第5話 街の門

 町をしばらく進むと、道は広くなっていき、建物も新しく、そして一定の間隔で並ぶようになりました。

『町』から『街』に変わったようです。


 女の子は街に出ると不意に立ち止まり、わたしを見て言いました。

「あたしは、おかあさんと話をしにいくけど、はどうする?」

 とてもヘンテコな文ですね。でも、わたしにはわかりました。

 ワタシ=わたし

 つまり『あたしは、おかあさんと話をしにいくけど、はどうする?』となります。

「今、わたしに目的はないし、迷惑じゃなかったら、ついていって良いかしら」

「いいけど、とってもとっても遠いよ」

 女の子は前をむいたまま、いいました。

「とっても遠い? そんなに遠いの?」

「そりゃあ、それなりにから」

 と、また女の子は変な言いかたをします。

 聞きたいことは、いつぱいありましたが、答えてくれそうにないので、諦めました。


 わたしたちは、石ダタミの大きな一本道を、進んでいきました。

 道の左右は、鏡でうつされたように、まったく同じ間隔で、建物と小道が並んでいます。都会なので、似た風景が多いのでしょうか。

 建物はレンガづくりで、5階のものもあれば、なかには6階建てのものまであります。

 乗合馬車や荷馬車とすれ違うなか、何台かのクルマをみかけました。

「ちかごろお金持ちのあいだで、クルマがハヤリなんだって。あれで、家が買えるくらいするらしいよ」

 女の子は、あきれたように言いました。

 実のところ、わたしはあまりジックリと、クルマを見ていません。

 クルマを見ると、なぜだか心臓がドキドキするのです。それも、良いドキドキではない、ドキドキでした。


 道を進みつづけると、大きな門が見えてきました。

 門は、閉じようとしています。そのすき間から、クルマが遠ざかってゆくのが見えました。

 真っ白なクルマです。

「まって! あたしたちも外にでるから」

 女の子は言いましたが、門はとじてしまいました。

 酒ビンをもった門番の男が、笑いながらこちらを見ています。あたりには、お酒のにおいがプンプンしていました。

「門をあけて!」

 女の子は、すこしイライラしたように言いました。

「じょうだんじゃない。外に出るのは、変わりものか、金持ちだけだ。女の子を出すわけにはいかないな」

「なんでよ」

「外へ出たら、なにがあるかわからない。化け物や、盗賊がでて、大変なめにあうかもしれないんだぞ」

 門番は、いいながらお酒をのみました。

 ふしぎに思って、わたしは聞いてみました。

「お金持ちは、なんで通れるんですか?」

 すると門番は、当たり前のように言ったのです。

「金があったら、たいていどうにかなるだろ?」

 女の子は、それを聞くと、ドンドンと足をふみならしながら言いました。

「あけて!」

「聞いてなかったのか?」

 門番の言葉に、女の子は大きく手を動かしながらいいました。

「外へでたら、なにがあるかわからない! つまり、カワイイ生きものや、ステキな出会いがあって、ハッピーなめにあうかもしれないのよね!」

 門番は肩をすくめると、右手を上げました。それにあわせて門は開いていきます。

「ありがとう。ステキなモノを見つけたら、プレゼントしにきてあげるわ」

 女の子は、皮肉たっぷり門番にいいました。

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