第6章 エプロンドレス
part Kon 10/17 am 11:12
「お邪魔しま~す!」
あきちゃんの部屋に入る。
初めて通された部屋。
だけど 見た瞬間『ああ あきちゃんの部屋だ』
って いきなり納得できる感じ。
もちろん あたし部屋なんかより 断然広い。
たぶん 倍以上ある。
右側の壁が 全部 クローゼットとかの収納になってるからホント広々。
部屋の手前側に 上等そうな白木作りの 学習机。
ところどころ ピンクに塗られた女の子らしいデザイン。
その横に ミニコンポ。
机の上には T-GROのとかクラシックっぽいCDとかがキチンと整理されて飾られている。
「あっ 〈True Soul〉のCDじゃん。買ったんだ?」
「あー そうです。こないだ 発売だったんで。聴きます?」
「かけてくれると嬉しいかも」
あきちゃんがミニコンポを操作して 静かな音量でCDをかけてくれる。
部屋の真ん中辺りには 小さなコタツテーブルがある。
その上に ファッション雑誌が3冊ほど バサッと置いてある。
そして 部屋の奥には 背の高いスチールラック。
そこに油絵のキャンバスがいっぱい詰め込まれていた。
周りにも何枚か立て掛けてある。
もう ホント 雑然とした感じ。
その横に畳んだイーゼルと折り畳み椅子。
そして部屋中に漂う 油絵具の匂い。
美術室の匂いだ。
ホント分かりやすい。
手前が天使のあきちゃん。
奥に行くほど
「あの 汚い部屋ですけど よかったら座ってください」
確かに キレイな部屋とは言い難い感じ。
特に
頑張って掃除したのは ありありと分かるんだけど。
それでもゴチャゴチャした感じだし。
きっと元は もっと酷かったに違いない…。
……あたしが来るってわかって慌てて片付けたんだろうな。
出会ったころだったらビックリしたかもしれない。
でも 今は あきちゃんらしいって思う。
こーゆーちょっと面倒くさがりで おサボりさんな感じも カワイイんだよね。
完璧過ぎないとこが 萌えるのだ。
とはいえ フローリングのあちこちに床に 飛び散った絵の具のシミみたいのが 残っている。
せっかくの買ったばっかのワンピースを汚したくはない。
「いつも ここで 絵 描いてるんだ?」
「まだ 匂いします…? しばらく 窓 開けといたんですけど……。ママが臭いから開けとけって…。アタシ 慣れちゃってて あんま 判んないんで…。一応 テレピンとか 匂いキツイやつは 家では使わないようにしてるんですけど……。……やっぱり 匂います?」
口の中でゴニョゴニョ言う感じは 出会ったころと変わらない。
「ううん。別に気にならないよ。イーゼルとか キャンバスとか いっぱいあるから いつも あきちゃん ここで頑張ってるんだなぁ…って」
「いつもは 床 汚さないように ブルーシート敷いて 描いてるんです。今日は お客さん来るんで 片付けたんですけど…」
ブルーシート敷いてても この汚れ方か…。
油絵 描くのも大変なんだね。
まあ 服作りも ミシンの音がうるさいって 啓吾に散々 文句言われたけど。
おっと。
そうだ。
エプロンドレス。
あきちゃんの部屋見たいってゆーのも 確かにあった。
だけど 今日 あきちゃんの家に来た最大の目的は このエプロンドレス。
ベッドの上に置いたバックを開き あきちゃん用のドレスを取り出す。
家にあったタオルの入ってた紙の化粧箱にちょうどキレイに収まった。
その箱を百均で買ってきた 包装紙とリボンでラッピング。
「あきちゃん。お誕生日おめでと~!」
「ありがとうございます こんのさん」
「……これ。誕生日プレゼント。気に入ってくれるといいんだけど…」
絶対 気に入ってもらえるハズ。
そう確信してるけど やっぱ ドキドキする。
「わぁ…。こんな大きなプレゼント…。ありがとうございます。開けてみてもいいですか?」
「もちろん!」
あきちゃんは リボンをほどき 包装紙を丁寧に剥がしてくれている。
そして 箱に手をかける。
……もうすぐだ。
緊張が 最大に高まる……。
「えっ!? こんのさん これって…? ファッションショーまで まだ だいぶあるじゃないですか……。…そんな 無理して……。…ううん。あの ホント ありがとうございます」
「へっへっへっ……。ジャジャーン!こっちも見てよ!」
バックから取り出した アタシ用のドレスもあきちゃんに見せてあげる。
「ええっ? こんのさん用も できたんですか? スゴいじゃないですか!」
「あきちゃんがさ 一緒に着たいって言ってくれてたからさ~。頑張って今日に間に合わせたの。ちょっとビックリしたでしょ? まあ クレリックシャツの方は ぜんぜん 間に合ってなくて 裁断もまだなんだけど…」
