第2章 デッサン デッサン!
part Kon 5/16 pm 5:07
「…こんのさん? あの アタシに 見せたいものって?」
……おっと 考え事してる場合じゃ無かった。現実のあきちゃんが あたしの部屋にいるんだった。
「ゴメン ゴメン。ちょっとボーッとしちゃった。いや ホント大したもんじゃなくて 悪いんだけど…。これ 見て欲しくて……」
押し入れを開けて スケッチブックを取り出す。
最近は ノートじゃなくて 大判のスケッチブックに ラフ描くことが多い。
細かいとこまで描き込めるし メモも色々書き込めるし使い勝手がいい気がする。
「これなんだけど……」
ページを開いて あきちゃんに手渡す。
褒めてくれるかな?
ボロクソに言われたらどうしよう?
けっこうドキドキする…。
「わぁ… 可愛いエプロンドレス……。これって こんのさんが 描いたんですか?」
あたしのラフを見た瞬間 あきちゃんの顔が パッと輝いた。
それに合わせて あたしの心臓もドキンって 大きく脈打った。
…そして 自分でも びっくりするほど 心に安心感が広がった。
なんだか涙が出そうになる。
…何でだ?
「…うん。自分でも けっこう気に入ったから あきちゃんにも 見て欲しくて…」
あきちゃん ホントに気に入ってくれたのか ラフの色々細かいとこまで 熱心に見てくれている。
「……凄く可愛いです。腰紐のところのサッシュの布が ひらひらしてる感じが 大人っぽいけど 可愛くて素敵…。大人可愛いってヤツですね。ここの胸のところは レースですか?」
「うん そう。コットンレースにしたら カワイイし 普段使いにも いいかなぁって思ってさ」
「あー これって 前 こんのさんが言ってた課題のラフなんだ…。2年生は 普段着を作るってヤツですね?」
あきちゃんは あたしが前に チラッとだけ話したことでも ちゃ~んと覚えてくれている。
……ただ 今回は ちょっと違う。
「うん。課題で アイデアラフ出さないといけなくて 描いてたらさ…」
「やっぱり!じゃあ このエプロンドレス 本当に作るんですね? 凄いです!」
……いや そうじゃないんだ。
そうじゃ なくて…。
「ん? …あれ? よく見たら このラフの女の子って ツインテールにしてます? ……もしかして これって アタシ用なんですか?」
あれっ?
あたしが 言うより前に あきちゃんが 気づいちゃったよ…。
「…うん。ラフ描いてるときに ふっと あきちゃんのこと思い出したらさ なんかアイデア湧いてきて 一気に描けちゃったんだよね…。迷惑だったかな?」
「いいえ。そんな 迷惑だなんて…。でも 課題の服って こんのさん用じゃなくていいんですか?」
……ううっ。
やっぱ あきちゃんは 頭の回転が速い。
このラフの最大の問題点にサッと切り込んでくる。
「……そう。課題の服のモデルは 自分でしなきゃいけないから このエプロンドレスは 課題用じゃないんだ。でも あきちゃんのイメージで描いてたら けっこういいのが描けたから あきちゃんに見てもらいたくってさ。あきちゃん 気に入ってくれたんなら 時間見繕って 作ってみたいなぁって…」
「ホントですか? ちょっと楽しみです!……でも こんのさん忙しいのに ムリしないでくださいね? もし 手伝えることあったら 何でも言ってください」
あきちゃんと一緒にエプロンドレス作りか…。
なんか ちょっと楽しいかも。
でも ホントに時間無いしなぁ。
夏休みも部活の合宿とかあるし…。
「……あの このエプロンドレス 学校用じゃないってことは こんのさん用のラフも あるってことですよね? そっちも ぜひ見たいです!」
「えっ? いや あの… あるには あるんだけど ホントつまんないよ?」
提出用は 謙遜でも何でもなく マジでつまんない…。
……はっきり言って駄作だ。
エプロンドレスに気合い入れ過ぎて 半分 やっつけ仕事みたいに なっちゃったし。
「えー もったいぶらないで 見せてくださいよ~。このスケッチブックに 描いたんですか?」
そう言いながら あきちゃんは スケッチブックの 他のページをめくろうとする。
「あーっ ちょっと待って!ちゃんと見せるから」
あきちゃんから スケッチブックを奪い返すと 提出用のラフのページを開いて渡す。
このスケッチブックは 夢ノートだから 趣味 丸出しのこっぱずかしいヤツも 描いてある。さすがに それを見られる訳にはいかない。
「はい!これが 提出用。ほっ ほかのページは あたしのプライベートゾーンだから 見ちゃダメ」
「プライベートゾーン…? わ わかりました。絶対 見ないようにします…」
あきちゃんは 心なしか 顔を赤くして ゴニョゴニョとお詫びを言っている。
あたし 何か変なこと言ったんだろうか?
