第446話 そんな独裁の仕方がある何て……

 国王陛下達と別れて、今度はエルフ達に会いに行くことにした俺だが、今度は物凄く簡単に説得が出来てしまった。何故なら、これまで敵対心むき出しだったスピッツが気持ち悪いぐらい協力的で、俺が説得する必要が殆どなかったからだ。


「カペルさん、スピッツはどうしたんですかね? 」


「多分、里の利益を奪っていた商人に腹を立てているのと、自分の父親の不甲斐なさに気づいたからじゃないかな」


 確かにこいつは大馬鹿だけど、その原因を作ったのが父親だという事に気づいたんだから多少なりとも改心してもおかしくない。まぁまだまだ強引で横暴なところは抜けていないけどね。実際、俺が今回の事を説明した時に王都行きを決め兼ねていた他のエルフ達を半強制的に納得させ王都行きが決まってしまったからだ。


「カペルさん、それじゃ村に帰りましょうか」


「マーク君、それは良いけど私との約束は出来てるのかい?」


「あぁそれですか……、それに関しては出来てると言えば出来ていますが、そうでないと言えばそうでないですね」


「また、ややこしい答えだね。いったいどっちなんだい?」


 ここではっきりと答えが言えないのは、当然ガラスの改良の実験をしていないからで、ましてその実験をしても今度は俺の提出してる特許に触れる可能性があるからだ。


「それなんですが、さっきも言いましたが、僕が商業ギルドで見たエルフさんの特許の申請内容と現在の製法が違うから、僕がそれに改良を加えようとすると今度は僕の特許にエルフさんが触れてしまう可能性があるからです」


「それじゃどうすれば良いんだい? マーク君の特許に触れないでガラスの品質を上げるには……?」


「それは……何もしなくて良いというのが僕の答えですかね」


 幾ら粗悪品だとしても商品として現状販売できているんだから、それ以上の改良は必要ないというのが俺の考えなんだよ。まぁやるとしても砂の分別をもっとやれば品質はもっと良くなると思う。だがそこはエルフも気づいていると思うからそれについては俺は何も言わないけどね……。


「それだと、マーク君が言ってるように特許の不正取得を暴露するだけで良いという事になるね」


「そうです。今の製造方法でも商売には成っているんですから、このままで良いと思いますよ。ただどうしても品質を上げたいなら僕の特許を利用するかですね」


 俺はこう言ったが、エルフの今の製造法方でも色付きガラスとしては使えるし、無茶な使い方をしなければ、充分だと思うから低価格品として販売すれば良いと思っている。


 俺がそう思っている時、突然当事者のエルフがこう言ってきた。


「マーク君、その事は私も考えます。ましてガラスの品質をもっと上げるのにマーク君の特許を利用しないといけないならそうします。勿論そうすれば高級なガラスとして販売もできますからね」


 この人は俺の言ってる意味が良く分かっているようだ。現状でも販売出来ているんだから、自分が作ってる物にも最低限の商品価値はあるという事をね。だから敢えて製造方法を変える必要がないという事も……。


「それで良いと思いますよ。実際まだまだガラスは普及していませんから需要はあると思います」


「そうですよね。これからガラスの普及がもっと進んだ時に改めてその事について考えれば良いという事ですよね」


 流石はガラスの発明者だな。考え方に物凄く柔軟性があるよこの人は。こういう人だからガラスを発見出来たんだろうな。


 そんな感じでエルフとの交渉は簡単に終わったので、俺達は急いで村に帰る事にした。まぁ当然のように今回のカペルさん流ブートキャンプでレベルが上がっていないエルフ達は王都行きの事よりも最後までブツブツ文句を言っていた。


 まぁ今回ブートキャンプをやったのが一階層だからそう簡単にレベルが上がる方がおかしいのだが、それでもハードな事をやらされていたんだからエルフ達の気持ちも分かるので、その気持ちを考えて、俺は村への帰り道でエルフ達に身体強化を教えてやった。だが何故かここに居るエルフ達は身体強化が苦手なようで成功させる人の方が少なかった。これってここに居るエルフ達の職業のせいかな? でもこれまで俺が教えた人達の職業はバラバラだったけど問題はなかったんだよな……。


「カペルさん、エルフって身体強化が苦手なんですかね?」


「そんな事はないと思うけどな……。実際私のような者でも使えるからね」


 そうなんだよな……、カペルさんの職業は学者で体を使うより頭を使う事の方が得意の筈なんだが、身体強化は直ぐに覚えたんだよ。


「それじゃ何か他に理由があるという事ですよね?」


「理由か? 確かにこの状態を見れば何か原因はありそうだね」


 この人達の職業が原因なのか? それとも種族的なものなのか何か原因はあるんだろうが、どうしても思いつくものがないのだ。それは当然このエルフ達の職業を鑑定で見ている事も理由だ。


 職業は俺が教えた人達と変わらないのに、何故出来ないんだ? 種族的と言っても出来る人と出来ない人が居るんだからそれも当て嵌まらない。そうなると残るは個人的適性という事になるけど、俺が教えた人達には出来ない人は居なかった。多少の個人差はあったけど、最終的には全員出来るようになったからね。


 ん? 個人差……? このエルフ達にそれぞれ違いはあるか? 


「カペルさん、この人達は里でどんな事をしてる人達ですか?」


「マーク君、何でそんな事を聞くんだい?」


 俺の質問にこう答えたカペルさんだが、それを言った後に何かに気が付いたようで、突然大きな声で返事を返して来た。


「あぁ~~~! 分かったよ! マーク君! 身体強化が出来なかった者達は里で何もしていない者達だよ!」


「え! 何もしてない?」


 カペルさんの突拍子もない返事に困惑した俺はオウム返しのような返事しか出来なかったが、何もしてないとはどういう事なんだ?


「何もしてないというのは言葉の通りで、里ではスピッツと里長の取り巻きとして何時も一緒に居るだけで、仕事らしい仕事は何もしていないんだよ」


「それってもしかして、警護や事務仕事もしてないという事ですか?」


「そう、物凄く簡単に言えば殆ど一日遊んでいるような者達だよ」


 いやいや、幾ら何でもそんな事が許されるのか? 普通狭い里で生活するのに何もしないで飯が食える訳がないだろう。前世の諺にもあるけど、「働からず者食うべからず」というのがあるぐらいだから、この世界にも似たような諺はある筈だ。それなのに……。


「それって里長が食わせていたという事ですよね」


「そうだね。だからこれまで里を独裁的に支配出来たとも言えるけどね」


 そういう事か! 護衛や従業員として雇ってる訳でもなく、ただ里の中での賛同者を金で雇っていたという事だ。そうすればその人達の家族も含めて一定数の賛同者を何時もキープ出来ているから、独裁体制が長く続けられたんだ。


「という事は本当の遊び人で労働どころか運動も殆どしてない人達という事ですね」


「そう、だからここでその個人差が出たんじゃないかな?」


「では、この人達はカペルさんの訓練でも……」


「当然、殆ど何も出来ず、ついて来るのがやっとだったよ」


 この世界に転生して初めてそんな人達がいる事を知ったよ。まだまだ俺の知らない事は多そうだ……。

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