「ううん。エプロンドレスだけでも ホント嬉しいです。スッゴくビックリしましたし…。ありがとうございます。……でも 無理はやめてくださいね? こないだから 疲れた顔してるから 心配してるんですよ?」
とっても喜んだ顔だったけど 後半は表情が曇った。
本気で心配してくれてるみたい。
申し訳ない気持ちになる。
確かに ここ2~3週間は 寝る間を惜しんでって感じだったし ご飯やらストレッチやら 色々削って 生活リズムが崩れている。
ちょっと疲れ気味なのは 自分でも気付いては いる…。
ただ その原因は エプロンドレスだけのせいじゃなくて あきちゃんのことで 悩んでるのも 大きいワケで…。
………。
……。
…。
「これ 着てみても いいですか?」
「うん。一緒にお揃いコーデしよ」
「じゃあ こんのさんが着替えてる間に 隣で着替えてきますね」
……やっぱ な。
あきちゃんは 着替えを見られるのが 嫌なのか あるいは あたしの着替えを見るのを避けてるのか 別の部屋で着替えるって言い出した。
でも それじゃ 今日のあたしの目標は 達成されない。
今日のあたしの目標は『裸のお付き合い作戦 その1:同じ部屋で着替える』だ。
そのために ちょっとだけ 組み立てを考えてきた。
「あきちゃん ゴメン。実はさ そのエプロンドレス まだ未完成なんだ。ちゃんと採寸せずに作っちゃったから ウエストのとこ まだ フィッティングできてないんだ。だから 着替えるの手伝うよ」
実際 エプロンドレスなんだし ちょっと緩めに作ってもよかった。
だけど やっぱり あきちゃんのイメージラフに近づけたい。
なのに 段取り悪くて 採寸の時間は 取れず…。
なんかバタバタして オタついた感じ。
バレーで言ったら 強烈なスパイクで 陣形崩されたみたいな…。
でも そこからが セッターの腕の見せ所。
慌てず いい位置でトス上げれば 決めきれなくても立て直す時間は 稼げる。
「ねぇ。着てみて?」
どうしても 嫌だってゆー理由がなければ ここまで言ったら 着替えてくれるハズ。
もし どうしても着替えたくない理由(中学のときの知り合いの子は 脚にアザがあって水泳の授業が ホント辛かったらしい)が あるんだったら 寄り添ってあげたいし…。
あきちゃんは ちょっと顔 赤くしてたけど トレーナーを脱ぎ始める。
……よかった。
ちょっと ホッとする。
もし どうしても見られたくない秘密とかがあるんだったら 凄くイジワルなこと言ってることになるから ドキドキだったけど そこまでじゃないみたい。
そして 別のドキドキが始まる。
……初めて見る あきちゃんの下着姿。
今まで 散々 あたしには レズっ気は 無いって言ってきた。
だけど あれは お詫びして訂正する。
あたしには どうやら レズっ気がある。
あきちゃん限定で。
……いや。
それも怪しくなってきてる。
更衣室で他の子の着替えを見て これがもし あきちゃんだったらとか考えて ドキドキしちゃうし…。
とりあえず あきちゃんの下着姿をチェックする。
何の気なしに 眺めてるフリしつつ。
薄いピンクのブラに ベージュのキャミ。
シンプルなデザインで つるペタ気味のあきちゃんによく似合ってる。
……言わないけど。
あきちゃんが ジーンズに手をかけて 下までおろしたタイミングで 今日 2回目のキラートス。
いかにも 今 思いついたって感じで言うけど 実は これは 考え抜いた一言。
「あっ そーだ。あきちゃん 着替えるの ちょっと待って。ちょうどいいし クレリック用に採寸させてよ。ゴメン。ちょっと寒いかもだけど そのカッコで 少しだけ待ってて……」
善しにつけ悪しきにつけ セッターやるようになってから 色々な場面で 組み立てを考えるようになった。
クレリックシャツが できてないのも 時間が ぜんぜん 足りてないからで イマイチなことだけど それだって 材料になる。
……自分の下心満たすための。
「あ。……はい」
スゴく小さな声だったけど あきちゃんが オッケーの返事をくれる。
急いで裁縫箱から 巻き尺を取り出し 採寸を始める。
これで しばらく 下着姿の あきちゃんを堪能できる。
……至近距離で。
あきちゃんみたく 鼻血 吹いちゃうかも。
興奮し過ぎないように 気を付けなきゃ……。
………。
……。
…。
to be continued in “part Aki 10/17 am 11:17”
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