第10話 高田恵梨の独白(前編)
久遠ちゃんみたいな子が来てくれておばさん嬉しいわ〜ユニちゃん目当ての来客なんて久々だもの!!
ユニちゃんは小さな頃から引っ込み思案でね、普通の子供が学校で習う社交性ってものを、あの子は上手く身につけられなかったみたい。
そのことについては何とも思ってないわ。
人間には向き不向きがそれぞれあって、たまたまあの子が苦手な分野がそれだっただけだもの。ちょっぴりお父さんに似ちゃったのね。
それにね、ユニちゃんにはいっぱい良いところがあるのよ!
まずとっっっっっっても可愛いの!!
親バカだと思うじゃない?でもね、親の目線抜きでも容姿はいい方だと思うわ。
本当はもう少しオシャレに気を使ってくれたらいいのになあっておばさん思うんだけど……ねえ、久遠ちゃんもそう思わない?
あ、久遠ちゃんはユニちゃんのことみたことなかったわね。何だかずっと前から久遠ちゃんはユニちゃんのお友達だったように思えちゃうの……不思議ねえ。
えへへ……脱線しちゃった。おばさんいつもそうなの。この前も高校の同級生と会った時にね
〜以下20分ほど本筋に関係ない話〜
だったのよ!もう、困っちゃうわ。
……あ、ごめんね〜また私ったら。
えっと……確か、ユニちゃんの昔のことについてだったかしら。
そうね……やっぱりユニちゃんはあんまりお友達ができなかったから、自然に1人で遊ぶようになっていったの。
最初は本を読んでいたわ。
絵本から始まって、小説、図鑑、伝記、写真集、学習書って感じであんまりジャンルに固執はしていなかったと思う。私やお父さんもユニちゃんへ適当に買い与えていたから、あんまり気にしていなかったの。おかげで勉強は得意だったから、成績はすっごく良かったわ……ま、体育はちょっとね♡
ユニちゃんは中学生になって見た目はますます女の子らしくなったわ。
そろそろ好きな男の子でもできたかな〜ってワクワクしてたけど、ユニちゃんに聞いても、あとは担任の先生に聞いてもそんな様子はなかったみたいね。残念。
たぶん、あの子は他人に興味がないんだと思うの。
普通、子供の頃って身の回りで起こることが全て新鮮だったじゃない?いわゆる……あれ、「箸がころんでもおかしい年頃」ってやつ。
初めての体験、初めて接するタイプの人間、初めて見る景色、身の回りで起こる全てのことで子供は感動できると思うの。
でも、ユニちゃんにそれは無かったわ。
きっとあの子の場合は外からの刺激じゃなくて、自身の内側から湧き出る欲求や興味が行動の原動力なのよ。
あとは外からの刺激っていうのがユニちゃんにとっては弱かったのね。
あの子にとって友達とおしゃべりしたり、ボール遊びしたり、異性に恋をしたり……ってことは架空の物語に没頭するよりこともつまらないことだった。
そして決定的だったのはゲームに出会ったこと。
うちは夫がゲーム好きなんだけど、お仕事が忙しくなってゲームを手放そうと思った時期があったの。それをもったいないと思った夫が、ユニちゃんにゲーム機をあげた……結果はお察しの通り、ユニちゃんはゲームにどハマりしたわ。
確か……モンファスってソフトだったかしら?……え、「モンフェス」?ごめんなさいね。おばさん読書はよくするんだけど、ゲームはあまりやらないから詳しくわからないの。
とにかくユニちゃんはそのモンフェスっていうのにハマっちゃって、それを知った夫はもう大喜び。一緒にゲームができないのをすごく悔しそうにする一方で、どんどんユニちゃんにゲームを買い与えていたわ。
そんな感じでゲーム漬けになりながら、ユニちゃんの中学生生活は終わったわ。
……え?受験はどうしたかって?
それがね〜あの子その辺すっごい要領が良かったみたいで、相変わらずすっごい成績よかったのよ。家だとゲームしかしてなかったから、きっと授業中に全部覚えてたのね〜我が娘ながらすっごい要領が良いわ。
……ま、座学以外はお察しね♡
そしてユニちゃんも華の高校生になるわけだけど
ついに……ついにユニちゃんにも春がきたわ。
何でわかるかって?……わかるのよ!だって!私は!お母さんだから!!
……ごめんなさい、おばさんちょっと興奮しちゃったわ。失敬失敬。
では気を取り直して。
高校生になったユニちゃんはそれはもう美少女だった。
相変わらず化粧っ気も無かったけど、素体はとんでもなかったわ。まさにダイヤの原石って感じ。
あれは高校の入学式から返ってきた直後だった。
帰宅したユニちゃんの様子がなんだかいつもと違ったの。
普段のユニちゃんは帰ってすぐにパジャマに着替えて夕飯まで自室でゲームをしているの。でもその日はリビングのソファーに制服のまま座ってしばらくぼーっとテレビを眺めていたわ。
流石にその時はちょっと嫌な想像をした。あんまり想像したくないけれど……いじめとかね。中学までのユニちゃんは極限まで影を薄くすることで、存在を認識されないって方法でそういった問題を回避していたの。けど、成長するに従ってそんなユニちゃんも女の子らしくなっちゃって、うっかり目立っちゃわないかなって。
おばさんは恐る恐る、でも何が起きても絶対ユニちゃんの味方でいようって思いながらユニちゃんに聞いたわ。「学校で何かあったの?」って。そしたら
「お母さん……わ、私……お、お友達ができたかもしれません」
その日の夕飯はお赤飯だったわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます