第15話 古宮からの頼み事

学内有数の人気研究室というだけあり、想像以上に課題が多くて辞めたくなってきた授業に今日も顔を出す。古宮と関われるのはここだけので致し方なしだ。


「今日も先日出したレポートから入るので自由にグループを組んで共有してください」


教授の指示通り動き古宮と同じ机につく。


「あの日ぶりね」


あの日とはホテル街で出会った時のことだろう。


「外でしかも彼氏連れてる時に話しかけてくるな」


親友の元カノの浮気相手とか地獄でしかない。


「その件は私も反省してるわ。俺といる時に他の男に声かけるなって叱られちゃった」


「自業自得だな。んじゃテキトーにまとめて終わらせようぜ」


昨日の夜から凛と寝ずの夜を明かしたため、今は復讐より睡眠時間が欲しかった。


「それは私がまとめておくから安心して。その代わりお願いがあるんだけど聞いてくれる?」


古宮から突然の猫撫で声に鳥肌が立った。どうせまた碌でもないことに巻き込まれるんだろうな。


「却下だ。お前の言うことを聞いてやる義理はない」


「内容くらい聞いてくれてもよくない?」


ってかさっきから話し方が気持ち悪い。


「一旦ストップ。お前は二重人格者か?お嬢様っぽい話し方か普通の話し方どっちかに統一してくれ」


「それもお願いの内容に関係することだわ」


半分眠っている脳を使ってこの先を考えてみる。


古宮のお願いを聞けば十中八九面倒臭いことに巻き込まれるだろう。デメリットはこれくらいだ。


逆にこの機会に古宮のことを色々知れれば今後の復讐が楽になるかもしれない。特に話し方の件から古宮の精神の不安定さの原因を探れるかもしれない。


最悪聞くだけ聞いて拒否すればいい。


「分かったよ。聞くだけだからな?」


断られると思っていたのだろう。珍しく笑顔を浮かべ嬉しそうにする。


「それでいいわ。何から話そうかしら…」


「とりあえず頼み事の内容を教えてくれ」


「そうね。私のお願いは、滝沢くんにミスターコンテストに出て欲しいの」


どこかで聞いた話だな。あれは確か…


「凛が言ってたのはこれのことだったか」


「おそらく合ってるわ。だからお願いしといて悪いのだけれど、私の真の目的は東さんとミスコンで競うことよ」


なるほど。俺が出ない限り凛は絶対に出ないと言っていたから、そのための餌ってわけか。気に入らないな。


「そんな我儘に付き合うほど俺も安くはないんでね。俺が興味を持つような話をしてくれるんだろ?」


「えぇ。彼氏にも話していないとっておきの過去をね…」

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