第70話 相変わらず陽菜の周りだけが輝いて見える

 授業が終わり放課後になる。

 これから陽菜と一緒に陽菜の家に向かい、さちえさんと話さなくてはならない。

 さちえさんはこの世界で俺が「性欲過多で一般的でない男子」だということを知っているのだ。

 だからこその(第62話参照)、内容はふざけているようにしか見えないが俺のことを心配して書いてくれた手紙なのだ。


 何回オナニーするかとか、さちえさんと陽菜のどっちを選ぶかとか一見ふざけているようにしか見えないが俺が我慢できずに陽菜に手を出したり他の女の子にイケナイことをしたりする可能性を予防するためなら自分も協力するまで言わせてしまっているのだ。


 この貞操逆転世界の女の子はそれぞれ魅力的だ。元の世界の女の子も魅力的だったがこっちの世界では一度愛し合ってしまえば俺は相手の女の子と止まれなくなってしまうかもしれない。

 歯止めをかける者がいない状態になって愛しあい続けて自堕落な状態になりかねない。

 それとは別に今の俺の周りが貞操逆転世界なのに女の子たちが意外と肉食系じゃないのは、クラスの皆がそういう経験がないのも大きいんだと思う。


 向こうの世界だって童貞だった時の自分は自信を持って女の子をリードすることなんてできなかった。

 こっちの世界の女の子だって同じことだろう。だから下ネタとかは好きだけど直接的な行動に出ることは少ない。

 小烏こがらすは例外的な存在だろう。男女のことに無知なくせにあいつのあの告白は男前すぎた。


 そういう意味ではこっちの世界で本気で貞操の危機を感じたのは看護師のさんの時と水元刑事の時の2回、その2回とも俺の性欲について確認するためという目的があったことを考えると、実際の貞操の危機に陥ったことはなかったかもしれない。


 けどその2回から分かることは俺が年上の経験豊富な女性からの誘惑と押しにとても弱いという事実だった。どうかわせばいいのかわからず、全然対応できていない。

 2度ともこっちの世界の多々良恭介の童貞をあっさり奪われそうになってしまった。

 普通はこっちの世界の童貞男子ならああいう誘惑にはブルってしまって萎えちゃうものなんだろうが、俺の場合だけは例外で逆にビンビンになっちゃうのだ。私の愛馬は暴れ馬です。


 校門のそばに立たずんで空を見上げている女の子がいた。陽菜だった。陽菜の周りの空気がしている。俺は目を細めた。

 俺の目には相変わらず陽菜の周りだけが輝いて見える。


「姫川さんおまたせ。掃除が長引いてゴメンね」

 掃除当番だった俺は一緒に帰る陽菜を校門で待たせていた。一緒にさちえさんの待つ家に向かうために。

 並んで歩きながら俺は自覚していた。もう誤魔化すのは止めよう。


 俺は姫川陽菜に恋をしている。


 この世界にいる姫川陽菜だ。ずっと一緒だった元の世界のヒナではなく、この世界の陽菜に恋をしてしまっていた。

 絶対にこの子を守りたい。これからずっと誰よりもそばにいるんだ。

 前の世界では失敗してしまったけど陽菜の性欲を満たす関係でなく、心から求めあえるそんな関係を作れれば幸せだと思う。

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 こちらもついに自分の気持ちを認めました。70話、ここまでお付き合いいただきありがとうございます。

 この後も(←亀仙人的な意味で)


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