『かけっこ』

恋人の目玉はキャンディだった。

それは白蛇の青白い瞳だった。

寂しげなその色は時折爽やかな色に輝いて、私のことを見透かした。

君が目覚める度に世界の輪郭が壊れていく。

君が音を立てる度に世界の意味が消えていく。

君が微笑む度に世界は色を奪われる。

君を思う私だけが世界に存在しているのだ。

君を知らない私は私じゃない。

君と居ない私じゃない。

君と居ない私に意味は無い。

君が眠ると私は消える。

でも世界は刻刻と変わっていくの。

あなたが映す世界が歪んでいくの。

君の目を取り出すとその水晶は僅かな光で鮮やかに輝いた。

青だと思った君の瞳はオーロラの揺らめきを湛えてる。

進行する奇妙なスペクトルを口に含むと膨らんで濃い甘みが脳を突き抜けた。

君の瞳。

世界は私になった。

君は私に。

私は世界に。

世界は白く。

白い世界が私の元に。

でもね?

あなたを愛した白蛇は黒い瞳であなたを抱くの。

だって。

あなたの瞳はあなた自身だった。

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