第13話 一番重い罪

「この村には、たった一つのルールがある。それは『ウソをつかない』ことだ」

 村長は歩きながら、そう言いました。

 とても、おだやかな声です。声がよく響くと感じました。でも、すぐに別のことに気がつきます。

 声が響くのではなく、辺りが静かすぎたのです。

 まだ、暗くなって間もないというのに、人の姿が見当たりませんでした。

 一人もです。

 それぞれの家の中から、明かりがもれてはいました。

 わたしたちを見張っていた人がいたのですから、誰も外へ出ないように、村人に言っているのかもしれません。

 村長の指示だとしたら、わたしたちはどこへ連れて行かれるのでしよう。

「この村にも、病院はあるんだが、たぶん都会と比べれば、技術も道具も劣っている」

 再び村長は話し出しました。

「それでも、出来るだけのことはしているし、時には街へ行くこともすすめてはいた」

 村長は、そこまで言うと立ち止まりました。そして、すぐ近くの建物に、右手を広げて示したのです。

 村長の家より、少し大きいくらいの建物でした。

 建物に明かりは点いていません。

「ここが村で唯一の病院。いや、診療所というべきか。ここで『マコト』の母親は入院することになった」

「病状は、悪かったんですか?」

「もう、手のほどこしようがなかったよ。そして、マコトは母親思いだった。父親が早くに亡くなったこともあるのだろう。そうでなければ……」

 いままでと違って歯切れが良くありません。

 村長は、わざとらしく咳払いをしてから、話を続けます。

「この村で『ウソをつかない』というルールが出来たのは、いまから100年以上前になるらしい。ウソは人を傷つけ、不幸にするという考えからだ」

「でも、ウソをついたからといって、必ずしも重い罰をあたえる必要があるとは思えません」

 私の話しに、村長は力強くうなづいたのでした。

「同意見だ。実際、ウソをつく『相手』や『内容』によって、罰の内容は違うことになっている」

 わたしは、村の外の立て札を思いだしました。


『この男、ウソをつきし者なり

   1.生死に関するウソ

   2.親に対するウソ

 以上2件のウソにより死罪とする』


「一番重い罪のウソって……」

「『生死に関するウソ』と『親に対するウソ』だ。マコトは、この二つをやってしまった」

 と、重々しい声で村長は言いました。

 村長は再び歩き出します。

 村長の進む方向に、もう建物らしきものはありません。ただ、何かが地面から生えているように見えました。

 長方形の石? その一帯を、数十の明かりが囲んでいます。

「お墓?」

そうです。ここは墓地で、村人がランプを片手に、集まっていたのでした。

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