第21話 海外へ
「滝沢くんじゃない。貴方も研究室へ向かうところかしら?」
凛から全力で逃げていると途中で古宮であった。凛の次は古宮か。今日はついてない日だ。
「ああ。急がないと大事なもんを失うからな」
俺の前で見せる表情が増えた古宮がキョトンした顔を浮かべる。分からなくていいよ。
「単位のことかしら?まぁいいわ、一緒にいきましょう」
うわぁ。正直嫌だ。凛ほどの話題性はないが古宮も十分に有名人だ。俺が二股クソ野郎みたいに思われるだろ間違ってないけど。
「そうだな。俺も古宮には聞きたいことあるし」
それでも復讐計画を進めるために応じる。
「私に聞きたいことって何かしら」
「大事な方とそこまでな方どっち先がいいか?」
「何よそれ。じゃあそこまでな方で」
「ミスコンから数日経ったが古宮の調子はどうなんだ?」
古宮を堕とすにあたって彼女のメンタル状況を知るのは最優先事項だ。タイミングを間違えれば心の壁を厚くされてしまう。
「あら、心配してくれるなんて優しいわね。東さんに勝てて私の悩みは多少解消されたけど、今までとそこまで変わらないわ」
あんな手段だったし完全復活というわけにはいかなかったのだろう。それに彼女の根本の問題はそこではない。
「そう簡単に解決ってわけにはいかないもんな。ま、俺も凛が負ける姿は見てみたいから力になれることがあればいつでも言ってくれ」
「彼女さんにそんなこと言っていいのかしら?」
断じて凛は彼女ではない。勘違いする奴が増えるから大学のHPに載せておいてくれ…
「凛は遊び相手だ。俺が弄ばれてるだけのな」
「そういうことならお願いするかもしれないわ。で、大事な方は?」
今までのは軽い挨拶。こっからが本題だ。
「古見の胸って何カップなんだ?」
「…」
最近表情の増えた古宮が初対面の時より死んだ目をしていた。
「死ねばいいのに…」
今のは俺が悪いが凛といい古宮といい俺を死なそうとしないでくれ…
「冗談だって。古宮って外国語は話せるか?」
今度は研究に関わる真面目な話だ。
「私言語系はダメで大学受験英語レベルしかできないわ」
うちの大学に受かるレベルなら十分だろう。
「じゃあ決まりだな。古宮、イギリス行くぞ」
「は?!」
俺のくだらないセクハラで冷めた表情が一気に崩れ、聞いたことのない声がした。
「そんなに驚くことか?」
「あ、貴方には恩もあるけどそこまで親しくなった覚えはないわ!」
おぉあの古宮が本気で困惑している。
性格の悪い遊びもここまでにしよう。なんか古宮ってMっ気があって揶揄うと楽しいんだよなぁ。
「悪い悪い。説明不足だったな。研究授業の課題に、国外の建築物を実地で調査してくるってのがあるんだよ」
これは教授を脅して頼んだのではなく、元からある課題だ。なんと最大7日間分の旅行費が全額大学から支給される。これは森研究室だけの特権であり、一番人気である理由だ。
「意地悪ね、本気で驚いたわよ… そのことなら知ってるわ。まさか貴方と2人きりのグループになるとは思ってもいなかったけれど」
俺はこれがあるからお前を孤立させたんだがな。
「安心しろよ。俺ほど安心できる男はいない」
「流石ハメ撮りを公開された男の言うことは一味違うわね」
こいつ… いつか絶対分からせてやる。
そのまま研究室へと着いた俺らは、海外旅行?への計画を共に作っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます