俺の従兄弟のおじさんが義妹になりまして

エイジアモン

1.義妹を迎える.T

「…ただいま」


6月初旬の土曜日夕方、もうすっかり夏模様でとても暑いそんな日。

唖然としていた、そりゃ事前に女の子だって聞いていたけど、だけどこんな、こんなに綺麗で可愛い美少女だなんて思わないじゃ無いか!

鼻筋は真っ直ぐ通り小さい鼻、瞳は碧く、二重まぶたで切れ長の目に太くて長い睫毛、茶色がかった眉毛、薄いピンクの唇、日本人としては少しだけ彫りが深く少し丸みを帯びた卵型の顔。

金髪の髪質はサラサラのストレートで腰までの長さがあり、肌は透き通るほど白く、身長は175の俺より頭1つ分は低いだろうか、胸は大きく、身体は細い、何となく儚げなイメージの、ハッキリ言って俺好みなこの美少女が、元があのおじさんだとは到底思えない。


「家に入れてもらって良いかな、外だと暑いし少し恥ずかしいんだ」

「あ!すみません!えーと、お帰りなさい」


そう言って迎えるのがやっとだった。


今リビングで冷たい麦茶を飲みながら一息ついているこの美少女は1ヶ月と少し前まで33才で従兄弟のおじさん、荒木田 雅(あらきだ まさ)だった、今日からは何故か俺の義理の妹で15才という事になると云う、俺は16才だけど4月生まれの光野 敏夫(こうの としお)で同学年だ。


そしておじさんは、いやこの美少女はうちの高校の制服を着ている、勿論女子のだ、つまり月曜からこのおじ…美少女と同じ学校、同じクラスで授業を受ける事になると云う。


何故こんな事になったのか、詳しい事は聞かされていないけど、ある朝突然おじさんは女の子になったらしい。

当日朝は珍しく朝食の準備がされて無く、おじさんも部屋から出てこなかったので体調でも悪いんだろうなどと考えながら出かけたのを覚えている。

それがまさかTS病だったなんて。

その日からおじさんは1ヶ月ちょっと入院していて、今日ようやく帰ってきた。


此処はおじさんの家で、俺は高校に通うために学校に近いおじさんの家に居候になっている、と言っても同居期間は1ヶ月程度でここ1ヶ月ほどはおじさんの居ない一人暮らしを満喫していた。

ご飯はおじさんが作ってくれていたので其処だけは不便だったけど。


それが突然今日の夕方帰ってくると聞いて慌てて部屋を綺麗に片付けたのだ。


「聞いてると思うけど、週明けからは一緒の学校に通う事になるから、よろしく頼むよ」

「あ、はい、こちらこそよろしくお願いします」


明日の日曜には俺の姉さんが来て洋服などの必要な物を購入しに行くらしい。


なぜ従兄弟なのにおじさんと呼んでいるかというと、俺が小学生ぐらいの頃は"まさ兄ちゃん"と呼んでいたと思うのだが、中学に上がる頃からはそのいかにもおじさんな、くたびれた容貌と言動から"おじさん"に変わってしまったのだ、多少の反抗期的なものもあったとは思うけど。

