第24話 海を見つめるカレン
2章 永遠の凍結
2章 第24話 海を見つめるカレン
私は「時の加護者」アカネ。
カイト国で行われた四国会談で一応各国の承認を得る事もできた。これで気兼ねなく魔人ルカをナンパヒ島の「ルル診療所」で休ませてあげることが出来る。魔人とはいってもルカは14歳くらいの少年。元気になってほしいと思うのが人情というもの。さぁ、あとは光鳥の羽根を頼りにナンパヒ島を探すぞ!
—フェルナン国~ギプス国へ—
久しぶりの荷車「ホワイト号」の復活だ。
シュー族であるラインとソックスに曳いてもらう荷車を『馬車』と呼ぶわけにもいかずに名付けたのがこの名前だ。
もちろん、今回、荷台に乗るのはN国によって重いケガを負わされた魔人ルカだ。
ホワイト号でギプス国へ向かう道中、私は世界の因果応報について考えた。
もし、シャーレの言葉を借りるならば、この因果はいったい何処までが因でどこからが果になるのだろうか。
6年の歳月が取り消されようとも、死んだ者の運命は変わらない。死んだ原因だけが消されて、死んだ結果だけが残ったのだ。
なら、死んだ者たちの魂はどうなるのだろう?どこへも行き場のない魂は永遠に彷徨い続けるのだろうか?
消された6年はさらに混乱を起こし続けている。そのひとつが魔界だ。
ツグミの覚醒と同時誕生した魔界。しかし、覚醒した原因が消され、覚醒した事実だけが残った事で、魔界は一度消去されてしまったのだ。
その時、魔界から投げ出された魔人たちは、未だこの世界に居続ける。
そして、魔人ローキの「三世の眼」に映った鳴動する卵。シャーレはあの卵も消された6年が原因だと推測していた。
なんと、あの卵の正体はハクアに殺された光鳥レイの成り果てだというのだ。
ハクアに殺された事実が無くなった光鳥レイは、復活の場所を魔界としてしたのではないか。
全てが白亜事変という大きな出来事が無くなったことに起因しているのだ。
・・・・・・
・・
もうすぐギプス国への入国を前にしてシエラがローキに質問をした。
「お前、なぜ付いて来たんだ?」
相変わらず、シエラはローキに対して警戒を解くことはなかった。
「いえ、少しでもあなた方の力になろうと思いまして.. あ奴らが襲ってきたとしても私がいたほうが攻略しやすいかと思います」
「嘘を言うな。お前は—」
「仲間を助けたいんだよね。だってあなた達は兄妹みたいなものでしょ。わかるよ」
「アカネ様....」
「でもね、大丈夫だよ。その辺はシエラもわかっているからもし闘うことになっても手加減すると思うよ」
シエラは黙って流れる景色を見つめていた。
「すいませんでした、アカネ様、シエラ様 ..ホワイト号を停めていただけますか?」
「いいの? 一緒に行かなくて?」
「はい。私は『時の加護者』アカネ様と『闘神』シエラ様を信用いたします」
「お前はどうするんだ、ローキ? 」
「私は、人間を守ります。いや、あいつらが人を殺す過ちを犯さないように何とか食い止めます」
「そう。じゃ、ローキ、私たちが留守の間、お願いね」
「はっ、かしこまりました。 ....アカネ様、よく聞いてください。ドルヂェが最も恐れているのはルカなのです。シャーレ様が以前申しておられたように魔人という存在は多大な悪を持ち合わせている存在です。私も例外ではございません。だが、そのバランスを保つ存在がルカなのです。闇炎と言われるルカの炎。その正体は浄化の炎なのです。ドルヂェはその炎を遠ざける為にルカを現世に追いやったのでしょう。 ルカをどうか.. お願いいたします」
「お前、こんな別れ際にそんな大切な事を.. もっと先に言え! 」
「それとこれは無理なお願いでしょうが.. ドルヂェは私たち5人の中で誰よりもやさしい魔人なのです。どうかドルヂェを殺さないでください」
「まったく、無理なお願いと思うなら言うな。お願いをされたら断れないだろうが.. 」
「シエラ様.. 」
こうして魔人ローキはギプス国手前でホワイト号を降りた。
やがて、長い大陸を横切り王都ギプスへの関所が見えると、どこからか現れたギプス国の騎士団が私たちを取り囲んだ。
騎士団は「護衛いたします」と言っていたが、これは護衛などではない。魔人ルカを警戒しての特別な騎士団だ。
なぜならば彼ら騎士団が持つ剣からは大きな魔素の気配を感じる。魔法剣と言ったところだろうか。
王都ギプスに入ると街ではお祭りがあるようだった。
「何の祭りがあるの?」
騎士団長のアルカに聞いてみた。
「今宵は、ひとつ絞首刑が行われるのです。ご存じの通り、ここは各国の荒くれが集まる港町です。その者たちを牽制するためにも、ギプスでは処刑が公開されています。処刑が行われる日には出店が並ぶ祭りとなるのです」
なるほど、そう言えばあちこちにポスターが貼られている。
「ねぇ、ところで貼り紙に大きく書かれた『×3』ってどういう意味?」
「あれは..驚いたことに、今宵の死刑囚は今回で『3回目』の処刑なのです」
「3回目?」
「はい。あの囚人は2回の絞首刑を生き延びたのです。今や港では「生か死か?」などと賭けまで行われる始末でして.. 」
確かに港では予想屋が大盛況のようだった。
そんな喧騒な人々の向こう側の小高い護岸の上に海を眺めるカレンの姿を見つけた。
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