第113話 小烏さんはガラケーだから(陽菜視点)

 事情を聴いてまとめると昨日の日曜日にいろいろあって小烏こがらすさんが刀剣女士としてネットデビューしたということだった。

 写真を見せて貰ったがビックリするほど美人でカッコよかった。

 一枚は信じられないほど可愛い笑顔で女の私が見てもドキドキしちゃうくらい。

 ハンバーグを食べている写真は微笑ましくてほっこりした。


 知らない間にそんなことになっていたのはびっくりしたけど、小烏こがらすさん家の道場の門下生を増やして存続できるようにするって話を聞くと恭介くんは本当に凄いって思った。もちろん藤岡さんと小烏こがらすさんも。


 ただ、たった一日で恭介くんと小烏こがらすさんの間の距離がすごく近くなっている気がして……ううん、これは身体的な話じゃなくて気持ちが近くなったみたいに見えてモヤモヤする。

 頑張ってるのを応援しないとって思いながら嫉妬しちゃうのを止められないのはダメだなぁって思う。


「そういえばひよりの家のパソコンのOSを確認してきたか?」

「ええと、メモしてきているぞ、と書いてあった」

XPエックスピーな……うわぁ……何世代前のパソコンなんだよ。それセキュリティがもうダメだから使わない方がいいぞ。ウイルスとかマルウェアとか対策できないし」

が風邪をひくのか?」

 間違いなく金曜日までの距離感と違う感覚でポンポンと言葉を交わしていく。ちょっとずつズレているようだが恭介くんがちゃんとフォローしてすごくいいコンビに見えてしまう。


「もうそれ使わないでスマホからインスタの更新するか……パスワードの設定するから携帯渡してもらえるか?」

 恭介くんが手を出すと小烏こがらすさんが携帯を乗せた。二つ折りのパカパカする携帯だった。


「おい! ガラケーかよ!? まだ使ってる女子高生がいるとか完全に想定外なんだけど」

「だ、ダメなのか? 電話もも出来るから今まで困ったことがなかったのだが」

「ラインでグループつくって弁当の打ち合わせするって言っていただろう?」

 恭介くんのツッコミが追い付かなくなっているらしい。


「アハハ……実は小烏こがらすさんはガラケーだからメールも使ってやり取りしていたんだよね。ガラケーだとライン使えないし」

 岩清水さんがフォローを入れていた。そうなのだ。スケジュールをまず私と岩清水さんで共有してから小烏こがらすさんにメールしていたのだ。


 小烏こがらすさんからのメールの返事は「うむ、分かった」とか「それは無理だ」とか一言しか返ってこないのでちょっとだけ困っていたのだった。

 岩清水さんがいくらコミュニケーションが上手なメガネの委員長と言っても限度がある。


「よし分かった! ひより、今週の土曜日空いてるか? 空いてるならスマホ買いに行くぞ」

 ちょっと待って!? それって恭介くんが小烏こがらすさんのお買い物に付き合うってこと? お買い物デート!?

 -----------------------------------------------

 本日1日3話公開

 毎日朝6時と昼12時夕方18時に最新話公開中

 楽しんでいただけたなら作品の評価で☆をいただけると嬉しいです

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る