第10話 妹は奴隷
「私、実はエッチするのが好きなんです」
意を決した表情をする彼女が発したのは特大爆弾だった。
「初心な反応してたし意外だったな」
小さくて可愛らしい見た目をしているので男受けは良さそうだが、そんな遊んでる風には感じなかった。さっきもお姫様抱っこされて顔赤くしてたし。
「それは先輩が格好良すぎるからですよ…」
「話を逸らして悪かったな、それで?」
「私ってバカで運動もできなくて何も取り柄ないんですけど、唯一この見た目だけはみんな褒めてくれるんです。小、中学校ではバカにしてきた男子が顔赤くして告白してきたりするんですよ?」
気持ちはわからなくもない。9年間上から目線だった奴らが実は下にいることに気づいたら快感にもなるだろう。
「エッチにハマったのもそれが理由です。あの時だけは運動ができる男子も背が高くてモテる先輩も誰もが私を求めてくれるんです」
「なるほどな。性行為それ自体が好きなわけではなく、男共が愛を伝えようと必死になる様子が好きなんだな」
こういう子は意外と多い。特に幼い頃の愛情不足だったり、何かしらコンプレックスを抱えている人ほどこの傾向に陥りやすい。
「そういうことですね。私エッチで感じたことないですし…」
「さっき襲われてた理由もその延長線上か」
「はい。助けていただいたのにごめんなさい。全部自業自得なんです。あそこにいたのは、私がビッチだって噂を聞きつけた男子5人と、私に彼氏を寝取られた女子5人だったんです」
下半身で動いてる男共は知らんが、実は彼氏を寝取られた被害者でもあった女子5人はご愁傷様だ。 退学になっても全く罪悪感はないが…
「確かにそれは自業自得だな。ま、俺が助けたのも気まぐれでしかないんだし、お前がしたいように生きるのが一番だ」
こんなテキトーなこと言われても悩むだけかなと思ったが、目の前の子はすぐに決心した様子で顔を上げた。
「秀先輩、私決めました」
「早いな、聞いてやろう」
「私、秀先輩の奴隷になりたいです!」
またこのパターンね。最近のヤバい女吸い寄せ率が異常だ。こんなん100人抱いて1人いるかどうかってレベルなはずなんだが…
「今の日本に奴隷制度はないぞ?」
「大丈夫です!そんな契約なくても私は絶対に裏切ったりしません。秀先輩の言うことならなんでも聞きます」
ほう、なんでもか… 見た目が良いしこれは使えるかもしれない。
「本当になんでも言うことを聞くんだな?今のお前からすれば俺はヒーローかのように映ってるかもしれないが、実際は女遊びしてばかりいるクズでしかないぞ?」
「そんなの些細なことです!私だって男遊びばっかしてるクズですから!」
ヤバい子感は拭えないが彼女が本気で言っていることは伝わってきた。まともな大人なら止めるのだろうが、残念ながら俺はまともじゃない。
「そこまで言うのならわかった。今後は俺の手足となれ。その代わり、今後お前に何かあればすぐ駆けつけてやる。俺は自分の物を大事にするタイプだからな」
「それって男遊びを続けても良いってことですか?」
「好きにすればいいさ。俺も女遊び楽しいし」
「ありがとうございます!では早速脱ぎますね」
こいつあっという間に貸した上着を脱ぎ捨て裸になりやがった。
「おいやめろ、俺を性犯罪者にするつもりか。未成年は抱くつもりない」
「えぇ?!何でですか!私チビですけど胸は大きいですし、こう見えてヨガしてるので下の方も満足していただけると思いますよ!」
俺は未成年を抱いたことはない。背負うのは背後から刺されるリスクのみで十分だ。
「落ち着けバカ犬。あと2年我慢しろ。お前が成人した暁には一番に抱いてやる。朝から晩までお前が気絶するまでな」
ちょっと納得いってなさそうだが服を着直してくれる。
「そういうことなら分かりました… あ!じゃあ我慢するためにもお兄ちゃんって呼んでいいですか?ほら、兄妹なら倫理的にダメな感じ強くなるじゃないですか!」
