月明かりに照らされる

桜の木があった



私をいざなうように

くうをひらひら舞っている花弁



すっと

手を伸ばしてみても

すり抜け、落ちてゆく



一歩、また一歩

近くなるその距離に

このまま進んでは行けないような気さえする




パキッ




その音にハッとして振り返ると

薄紅色した着物の人



私の手を取り

来た道を戻っていく

不思議と怖さは感じない



歌を歌ってくれていた

子守唄のような優しい歌

気づけば私の意識は消えていた


 


桜を見ると思い出す

あれは夢か現か



ただ、目覚めた後も

あの人の冷たい手の感触が

私に残っていた




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