第160話 陽菜ちゃんの胸の傷……私は好きだよ(陽菜視点)

 晩ご飯が終わったらお風呂タイムだ。しずくちゃんが二つのグループに分けて「私としずくちゃん」「みおちゃんとまるちゃんと小烏こがらすさん」に振り分けてくれた。

 うちのお風呂は一度に三人はいるとちょっと狭いし大変だけど、今日はみんな髪を洗わないでいいようにしようって示し合わせてきて貰っているのでそこまで大変じゃないと思う。


 みおちゃんがこれって「巨乳組と貧乳組だよね? 私は巨乳組で……」と言って私達に混ざろうとしたので小烏さんに首根っこを掴まれて連れて行かれた。

「雉も鳴かずば撃たれまい」ってことわざを体現するような光景だった。


 三人が大騒ぎしながらお風呂に入って上がったあと、私としずくちゃんでお風呂場に行くと湯船のお湯が三分の一くらいになっていた。何をすればこんなになるんだろう。

 そしてあのもの静かな小烏さんを巻き込んであの騒ぎ、ある意味でみおちゃんとまるちゃんはすごいと思う。


 脱衣所でしずくちゃんと服を脱ぎながらしみじみ思ったがしずくちゃんはスタイルがすごくいいと思う。私の方が胸は大きいけど背は低し、全体にお肉が付きすぎてる気がする。

 それに大きな胸の形もすごく綺麗で女の私でも見惚れちゃうくらい。先っぽの色もすごく綺麗な桜色だし。

 あそこの毛はうっすら生えてて濃すぎない感じ。いまだに生えてない私から見るとすごく羨ましい。


 私なんて色白だけど外に出てないから焼けてないだけだし……それに何より私には……


 しずくちゃんが私の表情を見て手をギュって握って浴室に引っ張り込まれる。お風呂場の椅子に座らされてシャワーでお湯をかけられて背中を洗ってくれる。背中を洗い終わったらクルって向きを変えられておっぱいやお腹まで洗われてすごくくすぐったかった。


 しずくちゃんの手がタオルを放してすぅっと私のおっぱいの谷間、胸の中心に当てられる。


「陽菜ちゃんの胸の傷……私は好きだよ」

 私の胸の傷を手で包み込むように押さえながらしずくちゃんが言う。

「この傷のおかげで……この奥にあるだれかの心臓のおかげでいま私は陽菜ちゃんと一緒にいられる。こうやって言葉を交わせる。

 みんなも恭介さんもそうだと思う。陽菜ちゃんが生きててくれて私達みんな幸せだよ」


 ポロポロと私の目から涙がこぼれ落ちてしまった。

 ずっと気にしていた私の一番のコンプレックス。

 胸の大きな手術跡。


 私を助けてくれた誰かの心臓だけどずっと人前で服を脱ぎたくなかった理由。だから一生誰とも付き合えないかと思ったこともあった。

 だけど今日、信頼しているしずくちゃんの前だから勇気を出して脱ぐことが出来た。


 ぐしぐし泣いている私の体の泡を流して湯船に誘導してくれる。

 しずくちゃんもさっと体を洗って一緒に湯船に入ってきた。三分の一になっていたお湯が二人で入ると丁度いい。


「私たち恋のライバルなのに私のことを邪魔だって思わなかったの? 私が生きていることを幸せって思うって本当?」

 弱い私はもう一回確認してしまう。


「陽菜ちゃんが生きてて嬉しい。すごく嬉しい。本当に嬉しい。

 陽菜ちゃんがいてくれたから今の恭介さんと会えた。うまく言えないけど恭介さんが今の恭介さんになったのは陽菜ちゃんがいたからだと思うの。

 私の好きな人を構成している一部分が邪魔だなんて思うわけないでしょ。

 それに恋敵って……お見合いしてる私を助けてくれたのは陽菜ちゃんじゃない。

 あの時の私がどれだけ嬉しかったかきっと陽菜ちゃんにはわかってないんだよ。ありがとう。陽菜ちゃん大好きだよ」


 裸のままのしずくちゃんがぎゅぅって私の頭を抱きしめてくれる。すごく柔らかくて大きな谷間に挟まれてちょっと息苦しいけど逆に生きてるって感じた。


 ぎゅぅ。しずくちゃんの細い腰を抱き返す。

 しずくちゃん大好き。

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 7/8,9は1日5話特別公開

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