あきちゃんは あたしから 目を逸らすように スケッチブックに目を落として 提出用のラフを 見てくれる。
そして なんか怪訝そうな表情を 浮かべた。
そのまま 直ぐに顔を上げる。
その顔は いつもの 天使の笑顔に戻ってたけど 口から出た言葉は 辛辣だった。
「こんのさん このラフ 提出するんですか?」
「えっ… その つもりだけど…」
「止めた方がいいです。このオーバーオールのラフ 可愛らしいですけど 魂 入って無いです。
〈絶対に〉を強調して あきちゃんは言った。
あきちゃんが こんなにキッパリ言い切るのを 初めて聞いた気がする。
「そんなダメかな…?」
「ダメですね」
……ううっ。
情け容赦無くバッサリ。
「エプロンドレスと線が 全然 違いますもん。なんか 凄く迷ってて 自信無い感じ…。いつもこんな線ですか? 違いますよね?」
そう言うと あきちゃんは スケッチブックの他のページをめくり始める。
『そこはダメ。見ないで』って言おうとしたけど あきちゃんの真剣な表情に 気圧されて 口を開き損ねる。
「ほらっ! この 男物のコートみたいなヤツ この線カッコイイです。…こっちのアイドルさんの衣装みたいのも 素敵。それから…… この ヒラヒラのお花のドレスも 細かいところまで 気持ちこもってて 凄く いい感じです…」
誰にも見せたことの無い ラフを見られちゃったのは スゴく恥ずかしかったけど あたしが 自信持ってるラフを あきちゃんが パッと 見抜いてくれるのには 鳥肌が立つ。
「アタシ 服作りのことは 分かんないですけど 絵を描くとき アイデアスケッチが死んでて 後から いい作品になるなんて
あきちゃんは スケッチブックをパラパラめくりながら 言葉を続ける。
「土台がダメなのに塗り重ねたら ゴテゴテして小手先だけの作品になっちゃうじゃないですか。この課題って 秋の発表会まで 時間かけて 仕上げていくんですよね? そんなことに なったら 作品も こんのさんも 可哀想です」
確かに これから半年 この駄作と付き合うことになると思うと けっこう ツライかも…。
「ってゆーか 何で このエプロンドレス 提出用にしないんですか? 凄く可愛いのに…。アタシに見せたってことは こんのさんも 自信作って思ってるんですよね?」
あきちゃんは スケッチブックをエプロンドレスのページに戻しながら 顔を上げて 不思議そうに聞いてきた。
「えっ? だって それ あきちゃんのイメージで描いたヤツだし。あたしみたいな デカ女が そんなの着たら変でしょ?」
「えー そうですか? こんのさん 抜群のスタイルだし 顔立ちも めっちゃ美人さんで 綺麗だから 何着ても 似合うと思いますけど」
相変わらず あきちゃんは あたしのこと これでもかっていうほど 褒めてくれる。
「でっ でもさ~ 174㎝で レースついたエプロンドレスは 無いっしょ」
「そんなことないと思いますよ。このラフ 147㎝のアタシのイメージですよね? アタシより 30㎝高い こんのさんでも 絶対いい感じですって。このエプロンドレス 大人可愛いデザインだし… いけると思いますよ?」
30㎝じゃなく27㎝って 訂正したくなったけど 我慢する。
いや 大した差じゃないのは 分かってるんだ。
でも 30㎝差と27㎝差じゃ 聞こえ方が 違う気がするんだよね…。
「まぁ 丈とか 少し直した方が バランスは いいかも… ですかね? ちょっと 描いてみたいんで スケッチブックの紙 1枚 もらいますね」
「え? うん… いいけど…?」
「ありがとうございます。じゃあ ちょっと デッサンするんで そのへんに 自然な感じで 立ってもらっていいですか?」
なんだか よく分からないけど あきちゃんの指示通りに 部屋の入り口辺りに立つ。
「もう少し 肩の力抜いて 顔 正面向けてもらって いいですか?」
色々とポーズに 注文つけながら あきちゃんは 今度は 断りも無く ペン立てから 鉛筆を 取ると スケッチブックを抱えて 鉛筆を走らせ始める。
あきちゃんは モデルのあたしと スケッチブックを交互に見比べながら 集中した様子で 鉛筆を動かしている。
「すぐ 描き終わるんで 首の向き変えないで!」
何 描いてるのか 確かめたくて 覗き込もうとすると 鋭い声が飛んできた。
その表情は真剣 そのもので いつもの にこにこ カワイイあきちゃんとは 別物。
大人っぽくって綺麗だった。
綺麗…? なんか違うか…。
集中力が研ぎ澄まされてる感じだし
あきちゃん カッコイイ。
前に チラッと感じた 素のあきちゃんの感じだった。
少なくとも いつもの天使な お嬢様じゃあ なかった。
スカートなのに あぐらかいて スケッチブック抱え込んでるし…。
周りのこと 全く気にしないで デッサンにのめり込んでる。
集中して 鉛筆を走らせるあきちゃんの表情は 本当にカッコイイ。
…でも スカートで あぐらは 無いな…。
ヤバいよね 女子としてはさ…。
スカートの丈が長いから さすがにパンツは 見えないけど。
いったん 気になり出すと あきちゃんのオマタのところに 視線がいってしまって 妙にソワソワする。
あたし 女の子のオマタに興味は 無いハズなんだけど。
そう。
昨夜のオナニーのことを 思い出してしまう。
ちょうど あきちゃんが座ってる辺りが あたしが いつも 寝てる場所になる。
その場所で あきちゃんが 女の子の場所を おっ広げている。
カッーっと 身体が 熱くなる。
ヤバい。
あたしに レズっ気は 無いハズ…。
落ち着け…。
深呼吸して 落ち着かなきゃ…。
あきちゃん こっち見てるのに 気づかれちゃう。
あきちゃんに 見られてる。
そう思った瞬間 下腹部が疼くのがわかる。
昨夜は あきちゃんに オナニーしてるとこ ガン見される妄想で ガチイキしたんだった…。
あきちゃんの 視線を意識すればするほど 身体が熱くなっていく…。
これじゃ マジで淫乱女だ。
なんとか 気を逸らさなきゃ…。
そうだ バレーだ。
バレーボールのこと 考えるんだ……。
………。
……。
…。
to be continued in “part Aki 5/16 pm 5:11”
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