第17話 0703村

 0703村に着いたのは、もう夕方近くになってからでした。

 この村の入口には『ようこそ0703村へ』と書いた立て札があるだけで、他には何もありません。出入りも自由なようです。

「叔母さんは、農場を持っているんです。それから畑も。たしか……こっち」

 ヒンはそう言って、先になって歩きました。弟のコンは、道を知らないようで、不安そうに歩いています。

 やけに道があれていて、ボコボコと波打ったようになっていました。それに、なぜかガレキが山のように積まれています。

 それも1つや2つではなく、かなりの数のようでした。


 ヒンは、空き地の前まで来ると、そこで立ちどまりました。

 女の子は、顔をしかめます。

「ここを通りぬけるの? なんか、ぬかるんでるから、ここは通りたくないんですケド」

 ヒンは首を横に振りました。

「違うんです。ここに叔母さんの農場があったはずなんだけど……」

 そうヒンは言いましたが、どう見ても荒れた土地でしかありません。雑草も生え放題でしたし、柵があるにはありましたが、ずいぶん前に壊れて、そのまま放置されていたようです。

 ガレキの積まれたところは、もしかしたら家畜の小屋だったのでしょうか?

「こんなことって……」

 ヒンは、ぼう然と荒れた広い土地を見ています。

「ねぇ、兄ちゃん! リコおばさんのとこへ、はやくいこうよ!!」

 そう弟のに言われて、ヒンは我に返ったようでした。

「リコ叔母さんは、ここに住んでいて……あっ。もう一カ所あった」

 ヒンはそう言うなり、走り出しました。

 わたしたちのことは、もう忘れているようです。


 荒れた空き地から、1㎞くらい離れていたでしょうか。

 それほど広いとはいえない畑の手前に、丸太小屋のような建物がありました。というか、畑と丸太の建物しかない場所というべきでしょうか。

「ここが、あなたのオバさんの家なの?」

 女の子が、弟のコンに聞きます。

「しらない。ボク、きたことないから」

「ここはリコ叔母さんの、もう一つの家なんです。でも、普段は使用人が使っていて、叔母さんが来ることはないんだけど……」

 小屋のエントツから、煙が上がっています。誰かいることに、間違いはないでしょう。

 ヒンは、ためらいがちに丸太の小屋へと近づいていきました。

 わたしたち3人も続きます。

 ヒンは扉の前に立つと、緊張した面もちで小屋のドアをたたきました。

「誰だい! こっちは忙しいんだよ!」

 ドアが乱暴に開かれて、ヒンの頭に激しくぶつかりました。

 ヒンはよろめいて、後ろに尻もちをつきます。

「なんだい、あんたたちは!」

 ドアの奥から姿を現したのは、丸太のような女の人でした。

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