「好きに呼べばいい。あの訳わからん二つ名よりマシだ。俺も下の名で呼ばせてもらおう、咲」
「わー!なんか兄妹も禁断の愛感あって燃えてきちゃいました!まずいです!」
こいつはほんと…
「俺の罪状を増やそうとすんな」
「えへへ…」
時計を見ると話し始めてから2時間近く経っていた。俺も案外夢中になっていたらしい。この子には人を惹きつける何かがあるのだろう。
「思ったより時間経ってたしこの辺で帰らせてもらう。さっきの動画は送っておくから、講師室行って事情を話してこい。俺の名前使ってもいいからな」
「はい!何から何までありがとうございました。このご恩は一生忘れません!」
「期待してるよ。あとその上着は咲にやる。要らなければフリマにでも売ってくれ」
「そんなことしません!これは私の宝物です!」
「可愛い子にきてもらえてそれも喜んでるだろうよ。じゃあな」
「またね、秀お兄ちゃん!」
俺は一人っ子なので自分を兄と慕ってくれる咲に少し嬉しい気持ちになった自分がいた。
でもそんな可愛らしい妹をハニトラのために使おうとしているのは、やはりクズはクズでしかないのだろう…
「おい、人の妹に手を出すとはどういうことだ?咲はまだ未成年だぞ」
可愛い子とヤったら奥から怖いお兄さんが出てくることを美人局と呼ぶ。今俺がやっているのはそれだ。
咲と研究授業にいた男の1人が裸で抱き合ってるところを動画に収め、目の前でちらつかせる。
「お、お前はこの前入ってきた2年の…」
「話が早くて助かるな」
「何が目的だ?」
「安心してくれ。金は要求しないさ。ただお願いを聞いてくれればいいんだ。それも簡単なお願いだ」
大金を取られるかと思っていたのか、男が少し落ち着きを取り戻す。
「俺にできる範囲ならなんでもする。だから頼む、見逃してくれ」
「それはお前の行動次第だな。お前がすべきことは一つ、今後の研究授業で古宮秋を常に無視するだけだ。一切関わってはいけない」
「何故古宮さんを無視しなければいけないんだ?」
「お前が知る必要ない。で、どうするんだ?」
こいつも股間で行動したことを除けば元は頭が良いはずだ。何を選べば自分のためになるかわかるだろう。
「分かった。古宮秋はいない人とすることを約束する」
「賢明な判断だ。あと知らなきゃ答えなくていいが、研究室にいる古宮以外の女2人に関して何か知っているか?」
「実桜は巻き込むな!」
前言撤回。こいつはバカだった。
「何か知っているようだな。自分の立場を理解してから答えなおせ。実桜とは誰だ?」
我が身可愛さが勝ったのだろう。少し抵抗していたがやがて口を開いた。
「実桜は俺の彼女だ。だから絶対に手を出すな」
「悪いが無理だな。俺の計画を邪魔する奴は誰であろうとぶっ壊す」
「計画の邪魔させなければいいんだろ!俺が説得してみせる。必ずだ」
「条件はお前に出したものと一緒だから守れるならそれでもいいが、一度でも邪魔したらお前らの未来はないと思え」
「分かった。実桜は俺に借りがあるから言うことを聞いてくれると思う」
「方法は好きにしろ。で、残りの女もお前じゃない男の方と付き合ってたりするか?」
「よく分かったな、その通りだ」
教授に頼んだグループ分けが無駄になった。それでも得られたものが大きすぎる。まさかカモネギにカモネギが重なるとは思っていなかった。
「良い情報が聞けた。もう1人の男にその話伝えといてくれ。あいつも俺に現場押さえられてるから、言えばすぐわかるだろう」
これ以上用はないので、咲に服を着せてから回収する。
「咲のおかげで障害が一度に全て解決した。咲は本当に使える子だな」
感謝の代わりに頭を撫でると犬のように擦り寄ってくる。
「お兄ちゃんのお役に立てて嬉しい!復讐、絶対成功させようね?」
「あぁ」
次回の授業が楽しみで仕方ない。いっつも無視してる女が逆に全員から無視される。
あいつはそれに耐えられるかな?…
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