それが今やこの美少女で、とてもおじさんとは呼べないし、さらに義理とはいえ妹だなんて、今日からなんて呼べば良いんだ……。


「あー、それでね、名前なんだけど、漢字はそのままで"みやび"って名前になったから」

「今までは雅で"まさ"だったのが"みやび"ですか、なんか良いですね、響きが」

「そうだね、良い響きだ、でもそれが自分の名前なんてなあ……」

「で、これからなんて呼びましょうか?流石に呼び捨てはまずいと思うんですが」


曲がりなりにも居候の身だ、家主を呼び捨てにするわけにもいかないだろうし、おじさんも嫌だろう。


「とはいえ義理でも兄妹となる訳だし敬語はちょっとね、呼び捨てでもいいし好きな様に呼んでくれて構わないよ。私も君の事は"お兄ちゃん"と呼ぼうかな」

「あ、いえッ!俺の事は"敏夫"でいいです」


冗談じゃない、いきなりおじさんに"お兄ちゃん"、なんて呼ばれたら、背筋が凍りそうだ。

おじさんは慌てる俺を見てくっくっと笑っていた、冗談だったのか、やられた。

そしてその笑い顔が可愛い、やられた、いややられてない、あれはおじさんだ。


「そうだなあ、分かった、それじゃあ今まで通りで"敏夫君"だ、これならいいかい?」

「分かりました、じゃあ俺は"みやびさん"て呼びますね」

「仮にも妹なんだし"みやび"と呼び捨てでもいいんだよ」

「いやいやそういう訳にはいきませんよ、"みやびさん"と呼びます」


名前の呼び方はこんな感じに決まった、おじさんは、別に呼び捨てでも構わないんだが…なんてぶつぶつ言ってたけど、何か拘りでもあるのだろうか。


「それでね、また今日から朝と晩御飯は私が作るから、……そうか学校があったね、お昼のお弁当も私が準備するよ」

「いや、いいですよ!そこまでしていただかなくても!」

「どうせ自分の分を作るついでだから手間は変わらないよ、まあ気にしないで」


と言ってニッコリ微笑んだ、そんな美少女フェイスでやられたらドキッとするじゃないか、心臓に悪い、落ち着け、あれはおじさんなんだぞ。


「あ、はい、じゃあお言葉に甘えさせていただきます」

「それじゃあ荷物を置いてきたら早速晩御飯作るからね」

「お願いします、みやびさん」


―――


相変わらずおじさんの料理は美味しく、特に玉子焼きはまさに絶品で、俺は久しぶりの味に大満足した。


「やっぱりおじ…みやびさんの玉子焼きは最高ですね、めちゃくちゃ美味くて俺好みの味です、何個でもいけますよ」

「ありがとう、そう言ってもらえると嬉しいよ。

実はね、敏夫君好みの味になる様に君が家に来てから味の調整をしてたんだよ、ちゃんと好みに合う様で良かった」


そう言ってみやびさんは微笑んだ、その笑顔にまたしても心臓が跳ねる、ドキドキする、味の調整にしたっておじさんの時なら感謝してありがとうございます、って言う程度だけど、美少女の今それを言われたら変な勘違いでも起こしそうじゃないか、心が乱される。

落ち着け俺、あれはおじさんだ、男の時を思い出せ。


そうやって心を落ち着かせているとまたしても。


「どうしたんだい?何か気になる事でもあったのかい?私に言ってくれれば相談に乗るよ、これでも人生経験は君の倍以上はあるからね」


なんて落ち着いた丁寧で穏やかな口調で言ってくるのだ、本当に心臓に悪い、まさか"みやびさんを見ていると俺の心が乱されます"なんて言えるはずもない。

みやびさんは自分が美少女フェイスである事を自覚して欲しい、それに加えておじさんだった当時のくたびれていて丁寧で穏やかな口調が美少女だとこんなに破壊力があるなんて。


「だ、大丈夫です、何とも無いですから!」

「そうかい?それならいいんだけど、何か気になることがあったら言ってくれよ、君はおばさんから……そうか、今は私の母でもあるのかな?から預かった大事な息子さんなんだから、…ん?そうすると私も義妹になるから……なんだかややこしくなっててよく分からなくなるね」

「…そうですね、分かりにくいです」

「それでね、とにかく気になる事があったら相談して欲しいんだ」

「分かりました」


ややこしいけど分かっている事は従兄弟が今日から俺の義妹になったという事だ。2人姉弟から3人姉弟に。


―――


今リビングで2人で何と無くテレビを見ているんだけど、おじ…みやびさんが気になって仕方がない。

さっき風呂から上がってきて、パジャマ姿でそこにいるんだけど、風呂上がりの上気した顔は赤みを浴びてて色っぽく、パジャマが男時代の物でサイズがデカい、それでいてノーブラな為、大きなおっぱいが主張してパジャマを押し上げているのがハッキリ分かり、パジャマのサイズと相まって谷間が見える。


男子高校生には刺激が強い。

ソファーに座っているんだけど、時々前傾して肘を膝の上に置いたりしてさらに強調されて俺の目がそこに吸い込まれる、抗える男などいないのでは無かろうか。


おじさんは俺の視線に気付いたようでニヤリとし、"男の子だもんな"なんて言って姿勢と服を正した。

俺はとてもバツの悪い顔をしていたのだろう、特に怒られなかったのでホッとした。

ついでに言うと服装を正しても谷間は見えていた。


それに気を抜くと直ぐに前傾するので目の毒だ、気付いて慌てて姿勢を正す様がもう可愛い、どっちにしても目の毒だ。正すついでに前髪なんか弄られるとその仕草が可愛すぎてこっちが照れる。


あれはおじさんだと何度も言い聞かせる、聞かせたところであんまり意味が無いけど。何故なら男の本能で見てしまうからだ。それはそれこれはこれ、だ。

お年寄りのスカートが捲れても思わず見てしまうのが男なのだ、見てから後悔するモノなのだ。



もし何かしでかしてしまったら此処には居られなくだろうし、今や義妹だ、それだけでは済まないだろう。

自分の生活と心の平穏の為に、みやびさんがおじさんである事を忘れない、と心に誓った。

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