2話 パーティー
私たちのパーティー名は【ブレイブヒーロー】。
そこでは私は雑用だ。
武具の手入れ、体力や傷をそこそこに回復出来る薬、
遠征の準備。荷物持ちなど。
兎に角、彼等に役に立ちそうな事なら何でもやった。
それでも強さは必要なので、
訓練も怠らずひたすらして体を鍛えた。
どうしても訓練時間が減ってしまうが仕方ない。
効率の良い訓練方法を探す。
等級は順調に上げて行った。
皆はとても強く、敵を恐ろしい速度で殲滅していく。
私はそれに着いていく事が出来なかった。
「ほんと、あんた弱いわね」
「まったくだ。飯をただで食えてるだけ有難く思えよ?」
「い、何時もありがとね」
「ありがとうじゃないですよ。そうでは無く、結果を残してくださいよ。無能ですね」
「ごめんなさい」
「まあまあ、アルマも頑張ってるんだ。もう少し気長に待ってやろう」
「ほんと、ソロモンはアルマに甘すぎじゃない?」
「そんな事は無い。俺は皆に平等だよ」
少しキツイ口調だけど、私が弱いので仕方が無い。
どうやら私は、等級がホワイト並みの実力しかないらしい。
せめて足を引っ張らないで済む様に、
ひたすら訓練をした。
そんな時、本を見つけた。
「呪術か……これなら弱くてもパーティーに貢献出来るかな……」
呪術は相手を弱体化したり、
自身の肉体にダメージを与えるなどの代償に、
肉体を強化出来るものである。
手間がかかるのが難点だ。
本を読んでいると、背後からシビルが話しかけて来た。
「呪術に興味があるんですか?」
「え? ええ……まあ……ちょっとだけだよ」
「止めた方が良いですよ。下手に学ぶと教会を敵に回します」
呪術を人にかける事は禁止されている。
魔物に使うのが一般的。
時折、悪い人が呪術をかけたり、
死んだ人や魔物の怨念が無意識に呪いとなり、
殺した者や近くを通った者が呪われる事がある。
その時は教会で解呪をしてくれる。
「もし、呪われた時は私に相談してください。
一応貴方は同じパーティーですので、無料で解呪しますから」
依頼の時は厳しいが、それ以外の時は昔の様に優しい。
こういう所もあり彼等を嫌いになる事が出来ない。
昔と言ったが、成長していないという訳でない。
本質は変わらないということだ。
「何時もありがとう、シビル」
半年でレッド、一年でブラックと等級を上げる。
ギルドの人や受付嬢は大変驚いていた。
厳しい訓練も虚しく、ますます私との差が開いていった。
このままパーティーに居ても駄目なのかと思い始めた時、
ノーマが励ましてくれた事もあった。
「すぐに諦めるのは駄目。
私だって昔はあなたの足元にも及ばなかった。
でも毎日諦めずに魔法を学んで、
ここまで強くなったんだから」
「そうだよね。うん! ありがとう、私もう少し頑張ってみる!」
その半年後、ブロンズに昇格した。もうすぐ十三歳になる。
私は後衛で荷物を持ち、出来る事をやる。
「ソロモン、シビルを魔物が狙ってる!
ノーマ、ヴァイオレットを援護して!」
こうして後衛の私が皆の眼になることで、
回復薬や魔素の消費を抑え、
長い間戦える様になっているはず。
しかし、彼等はそれをやんわりと否定する。
ならばもっと勉強して役に立とう。
その後も、等級もシルバー、ゴールドと、
とんとん拍子で昇格していった。
さらにプラチナになり、
有名になった【ブレイブヒーロー】。
しかも、パーティーの年齢が最年少でなったという事もあり、
本来よりも騒がれる結果となった。
この時には十三歳になっていた。
相変わらずホワイト並みだと言われている。
そして、終にアダマンタイトに昇格する。
この時十五歳である。
この頃からソロモンとノーマの様子が変わった。
何と言うか、大人っぽくなった。
宿の部屋は隣なのだが、
毎日ナニかをしているようだ。
半年後にはシビルとヴァイオレットも変った。
ある日、その原因は分かった。
隠さなくなったからだ。
ソロモンの部屋を訪ねると、
ベッドの上で四人が裸になって絡み合っていた。
ノーマは、仰向けになっている彼の下半身に跨り、
ヴァイオレットは顔に跨る。
シビルはお尻をこちらに向けて、
ソロモンの股とノーマのお尻の周辺をペロペロと舐めていた。
彼女は見ているのに気が付ついた。
隠すどころか、見せつける様に大胆に股を開いた時は驚いた。
「お前も混じるか?」
「い、いや。わ、私は……っ」
「ノリが悪いな」
「アハハハ、何時も見学するのが好きですからね~」
「だから弱いんだな!」
彼等がケタケタと笑っているのを横目に。
手入れした武具を置く。
「違う。そこに置け」
わざと奥の方を指定する。
置く時に、見せつけるかの様に彼女等は体をくねらせ、
嫌らしく喘いでみせる。
私はそそくさと部屋の外へと出た。
私は悔しさを覚えた。
毎日訓練しているのに、彼等に一向に追いつけない事に。
十七歳になると、ミスリルに昇格する。
この都市で。
いや、この国で彼等を知らぬ者など、もういないだろう。
その頃から盗賊が出没して、
ギルドの者を殺しているという事件が起こる。
知り合いが被害にあって無いのもあり、
皆は噂程度にそれを考えていた。
ギルドでは調査しているとのことだ。
同じ頃、私は暴力を振るわれる様になった。
役に立たない雑用だと、事ある毎に殴り蹴られた。
そこからミスをしない様に頑張った。
けれど、ミスが減っても彼等の機嫌が悪く、
ストレスの発散に殴り、蹴られた。
吐血する事もあったけど、こちらは養ってもらっている身。
家族と呼べる者たちはもうソロモンたちだけなのだ。
私の弱さも国中に伝わっているらしく、
あんなのが【ブレイブヒーロー】に居るのが間違いだ、
自分等がパーティーならもっと良いパーティーになる、
など嫉妬の声が上がる。
次第に嫌がらせもされる様になった。
でもそう言われない様に、強くなるための訓練は欠かさない。
十八歳になった。
なんと後一か月間、合算でそれ相応の依頼をこなせば、
最高等級オリハルコンになれるらしい。
ソロモンたちは喜んだ。私ももちろん嬉しかった。
それを聞いた国の人達も大いに喜んだ。
彼等に救われた者、期待している者は多い。
そんな知らせを受けた頃、
ソロモンに再び呼び出された。他には誰も居ない。
「なに? 話って……?」
「お前は俺のパーティーに寄生している事に自覚はあるか?」
「そ、そうは思ってるけど。私なりに戦略を練って」
「ふん。結果が伴わないならそれに意味は無いっ。それより俺の女……いや、奴隷になれ」
「はぁ? 急に何を?」
「はぁ~。俺はずっとお前が強くなるのを待って養って来た。
だが、実際はどうだ?
相変わらず最弱の女剣士だ。
このパーティーのお荷物。
お前はこのパーティーの恥さらしだ」
「……ッ」
「お前、今のままの成果で、
まともに他のパーティーと組めると思ってるのか?」
「それは……」
「雇ってくれるのは、俺のパーティーだけだ。
奴隷になって、何でも言う事を聞くなら」
「もう少し時間を頂戴! そうすれば必ず!」
「……あくまで俺のモノになる予定はないと。
まあいい、もう少しだけ待ってやる。
よく考える事だな」
私は最後のチャンスを貰った。
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