part Kon 4/22 am 6:00
今日は
そう心に固く誓って 朝6時には あたしは 桜橋の改札口の前に 立っていた。
あの後 大泣きするあたしを あの聖心の女の子は 藤浜の駅で降ろしてくれて しばらく 介抱してくれていた。
彼女が助けてくれたことが ホントに嬉しかったし ちゃんとお礼が言いたかった。
だけど 痴漢に対して何もできなかった自分が 情けなくって 悔しくて どうしても泣きやむことができなかったんだ。
その場では結局『ゴメンね。ゴメンね』と同じ言葉を繰り返すことしかできなかった。
あんまり大泣きするあたしを見かねて 駅員さんが学校に連絡をしてくれた。
『学校の先生が来るから大丈夫よ』って 駅員さんに諭されて あの子も自分の学校へと向かった。
……きっと あたしのせいで 彼女遅刻してるよね…。
ホントに最初から最後まで迷惑かけ通しだな……あたし。
そのことも ちゃんと謝らなきゃ。
それと このハンカチ…。
さすがのあたしも 担任の先生が駅につく頃には 落ち着きを取り戻していた。
そして 気がつくと握りしめていたのが このハンカチだった。
桜草のモチーフで縁取りされた うすピンクのハンカチ。
可憐で女の子らしいデザインで あたしの実用一点張りのタオルハンカチと比べると 同じハンカチと呼ぶのが恥ずかしいほど。
大泣きしていたときに 彼女に貸してもらったまま 握りしめていたらしい…。
迎えにきてくれた先生と一緒に登校した。
先生は 保健室で一度休んだらって勧めてくれたけど あたしは 断って 1限の授業を受けた。
授業を受けたり 友だちと話したりしてるうちに だんだんいつもの自分に戻っていってるのがわかった。
放課後 朝練 出られなかった分を取り返そうと 入念にストレッチしてたら 校内放送で呼び出された。
ママが 車で迎えに来ていた。
あたしが痴漢の被害にあったっていうことは 学校からの連絡で知り 警察からも電話があったらしい。
で その後 犯人の弁護士っていう人から 夕方 示談に行きたいっていう連絡があったから ママが迎えにきたってことらしかった。
帰りの車の中で ママと色々話したけど ママは かなり怒っていた。
家に着くと パパは もっと怒っていた。
普段は 家族思いで 優しいパパとママだけど 二人とも元ヤンキーなので 怒ってるとホントにガラが悪くて 嫌になる。
あたしのこと想って怒ってくれてるのは わかるけど…。
夕方 弁護士だっていうおじさんがやってきて 色々 話していった。
男は 駅員室に連れて行かれたあと その場で警察に逮捕されたらしい。
それで 今は まだ 拘置所にいて 取り調べを受けているんだそうだ。
本人は すごく反省しているとか 初犯だからとか 弁護士のおじさんは 色々言ってたけど 実際 どーでもよくなってきて 後のことは 親に任せて あたしは 自分の部屋へ上がった。
桜草のハンカチを丁寧に手洗いする。
ゆっくりとアイロンをかけ きちんとたたみ 小綺麗な紙の手提げに入れる。
今年のバレンタインに 友だちからもらったやつだ。
カワイイから取っておいたのが役立つときがきた。
紙袋を通学鞄の中に入れてから 今朝のことを思い出した。
痴漢されたこと自体は 思い出すのも嫌だったけど いざという時 何にもできなかったことは 反省しなきゃなんない。
自分の身は自分で守る そんなこと当たり前にできるって思ってたけど そうじゃなかった…。
それにしても あの聖心の女の子 ホントにカッコ良かった。
あの時 彼女が来てくれてなかったらって考えるただけで 本当に少し身体が震えた。
あんなにちっちゃいのに 勇気があってカッコいい。
しかも 優しいし…。
紙袋を入れた鞄を見ながら考える。
なんか女の子だけど 惚れちゃうよねぇ…。
その上 メッチャ可愛いし…。
今朝 ホームで見た 彼女の黄金色の髪を思い出す。
あんないい子で 可愛いんだから きっと彼氏さんとかいるんだろうな…。
いいなぁ 彼氏さん。
あんな娘 連れて歩けたら 気分いいだろうな。
羨ましいな…。
……なんで あたしが 彼氏視点なんだよ。
あたし 女だし。
ってゆーか。
そもそも 彼女に彼氏がいようが いなかろうが関係ない。
彼女は あたしの恩人で 明日の朝 必ず彼女に会って 助けてもらったお礼と ハンカチのお礼をする。
それだけの話。
to be continued in “part Kon 4/22 am 6:15”
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