は少しでも早く解決したい。

 ゆえに、魂に少し小細工を仕掛けようと思う。

 小細工の内容は夢を見させるというもの。

 対象が異世界で培ってきた知識や経験を夢で見させる。

 対象は何を言われずとも、知識への欲求を強めるだろう。


 もし、知識への欲求が一度の転生で強くならなかったら、何度でも転生させよう。

 我々は対象の魂がいくら消耗しようとも、転生を強制しよう。


 対象は我々を恨むだろう。

 だが、最初に我々の頼みを反故にしたのは対象が先だ。

 魔物が減り過ぎているという状況にも関わらず、魔物を討伐し続けてきたのは対象の所為だ。

 これが責任転嫁にあたるのは知っている。

 だが、こうするしかないのだ。

 

 異世界から来た魂よ。

 申し訳ないが、我々の世界のために犠牲になってくれ。

 君が人間の数を大きく減らせた暁には、その役目から解放し、安住の地へと誘おう。

 

 どうか、一刻も早く、君の務めが果たされることを祈ろう。

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