第94話 お着替えタイム

―――料理を無事に用意し終えたあと…


パーティー会場のセッティングは侍従のみんなにお願いし、わたしはお着替えタイムに入った。


今日は、昨年お父様から誕生日プレゼントにもらったドレスの中から選ぶことに決めている。

本当はもっと早く着たくてうずうずしていたのだが、今日この日のためにとっておいたのだ!


夏らしく爽やかな淡いパステルグリーンのシフォンドレスを指定すると、

マリアとほかのメイドさんたちが大急ぎで支度に取り掛かってくれた。


「さぁさぁニコル様!!今年もとびきり可愛らしくいたしましょう!」


ドレッサーには、これまた昨年お母様から誕生日プレゼントにもらったコスメセットが揃えられている。


『よし、あとはお任せしよう!』

わたしはおとなしく着せ替え人形となった。



―――それから1時間後。


「わぁぁぁ…!すごい!魔法みたいだわ!」


もともとわたし…いや、"ニコルお嬢様"の容姿はかわいかったけども!

透き通るような肌に、淡いパステルグリーンが神秘的な雰囲気を引き立てている。


アクセサリーは細やかな粒がキラリと輝き、

オレンジベースのナチュラルメイクが顔の造りを引き立てていて…

夏の日差しに当たったら溶け込んでしまいそうだ……


『ちゃんとさらに磨きがかかっている! 』


メイドさんたちのお手柄でもあるが、

これまでの美活のおかげでもある。


「ニコ様…とってもお美しいです…

一体どこまでお美しくなられるんでしょうか?いつか突然、妖精の里に帰られてしまわないですよね?」


ほらほら、

隣でウットリとしながら褒めてくれるマリアが、余計な心配までしているではないか。


しばらく、恥ずかしながら自分自身でも鏡に夢中になっていると…


―――コンコンッ


「ニコルお嬢様。会場の準備ができました。

もうすぐゲストの皆様も到着されます。」

と、老執事がお知らせに来てくれた。


「いま行くわ!」


わたしは声高らかにそう言うと、

少しだけチェリー色のリップを塗り直し

今年もエスコート役を担ってくれるお兄様の元へと向かった。

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