第6話

「クリスティーヌ」


 男の声にクリスティーヌは顔を上げた。

 クリスティーヌは今の今まで、ゴミ捨て場に行ってた。ここはゴミ捨て場から出たばかりの通りで腐臭も残っている。

 男――ジャック――の姿を見て、クリスティーヌは顔を引き攣らせ後退りした。

「ジャック、何でこんなとこにいるの?」

 ジャックはクリスティーヌに近づき、クリスティーヌを壁に追い詰めた。

「探したんだ。君を」

 クリスティーヌはジャックを見上げた。

「え?」


 周囲に人がいないことを確認すると、ジャックはクリスティーヌの頬に触れた。クリスティーヌと目を合わせた。

「クリスティーヌ、僕は君を愛してるんだ。君の本名も知らないし、君が一体いくつなのかすら知らない。なのに、初めて会った時から君を愛している」

 

 クリスティーヌは大きく目を見開いた。

「なんで?」

 ジャックは肩を竦めた。

「分からない。強いて言えば、君の瞳が好きだ」

 クリスティーヌは自身のくすんだ青い瞳を思い起こし、首を傾げた。

「私の瞳?」

「暖かみがあって、美しい瞳だ」

「え?」

 クリスティーヌに顔を近づけ、額を合わせた。

「吸い込まれてしまいそうな美しい瞳だ」

 ジャックの息を感じながら、クリスティーヌは唇を無意識に開いた。

 

「1つだけ聞いてもいいかい?」

 彼女が微かに首を縦に振った。

「君も、少しでも、僕を想ってくれているのかい?」

「ええ」


 ジャックは驚き、クリスティーヌの肩を掴んだ。肩が微かに震えている。

「本当に?」

 クリスティーヌは頷いた。顔が紅潮している。

 ジャックは彼女に見惚れた。

「本当の本当に?」

「本当」

 

 2人の唇が近付いた。

 重なろうとした。

 クリスティーヌは軽く目を瞑った。


 

「何をしている」

 冷たい声が響き渡った。ドナルドが仁王立ちで立っていた。


 瞬く間にクリスティーヌは青褪め、咄嗟にジャックを押し退けた。言い訳を探し、必死に唇を震わせた。

 ジャックは湧き上がる想いを込め、チラリとクリスティーヌを見た。

 クリスティーヌはジャックの視線に気付くと、微かに首を横に振った。

 だが、クリスティーヌの瞳にある恐怖の色を読み取り、彼女とドナルドの間に立った。

「お嬢さんと、お話をしていただけです」


 ドナルドは娘の前に立つ青年を睨んだ。

「お前は誰だ?」

「ジャック・フェリクス・カラム・ウィリアムズです」

 ドナルドは表情を一変させ、舐め尽くすようにJ・F・カラム・ウィリアムズを観察した。

「カラム・ウィリアムズの息子か?」

 ジャックは1代で財を成した祖父と、祖父の事業を更に広げ成功させた父の顔を思い浮かべた。

「はい。カラム・ウィリアムズの長男です」

「御曹司の君が、うちの娘に何か?」


 クリスティーヌは父の口調が柔らかくなったことに気づいた。

 想い人のジャックが大事業を展開させている男の嫡男だと知り、崩れ落ちそうになった。だが、かつて持っていた気力で持ち直した。


「話をさせていただけです」

「そうですか……」ドナルドは手で口元を隠した「じゃあ、お邪魔虫はここで退散させていただくか。クリス、くれぐれも無礼なことはするなよ」

 立ち去ったドナルドをクリスティーヌは唖然と見た。

 

 

 ***


 修羅場るかと思った……。

 ってか絶対、金だろ。金で目の色変えたろ。


 ***

 


 我に帰るとクリスティーヌは軽く頭を振った。

「凄い人だったんですね」

 ジャックは眉間に軽く皺を寄せた。

「敬語は止めて」

「無理です」

 

 クリスティーヌの頬を両手で挟み、自分に引き寄せると、ジャックはため息を吐いた。

「川辺に行こう」

 クリスティーヌは静かに頷いた。


 ***



 クリスティーヌの心境どうなってんだ?父親の言葉を気にしてんのか。それは前もあったか。

 あ、「自分とジャックの関係が続けば、金が入る」そう父親が考えてるって気づいたとか?

 ってか最近の12歳児の発想ってどうなってんだ?蛯名 蝶って12歳だよな?

 俺が12ん時、ジ◯ンプ読んでたわ。これが男女差?俺はジ◯ンプ読んでた。じゃあ女子は少女マンガか?最近の少女マンガってどうなってんだ?ロミジュリでも掲載してんのか?

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