第23話 翌朝の出来事
とても嫌な夢を見たのだと思います。というのも、翌朝起きたときには、何も覚えていなかったからです。
ただ、とても嫌なことがあったような、後味の悪さに似たものを感じていました。その事に、どうも昨日のネコが、関わっている気がしてならなかったのです。
昨夜、わたしの隣にいた女の子の姿が、今朝起きると、姿が見えなくなっていました。布団は乱れているので、この場に寝ていたことに、間違いはなさそうです。
わたしたちは、今夜も昨日と同じ露店で、仕事をすることになっていましたが、夜までは自由な時間でした。
なので、女の子の姿が見当たらなかったからといって、気にする必要はないのかもしれません。でも、頭でわかっているのに、なんだか気になるのでした。
「面倒ごとに、巻き込まれていなければ良いのだけど」
わたしは身なりを整えると、女の子を探しに外へ出ていきました。
寮を出たすぐのところで、女の子が歩いているのを、みつけることが出来ました。
わたしは後を追いかけて、少し苛立ちながら声を掛けたのです。
「どうしたの? 何も言わないで、1人ででかけるなんて」
「ごめん。なんか、きのうの夜から、ずっとあの子ネコがきになっちゃって」
わたしの頭の中に浮かんだのは、黒い子ネコでした。
「子ネコって……」
「きのうの白い子ネコ。また会えるかな」
「……白い子ネコ」
考えてみたら、女の子は黒い子ネコの存在自体、知らないのです。
わたしは言いました。
「ちょっと、昨日の露店の場所まで行ってみましょうか。もしかしたら、また会えるかもしれないし」
本音を言うと、黒い子ネコの事が気になっていたのだけれど、それは言いませんでした。言ってもしかたがないし、言うとそれが『悪い意味で』何かが現実になりそうな予感があったから。
「そうね」
と女の子は答えます。その不安げな表情や、言葉の少なさから、同じ事を考えているのが伝わるのでした。
昨日、露店をだしていた場所に、白い子ネコの姿はありませんでした。
「きのうは、こっちのほうへ行ったんだけど」
女の子はそう言いながら、大通りへ歩いて行きました。
わたしも、後を追っていこうと歩きはじめた、まさにその時でした。
……ナォ
鳴き声が聞こえてくるではありませんか。
微かな鳴き声ですが、あの黒い子ネコに間違いはないようです。
わたしは女の子を呼び止めませんでした。なぜかと聞かれたら、返答に困ってしまうのですが。なぜか、それが当然のように感じたのです。
……ナァ
声は、昨夜より小さくなっていました。
一晩中、ずっと鳴き続けていたからでしょうか?
わたしは、昨夜と同じお寺の、賽銭箱の横に、黒い子ネコを見つけました。
手のひらほどしかない大きさの子ネコが、鳴き続けています。
その声には、鬼気迫るものが感じられました。
尋常ではありません。
わたしはネコを抱え上げました。
「いったい、どうしたの?」
朝日の差す中で、黒い子ネコの顔をのぞき見た直後、わたしは『異常』の正体に気がついたのです。
子ネコの左眼か無いことに!
左眼があるはずの場所には、グレーの何かが詰まっていました。スポンジみたいな何かが。
もう一度じっくりと見て、それか何かを理解しました。
子ネコの左眼のあった所に詰まっていたのは、数えきれないウジだったのです。
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