第4章 夏の夜の夢
part Kon 7/24 am 2:23
ドキンッと大きく心臓が脈打ち あたしは目を覚ました。
100mダッシュしたあとみたいに 胸がバクバク鳴っていた。
呼吸も荒い…。
「……なんつー夢を見るんだ。あたしは…」
声を出して 呼吸を整え 心を落ち着かせる。
股間にオチンチンの生えたあきちゃんに 虐められて欲情し 最後は処女奪われる とか変態すぎる…。
どーしちゃったんだ あたし…。
ショーツはぐっしょりと濡れ 膣口には指よりずっと太くて固いものが押し込まれた生々しい感触が残っていた。
……別に 血がついていたわけじゃないし 部屋に誰かいたわけでもない。
確かに夢だったんだろうけど あまりにリアルな感触に怖くなる…。
汚れた下着を換え 台所に下りて水をコップ一杯飲んだ。
時計を見ると 夜中の2時過ぎだった。
部屋に戻り エアコンを入れ直し もう一度寝ようとするけど まだ少し鼓動が速い。
「やっぱ あたし あきちゃんのこと好きなのかな?」
声に出して自分に聞いてみる。
夢とはいえ オチンチンの生えたあきちゃんに 好きって告白して 処女まで捧げてしまった…。
今まで 考えてもみなかったけど 夢の中で『あきちゃんが好き。愛してる』って言った言葉は 心の奥の方から 出てきたもののようだった。
「やっぱり あたし あきちゃんのこと好きなんだな…」
声に出して言ってみる。
恥ずかしさも照れもなく どちらかと言えば 誇らしい気さえした。
あたしは あきちゃんが好きなんだ。
振り返ってみると 納得いくことも多かった。
ここ4ヶ月 あたしには 好きな男の子がいなかった。
なんていうか あたしには これまで好きな男の子がいるっていうのが当たり前だった。
それは アイドルだったり 隣のクラスの誰某だったり色々だったけど 好きな男の子が心の中にいるっていうのが小学校高学年くらいからは あたしにとって普通のことだった。
4月に恋をしないって決めたのも 卒業した男バレの柏木先輩を忘れるため。
でも 実際は 1ヵ月も保たないだろうって 心の隅っこでは 思ってた。
それが今日 あきちゃんと話すまで 好きな男の子がいなかったってことさえ考えなかった。
代わりに いつも考えてたのは あきちゃんのことだった。
ちょっとした隙間の時間に あきちゃん今なにしてるのかな?とか 今 聞いた面白い話をあきちゃんにしたら どんな顔するかな?とか 気がついたらあきちゃんのこと考えてた。
「女の子同士…なんだよね…」
当たり前のことを もう一度 声に出して確かめる。
今まで女の子のことを好きになったことは 一度もなかった。
友だちと恋人ごっこをして 愛の言葉を囁いたり(たいてい あたしが男役だった)したことは あるけど もちろん遊びだった。
中学のころ 後輩の子から かなりマジなラブレターをもらったときは ドン引きした。
周りからは男女とか王子様とか 色々言われるけど 自分の中では 首尾一貫して あたしは 女の子だった。
古臭いって言われるかもしれないけど あたしは 愛するより 愛される女の子っていうのが しっくりくるんだ。
だから あきちゃんのこと 本気で好きになったって思えるけど レズに目覚めたとか そんなんじゃぜんぜん なかった。
あたしは なんにも変わっていない。
なんてゆーか 今まで 好きな男の子がいた心の場所に あきちゃんが自然に収まった感じ。
不思議なくらい自然に あきちゃんが好きなんだ。
なんか あきちゃんって〈女の子〉って感じがしないんだよね…。
なんでだろう?
お嬢様だからかな?
女の子同士の共感と嫉妬の綯い交ぜになった〈ドロドロした仲良し〉感が彼女には ぜんぜん なかった。
あたしは よく他の子にサバサバしてるって言われるけど そんなことは 全く 無い。
中身は ドロドロだ…。
あたしが 友だちにカワイイっていうのは あたしもカワイイって褒めて欲しいから。
誰かがカワイイって褒められてるのをみると ドロッとしたモヤモヤが滲み出てくる。
それをお互いに褒めあって そのモヤモヤをお互いに薄め合う。
鬱陶しくはあるけど それがあたしの棲んでる女の子の世界だ…。
でも あきちゃんからは そんな女の子のドロドロ感が漂ってこない。
あきちゃんは あたしのことを美人だとか綺麗だとか スゴく褒めてくれる。
可愛い子に褒められて悪い気はしないけど たいてい可愛い子が褒めてくるときは 『でもアタシの方がもっと可愛いけどね』みたいな感じでマウント取りに来てる気がして ムカツクことも多い。
だけど あきちゃんは そういうわけじゃ無いみたいだった。
逆に あたしが あきちゃんの容姿を褒めると嬉しそうにお礼は言うけど どこか他人事みたいなんだ。
なんか 自分の作品を褒めてもらってる絵描きさんみたいな感じ。
見た目はスゴく女の子らしいのに オーラってゆーか周りの空気感が女の子らしくないんだよね。
でも魂の抜けた 作り物めいたお姫様ってワケでも無い。
あたしがピンチのとき 颯爽と現れて あたしを助けてくれたんだ。
あのとき あきちゃんは 本気で怒ってた。
ホント カッコ良かった。
「あたしにとっては お姫様じゃなくて王子様だな…」
王子様…。
自分で呟いて妙に納得する。
可憐で情熱的で ちょっと浮き世離れした感じ…。
おとぎ話の王子様。
見た目は ちょっと可愛い過ぎるかもだけど。
王子様だったら 女のあたしが恋に落ちても仕方がない…。
叶わぬ恋かもしれないけど…。
明日は王子様との初めての〈デート〉…。
なに着ていこうかな…?
可愛いカッコしていったら あきちゃん褒めてくれるかな…?
でも そんな いい服持ってないしな…。
どーしよう…。
ダメだ…。
眠くなってきた……。
………。
……。
…。
to be continued in “part Aki 7/24 am 2:23”
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